#パルプ小説
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#3
【前回】大柄な男が小柄な男を背負い、スコップを杖に洞窟を進む。入口は塞がれ、松明も角灯もなく、暗闇の中を歩く。ところどころに光る苔やキノコがあり、ぼんやりと道を照らしている。「くそったれ」「ああ、神よ……」
出口を求め、風の吹いてくる方へ向かったデリックとヴァシリーだが、力鬼士は次々湧いて来て、次第次第に追い詰められる。光る苔やキノコも次第に増える。「な、仲間の方とかは」「いない。俺は単独行動だ
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#2
【前回】「力鬼士の棲む洞窟に財宝があるって、噂を聞いて。昨日黙って出ていったんです」
デリックは首を傾げた。表情と沈黙に促され、少女、ソフィアは続けた。
「うちは貧乏です。母は二年前の疫病で死んで……父は仕立て職人なので、二人でなんとか食べてはいけます。けれど、きっと私の将来のことを考えて……」少女は顔を手で覆い、また泣き出した。デリックは彼女を宥めながら、店の奥へ連れて行く。女房が事情を察し
「アポカリキシ・クエイク」#4
【承前】「DOSSOI!!」
谷松の猛烈なぶちかまし! 目の覚めるような一撃だった。敵は血反吐を噴いて真後ろに吹き飛び、壁に人型の穴を開けた。敷金が!
「かはァッ!」
敵は壁を突き破って、隣の部屋に。埃がもうもうと煙を上げる。人が入ってなくてよかった。
「や……やった! でも」
「ここは捨てろ。やつらに捕捉された。次々来るぞ」
「え、え」
谷松が『ドヒョウ・フィールド』を解き、もとの小柄
「アポカリキシ・クエイク」#2
【承前】その時の地震は、そう大きなものではなかった。震度4、ぐらい。けれど、ぼくが感じた心的衝撃は……。
「雷電、ですか。『雷電為右衛門』。江戸時代の、史上最強の力士……!」
アパートの一室。谷松老人の力場のためもあってか、ものが倒れたりはしなかった。ぼくには……谷松の言葉が、もはや狂人の戯言とは思えなかった。あれを見た。体験してしまった。世界のほうが狂いだした。いや、ぼくの常識が、異常な世界
「アポカリキシ・クエイク」序章・ライナーノーツ
おれだ。アニーDに引き続き、アポカリキシ・クエイク…長いので略称は「AQ」のライナーノーツだ。ADとAQ。なんか繋がりがありそうで、まったくない。アメリカ西海岸と日本列島で、太平洋の反対側だ。強いて言えばADで日本系のギャングがくたばり、AQでロサンゼルスが地震で壊滅したというぐらいのものだ。どうも物騒だな。
一話一話の解説はめんどいのでしない。本編は合計4500字ぐらいだが、名鑑を加えれば50
メキシカン・ラプソディ
10月31日の夜。僕は先刻投稿した『プログレッシヴ相撲』の記事共有ツイートを送信すると、大きく伸びをした。
『パルプ小説冒頭400字』。楽しい企画だったが、応募は今ので最後だ。今日はもう休もう……。
KRAAASH!
その時突如、アパートの扉が破砕!一体何が?僕は戸口の向こうを見遣る。
そこにいたのは力士だった。
僕はそいつの奇妙な出で立ちと、投稿作品一覧が表示されているPC画面を交互に見
『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」
「ファック野郎!」
スコップを振り下ろし、襲い来る力鬼士の指をぶった切る!
「ギァーーッ!」指は土に還る。力鬼士は後退し、チッチッと音を発した。仲間を喚んでいる! ボゴン! ボゴン! 床や壁から力鬼士が這い出す。囲まれた!「くそったれ……! まさか、実在するなんてな!」
デリックはスコップを振り回して威嚇し、事の発端を思い出す。
◆
「父を、助けて下さい!」デリックの店に飛び込んで来た少女