パルプ小説

全裸の呼び声 -40- #ppslgr

全裸の呼び声 -40- #ppslgr

 ホテル特有の星あかりの乏しい通路を、駆ける、駈ける。駆け抜けるそばから、大木然とした触手が突き出、天井さえも刺し貫く。正確にこちらの位置を把握できていないのが目下の幸いだったが、さりとて立ち止まっていれば一発で木っ端微塵になる程度の誘導性はあった。ついでに闇雲に突き出した一本が進路を塞ぐ程度の厄介さも。 「ええい鬱陶しい!」  レイヴンがドス黒い剣を振るうたびに、眼にも止まらぬ速度で触手はずるりと滑り落ちて壊死のち、崩壊する。触手を切り落とすたびに後方の触手もまた痙攣し

スキ
7
全裸の呼び声 -39- #ppslgr

全裸の呼び声 -39- #ppslgr

 触手人、いやすでに触手がより合わさった壁、触手壁ともいうべき存在は、無機質なホテル回廊を埋め尽くして押し寄せてくる。なんとも悪夢的光景であったが、アノートが叩き起こされた通りこちらが現実である。  「疾ッ!」  引き絞られた弦が解き放たれるように、レイヴンの渾身の突きが通路ど真ん中を貫く。あたかも砲弾のごとく絞り込まれた瘴気の螺旋が、触手壁を根こそぎする勢いでえぐりゆくも、やはり畳縦二枚ほど撃滅した辺りで止まってしまった。古代ドットゲームのMOB崩壊じみて霧散する前面触

スキ
6
手口兄妹の冒険 vol.6

手口兄妹の冒険 vol.6

【前】  誰かに呼ばれた気がして、文則は目を覚ました。目を開く。自分がベッドの上に横たわっているのに気がつく。切れかけた蛍光灯がひび割れた天井を照らしている。  体を起こす。崩れかけた壁、なにかの汚れが染み付いたベッド。  病室だろうか? 自問する。  部屋には文則の他に誰もいない。  誰もいない?  ――沙亜耶!  手の中、失われているぬくもり。叫んだ名は音にならずに消えた。口が動かないのに気がつく。混乱。動転。慌てて口元を触る。ザラザラとした手応え。糸の手触り。乱暴に、

スキ
1
有料
100
全裸の呼び声 -38- #ppslgr

全裸の呼び声 -38- #ppslgr

 視界が、何もかもが揺れる中、相手の瞳とだけはアンカリングされたかのように合ったままだ。目の前の存在はアノートの手を取ると、首を横に振った。  そして次の瞬間、目の前の少女像は、ザクロが弾けるように爆発四散。血の紅が一面に飛び散り、手足が無造作に転がった。続いて部屋全体が夏にさらされた蝋細工のように歪んで溶け出し、血と混じり合って流れ出していく。ひどく気分が悪い。世界の揺れはますますひどくなって、とても身を起こしてはいられなかった。 「起きろッ!」  かけられた一喝に、

スキ
6
全裸の呼び声 -37- #ppslgr

全裸の呼び声 -37- #ppslgr

 灯りは歯抜け、自動ロックはオフ、当然のようにひと気のないホテルは、廃墟と営業中の境界のギリギリ一歩廃墟のほうへ踏み出していた。下層階は教えられた通りにひどい有様だったが、最上階まではいくこともなく中層ほどでまともな部屋を発見出来た。特に特筆すべき点もないビジネスホテルの客室に、ベッドが二台。  一行がシャワールームで血糊を落とし、携行食を腹に押し込むと、黒い方はさっさと布団をかぶって横になってしまった。いわく、キツい時ほどしっかり寝るのが信条、だそうだ。  星のない夜の

スキ
7
全裸の呼び声 -36- #ppslgr

全裸の呼び声 -36- #ppslgr

 現代らしからぬ暗さの夜道をくぐり抜け、目的の建物へとたどり着く。見通しのいい全面ガラス張り、自動ドアの玄関はこの異界に似つかわしくない小綺麗な門構えだ。もっとも、本来自動ドアであろうガラス戸は二人が前に来てもうんともすんとも言わない。仕方なく手動で開けて入る。 「これはまた、なんとも」 「普通だね」  白基調の意匠で飾られたエントランスは、昭和風のレトロさこそあるものだがドブヶ丘らしからぬ落ち着いた雰囲気の室内。ただし全体的に薄暗く、よく見ると照明はどれも半分の数しか点

スキ
6
全裸の呼び声 -35- #ppslgr

全裸の呼び声 -35- #ppslgr

 夕夜が入り交じる黄昏時は、古来から逢魔が時とも呼ばれ、奇妙怪異の跋扈が増す時間とされていた。されてはいたのだが。 「いくらなんでも多すぎる」  最終処分場のすり鉢廃棄物迷路からなんとか抜け出た二人を襲ったのは、今まで何処にいたのかというほどのドブヶ丘怪異のあらし、あらしである。  あの子牛めいたサイズの蜘蛛足ネズミなどはまだ可愛いほどで、大型トラックばりの異常成長アメリカザリガニ、殺人ドローンを思わせる大型蚊やら、ドブナイズド変異した生物は枚挙に暇がない。  二人が進

スキ
7
立つ鳥は灰汁を詰める 【番外編】#AKBDC

立つ鳥は灰汁を詰める 【番外編】#AKBDC

「これでもう……大丈夫だと思います」  三島が、伸縮包帯の残りを器用に巻いて、プラスチックの救急箱に戻しながら言った。  心なしか、左前腕の痛みが和らいだ気がする。 「ありがとう」  恐怖に支配されていた三島の目に、少しだけ人間らしさが戻る。なかなか人懐っこくって良い後輩だったな、と改めて思う。  俺はジャケットのポケットから愛用のワイヤレスマウスを取り出し、腰の高さで握った。それを知った三島は、絶叫しつつ床にへたり込む。 「いいいいいい泉先輩! ちょちょちょ待って待って待っ

スキ
17
手口兄妹の冒険 vol.5

手口兄妹の冒険 vol.5

【前】 数年前:ドブヶ丘無垢露通り  その町並みは混沌と悪意、汚染と毒性がこびりつき、いびつな印象を見る者に与えている。そこかしらの物陰にうずくまる住人たちは時折通行人たちにうつろな視線を投げかける。  数人の住人が通り過ぎた二人組に訝し気に眺めた。少年と彼より少し幼い少女だ。少女は疲れ切った様子で、今にも倒れそうになりながらとぼとぼと歩いている。   その手を引く少年はやはり疲れ果てているけれども、おどおどとあたりを見回しながら歩いている。   どうしてここにいるのだろう

スキ
1
有料
100
刀削麺荘 陶家 #AKBDC

刀削麺荘 陶家 #AKBDC

 残暑を忘れ去ったかのように爽やかな秋風の吹く9月。秋葉原は過疎っていた。大体、疫病禍のせいである。商店立ち並ぶ大通りをまばらに行き交う人こそいるが、以前に比べたら随分と人通りも少なくなったと言えるだろう。  一時期の名物とされていた客引きエセメイドコス嬢も随分と間引きされ、引っ掛ける相手もおらず待ちぼうけしている有様であった。とはいえ、アキバはアキバ。オタクショップは観光客過疎の逆風にも負けず、しぶとく存続しているのである。  ホイズゥも、そんなアキバの恩恵に預かりに来

スキ
15