砂漠の遺物と異物の僕ら #むつぎ大賞2023
「わりぃお嬢ちゃん! リンゴの籠に穴空いてたみたいでよ!」
「え」
豪快に笑うおじさんの言葉に、私は言葉を失くして手元を見る。赤い赤い、艶やかな果実。
「……これ……リンゴ?」
まるで手に張り付くみたいに瑞々しく、腕が痛いほどに重い、球。……え、うそ、これリンゴ? マジ?
「こ、こんなにツヤツヤのリンゴ、初めて見た……」
「はっは! そうだろうそうだろう! フィロラの果物はどれも──」
おじさんは私の言葉を、単なる褒め言葉と受け取ったようだった。違う。そうじゃない。そう