逆噴射レギュレーション

現実と空想の狭間を守るもの

「隊長ホントなんスかねぇ~」

「…何がだ?」

「黒の吟遊詩人が今度どでかい行動を起こすってアレっス」

「無駄口を叩く暇があるなら歩け」

溶岩が溢れる火山の山脈へと足を動かす女と、鞍を着けたグリフォンに跨がる少年の二人組。

「この前どでかい首がめちゃくそ生えてたドラゴン倒したと思ったら今回は火山噴火起こしまくろうっていう虫の化け物なんスよ?そりゃ文句も言いたくなるし、巷で流れる噂もマジかと

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月下夜想機譚~二人ぼっちの絶滅戦争~〈2〉



 天罰体〈ネメシス〉――月より来たるもの。神罰の地上代行者。人肉喰らい。ナノマシン汚染源。
 人類の、絶対敵。
 背中の紅い翼のような器官はランセルと呼ばれている。人を喰う度に肥大化し、有機物・無機物を問わず分解するナノマシンを吐き出す死の翼。呼吸、あるいは脈動するかの様に明滅発光を繰り返す。
 その翼の持ち主は、白皙の少女。肌も髪も白く、ただ瞳だけがランセルと同期して赫々と熾っていた。
 

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ありがたい……
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月下夜想機譚~二人ぼっちの絶滅戦争~

1999年7月。恐怖の大王は少しだけ降臨する場所を間違えた。地球から僅か38万Km離れた所に墜ちたそれは自己増殖を繰り返し、彼の地の光景を一変させた。
 以来月は夜空の半分を占める程に拡散希薄化し、地球から暗夜という物を奪い去った。僕が生まれる数年前の出来事だ。
 薄く、半ば透けている月から恐怖の大王の眷属がやってくる。破種船と呼ばれる月の石で出来た突入体に乗って、毎夜人類の褥を脅かす。事変初期の

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ありがたい……
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地球最後の高利貸し

高利貸しに必要な素質。
 アホを借りる気にさせる口八丁と、金を返さないアホを殴りつけるタフネス。
「両方の素質を持っている俺は最も優秀な高利貸しなわけだ。テイラー大統領?」
 大統領執務室には9人のSPが白目を剥いている。
 この国で一番偉い老いぼれの髪を掴む。
「き、貴様。こんなことしてただですむと」
 その顔面を鷲の紋章が刻まれた執務机に叩きつける。合衆国万歳!
「いいかい、テイラー大統領。ク

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アンダーグランド・エクスプレス 死の影の底を歩むとも

最初に死んだのはディルハム、次にジョージ、それから新兵のルーディ、不平屋のアーチーは最期まで補給についてこぼしていた。長腕ビルと骸骨エルマーは一緒に上半身を吹き飛ばされた。奴らが知ったら笑うだろう。

ルーキーいじめでさんざん恨まれていたジェス。後ろからの流れ弾で死ぬだろうと誰もが思っていたが、やつは、あの村の事件で抗命罪で銃殺になった。だいのおとなが涙を流して命乞いをしながら、しかし命令に従うこ

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悪霊殺しのマリアベル

余命一ヶ月と診断されてから二十四日。残りの人生あと七日。

 そうやって書いてみても実感なんて全然湧かないから、私はその時のことをシミュレーションしておくことにした。
 まず、一緒にいる家族の手を握ってあげる。そして感謝を伝えてあげるの。今までありがとう。悔いなんてないよって。
 でもママは少しキライだから、できればパパに居てほしい。そうしたら私は妥協せずに済んで、パパも自信がつくだろうから一石二

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よっしゃああああああい!!!!
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超神戦妖暦 DAWN BRINGER

我は死神なり、世界の破壊者なり。――『バガヴァッド・ギーター』

 令和XX年、日本は神の再来を見た。

 神無月の早朝、諏訪湖から突如出現した巨大半人型土偶生命体(後に超越神体壱號と認定)は「建御名方」を僭称。精神感応を用いて「天津神とその裔に占有された豊葦原中国の奪還」を宣言し、同時期に青森県から出現した超越神体弐號「荒吐」、島根県に出現した超越神体参號「八岐大蛇」と接触した。続いて信仰を失い

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ありがとうございます、汝の下に甲冑あれ
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ヴァーディクト・ブレイカー

日本時間正午をもって、世界主要都市は壊滅、居住者の大半が死亡した。

その日事象として発生したのは、鈍色の骨格無人兵器、白亜の竜種、名状できぬ触手生物、錆色の巨人、腐敗の不死人、未確認飛行物体、奇怪地球外生命体、光なる神霊、異形たる悪魔といった人間の想像力を逸脱した脅威が一度に、出現と同時に人類を強襲した事態である。

一種でも手に余る脅威が、もはや数えきれない程の種別と物量でもって殺意を向けた事

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末吉:ダガー
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死人めくり

図書室の空気は重いと人は言う。それは周囲の本たちが否応なく死を意識させるからか、来客が皆等しく人の死に接しているからか。私は違う。私は本が好きで、この図書室という空間を愛している。そんな自分がマイノリティであることは、もちろんわかっている。中学の休み時間、祖父の本を読む私は明らかに浮いていた。でも、その時の自分を否定しなかったからこそ、私は今、この職に就いている。

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「九相図をご存知です

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無差別擬人化対策班

「で、昨晩は何が人間になったの」
「本、だってさ」

まただ。物をヒトに変える技術なんてのが開発されてからというモノ、どいつもこいつもただの人間なんてどうでも良くなって、武器やら料理やら宝石やら人間に変えて愛ではじめた。だがその程度で満足してる内はカワイイもんだったさ、そりゃあもうね。

「本、ねえ……童話?」
「BL」
「ブッ」

部下の金森の報告に、アタシは始業前の二人しかいないオフィスで盛大

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大凶:大太刀「奈落」
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