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祖母の面会

次男の少年院での生活は続いていた。
私は書けるだけ手紙を書き、面会も欠かさなかった。

次男からの手紙には
[前略、拝啓、ご自愛ください]などの文字が強い筆圧で丁寧に書かれていて、こんなに上手に字が書けたんだなと思った。

普段使わない言葉への違和感と次男の学びを感じながら何度も読み返した。

「面会の時、駐車場に停まっているうちの車が見えました。一緒に乗って帰れたらどんなにいいかと思いました。時計を見ると今みんな何してるやろうと考えます。」そんなことを書いていた。

田舎では義母が次男に会いたがっていた。
どこへ行ったとしても可愛い孫に変わりない。
わざわざ九州から面会しに来てくれた。

義母は次男を責めることも諭すことも言わなかった。簡単な世間話をして静かに泣いた。
帰りの車の中でも今までも私の育て方についても
義母は一度も責めたりしなかった。

私の両親も次男に手紙を書いてくれた。
「大好きよ、愛してるよ」と言葉を惜しまず綴ってくれていた。

次男は4人の祖父母からちゃんと愛されていた。
それでも非行に走った。
だからこそ私は親として責任を感じた。

少年院からの退院が近づいてくると嬉しいのと同じくらい胸がざわついた。もう失敗出来ないと不安だった。

…「田舎に帰っておいで。一旦、預かるよ。」
 「気分転換にみんなでどこかへ行こう。」
普段寡黙な義父母が誘ってくれても断っていた。
ピリピリした我が家の空気や、態度の悪い次男を見せたくなかった。ちゃんと仲の良い家族で在りたい、いつも私は幸せそうにしていたいという見栄。
頑張って頑張ってプライドを守っていることにも気づいてなかったね。

#少年院 #親 #子育て #祖父母 #孫 #非行
#責任 #手紙

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