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入学と退学

次男は高校に入学した。

制服のブレザーを着崩して少しだけ大人っぽい雰囲気に見えた。

勉強を頑張って欲しいとか、部活で活躍して欲しいとか、どんなところに勤めて欲しいとか、何もなかった。

ただ青春を過ごして欲しかった。

満開になった桜を背にして学校へ行く次男をベランダから見送った。 自転車で学校へ行く。

ただそれだけのことが私には充分すぎる景色だった。

入学してひと月ほどした頃、次男が通学路で喫煙したことで私は呼びだされた。

新しい担任や他の先生に対しても次男はなめた口を聞いていた。

せっかくの新生活だったが、最初からまたこんなだった。

翌日は運動会があり、次男には言わず夫とこっそり見に行った。

校庭ではSEKAI NO OWARI のRPGが繰り返し流れていた。

派手な髪型の次男が新しい環境で少し無理してるようにも感じた。

偶然私たちを見つけた次男は顔色ひとつ変えず無視し、私たちも長居せずに帰った。

入学からふた月ほど過ぎた頃、次男から夫と私に話があると言われた。

こんなことは今までになく、もしかして子どもが出来たとかそういう話なのかと勝手に想像しながら話を聞いた。

次男は「学校を辞めて働きたい」と言った。

仲の良かった友達は受験に落ちていないし、中学の頃、学校対学校のノリで喧嘩などしていたようで、高校では居心地が悪いようだった。

親にきちんと話をしなければいけないと思う気持ちがあったんだな…とは思う。
とは思うが…せっかくの高校生活を手放すと思うと悲しかった。

次男は言い出したら聞かない。
絶対に最後は自分の思った通りにする。
今までもそうやってきた。

必ず学校を辞めるだろうというのが分かりきっていて惜しくてたまらなかった。

それでもいつ気が変わってもいいように、休学という形をとったが次男は仕事を始め、しばらくして退学届を出した。

先生は
「いつでも学び直しは出来ますよ」と言ったが、
今やらなくてあの子がいつやるんだろうと私は思っていた。


…あっという間の高校生活だった。
当時は学生を見ると胸が締めつけられるほど羨ましかった。学生が、若者が、みんなキラキラして見えた。みんなと一緒がいいという私の思い込みがここにも表れていたんだと思う。

RPGを聞くと未だに切ない。

「怖くても大丈夫 僕らはもう一人じゃない」

#高校生 #入学 #退学 #休学 #非行 #青春 #親 #手放す #歌の力

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