無題のドキュメント #シャニマス泥酔制作合同2
『無題のドキュメント』
(BGM:イルミネイトコンサート)
♪ズッチャチャズッチャ、ズッチャチャズッチャ
カーモンジョイナス
♪ズッチャチャズッチャ、ズッチャチャズッチャ
ジャスッビーユアセー!
■ブーブス・イルミネーション・セクシー・スターズ 〜中目黒インドフランチャイズ〜(予告トレイラー)■
(ダミ声)荒野を旅するセクシー美女アイドル軍団、我らが女神、ブーブス・イルミネーション・セクシー・スターズ、BISS!
BLAMN! ワッツ⁉︎ 百円のバケツに穴が空いた⁉︎ 敵の銃撃だ!
ハッピー!「アーハ? ルルルルンランランラン!」
セクシー! ソー・セクシー・ピジョンマスター・チェリーブロッサムヘア・ビューティー!
知性とウィットと強い意志を備えた我らがリーダー!ギターリスト!
ファにー!「ねえ、いい事考えた!失敗って文字を辞書から消せばいいのよ!」
ソー・テンプテイティン・ブロンド・キュートフェイス!
運動神経抜群で豊満で金髪で美女!歌も歌える!難しいダンスもどんとこい!
ラッキー!「まだダメ……まだチャンスがこないの……もっとピンチにならないと」
ソー・エキゾティック・ダークヘアード・ゴシック!ゴス!ゴシカル!
ソー・ゴシック・キューティー・パリパリ・ビューティー・ベーシスト! 占いのせいで事務所を焼いたがリーガリー・ノープロブレム!
アーマー・イン!「……私は甘くないぞ」
ソー・リアリスティック・シャドウィック・ミスティック・ブラック・ファム!
喫煙量はメンバー最強! ドラムスティックから火を吹くぞ! その腕力でブルーアイズ並みのドラミング! 私は甘くないぞ!
キューティービューティーハニービー!
バン(盗品)に楽器(盗品)を詰め込み、四人のビューティフル・ガールズ・ソー・セクシーがクラップの演奏家大募集!
「ハロー! さぁベルを鳴らして!」
「エビバディー!」
「ファック!」
ブーブス・スターズ 〜イルミネーションアイドル女囚軍団〜! 本日十三時スタート!
(カ・メン・ジョーイナース!)
(四人の背後で爆発)
■その他のリリース作品紹介(早送りできません)■
「公務員四人組です」みたいなつまんねーバンドの次に出てきたのは、紫髪のどえらい別嬪さんだった。現役アイドルのソロバンドに度肝を抜かれた俺の、初恋の物語──
『バーボン・カラー・パープル・ヘイズ』、近日公開!
全米を泣かせた、感動の物語。君はこの感動を見て感動する。一通の感動の手紙を巡る、感動の超大作。
『感動ラブレター、いつまでも』……全世界が、感動する。
田園都市線の真ん中には、吸血鬼の死体が埋まっている。ストゼロを飲んで騒ぐ酔っ払い、歌舞伎町の口裂け女、ロボットカフェの花子さん。世の中に溢れる怪奇魍魎を前にして、彼女は今日も手を伸ばす。「連れて行くよ」。
『白夜のアリア』、この夏公開!
合コンで出会ったアイツは、猫みたいな顔をして、犬みたいな甘えん坊で、そして……殺し屋だった⁉︎ 笑って泣いて大興奮! 恋と殺意が交錯する、常識知らずのバイオレンス殺し屋コメディ! 『二丁目の路地』! 「が、がんばりましゅ! ……あぅ」 この夏公開!
◆犬倫◆
◆283 FILM ENTERTAINMENT presents◆
「ヒービケ、ユメノハテマデー……」
ライブハウスからハープのような澄み切った声がのぼる。ステージ上の三人の美女は互いに目配せし、そこで音を止めた。不意に訪れた静寂は、つい先程までモッシュピットに興じていた観客たちをすら鎮めてみせる。
「スマーイル、シンーフォー……」
(やろうよ、ハッピー。ファニー)
(うん、やろう、ラッキー)
(ダイジョブ、今の私たちなら!)
フロントマン三人がアイコンタクトと共に頷き、大きく息を吸い込んで……!
「──ニアー!!!」
ドコドコドコバリバリバリバリバリズズダンズズダンブンブズーン! 会場が割れんばかりのサウンドが響く! ステージ背後で爆発! 爆音のあまり音響設備がオーバーフローしたのだ! ウィーピピー!
「みなさんっ! 今日は私たちのステージに来てくれて、ありがとうございますっ!」
「私たちは、ブーブス・イルミネーション・セクシー・スターズ! BISSって呼んでください!」
「一個前のアンティーカさんに負けないくらい激しいステージにするからー! 見ててねー!」
「「「ウオオオオーーーー!!!」」」
一気にボルテージがマックスになり、竜巻めいたサークルモッシュが客席を呑み込む! 乗り遅れたライブキッズがミンチに!
B・I・S・S! B・I・S・S! 竜巻モッシュから地鳴りのごとく湧き上がるBISSコール! 音響設備がさらに爆発! 修理スタッフが吹き飛んだ!
「アーイイ……遥かに良い……」
客席の最後部で腕組みしているプロデューサーは高笑いをあげた。新しいイルミネーション・スターズの形がここに誕生したのだ。
「これはキンボシ・オオキイだぞ……タカヤマCEOにも喜んで頂けるに違いない」
プロデューサーとして入社して5年。いよいよカチグミ・サラリマンへの道が開けた彼は、絶頂の最中にいたのだ。
プロデューサーの視線の先、爆音と爆発はさらに激しさを増している。虹色のイルカが空を飛び、流れ星が吹き上がる。おお、見よ。七つの南十字星が一直線に並ぶ。海を越え空を越え宇宙を超えた先の先から、雷雲が襲いくる。
彼女たちは今や、神の領域に居ると言っても過言ではない。その歌は天候をすら操り、ライブの雰囲気に合わせてDAY1だけ雨にしたりDAY2だけ晴れにしたりしてのけるほどだ。そんな彼女たちが海外進出を目指すというのは、決して無謀なことではなかろう。
ライブハ更に激しさを増す。音響機器に続きライトまでもが爆発し、観客たちのボルテージは更に高まっていく。千年の後まで語り継がれる伝説のライブはこうして幕を開けたわけだが──時を同じくして、人知れず飛行機を降りた者がいた。
BISSの次なる挑戦の地、アメリカ。我らがドラマー、アーマー・インが、ライブを抜け出してまでこの地へとやってきたのには、理由があった。カリフォルニアの大地をひと睨みし、車に乗った彼は、目的地を呟く。
「メゾン・ド・アボガド・ハウス」
アメリカ大陸の中で最もハリケーンが多いとされるその地で、その日本的アパルトメントの名前を冠した奴隷船のような名前のライブハウスは、彼がラディカル・ハイスクールの時分に行なった抵抗運動(ピザのトッピングをママレード・サラミだけにする州条例に対する)のホワイトハウスの次に思い入れのあるハコでもあった。晴天の下、ハイスクール卒業の日、蠍座流星群の夜に見た夢を思い返しながら、彼は空港のタクシー乗り場で置き引き犯に対し誠意あるドゲザを行なっている彼女の名を呼んだ。
「ヒオリ・カザノ」
聡明なる読者諸君であれば、その呼びかけに疑問を抱いたことであろう。ヒオリ・カザノ。それは、我らがBISSのベーシスト、ラッキーのオリジナル・ネームである。彼女ば今、ムサシノの森特設してーじでライブをしているはずでは?
アーマー・インは彼女のドゲザを一瞥し、エンジンを掛けた。今は構っている場合ではない。一刻も早く、彼の地へ至らねば。
バリバリバリバババババババブロロロロ……! アーマー・インの車は、重苦しいエンジン音と共に走り出し──ヒオリの背後にひとりの優男が現れたのは、ちょうどそんなタイミングであった。
「ザッケンナッ! コッラー!!」
無言でドゲザの姿勢を崩さないヒオリに対して、置き引きヤクザがツバを飛ばす。恐ろしいほどの無言、ジャパニーズスイマセンの一言もなく、ヒオリカザノ特有のひおひおムービングもないことにヤクザも困惑し始めているのが分かる。
「何かうちのカザノと何かございましたか?」
無言でドゲザを続けるカザノに不気味な気配を感じていたか、置き引きヤクザが現れた優男に矛先を向ける。折り目正しいスーツは彼の戦闘服、滲み出る話が通じる相手だろう気配に口を開こうとしたヤクザの顔面に、その時多量の鳩が舞い降りた!
ライクアヒッチコック、周囲のサラリマンやパッセンジャーたちは遠巻きにカメラを構えてその様子を撮影している。
「ヒオリちゃん!」
「ヒ・オ・リー!」
口の中に鳩を詰め込まれたヤクザがふらふらとタクシー乗り場を離れていく、プロデューサーの後ろからやってきたのはご存知BISSの二人である。
未だ美しいドゲザを続けるヒオリにマノとメグルがハグをしていく。おお、あれこそはブーブス・イルミネーション・セクシー・なかよし・ハグ、3人が揃った時点で周囲の人々がざわめき始める、あれって、もしかすると……広がっていくざわめきが鳩騒ぎを薄れさせていく。BISSはムサシノでライブをやっていたはずでは⁉︎
「誠意が通じて良かった……」
去ったヤクザの小さな背中を遠く眺めながら、人がいなくなったタクシー乗り場で3人と一人はタクシーに乗り込んだ。
「アーマー・インを追って!」
「ヨロコンデー!!」
***
メゾン・ド÷アボガドハウスにたどり着いたアーマー・インは、平たく言えば絶句した。そこに広がるのはあの懐かしき夢の泉ではなく、悲しき春風に吹かれるダイナウィングであった。一面の砂漠、地下も地上も等しく砂に埋め尽くされたその地は、刹那の極みの如く枯れ果てている。自らにゆかりのふかいハコの変わり果てた姿を見て、それでもしかし折れることなく、彼は車に乗り込み、再びアクセルを踏み込むのだった。
「メゾン・ド・アボガド・ハウス」に来れば、その呪縛から少しは解放されるだろう……そう思っていたアーマー・インだったが、重くのしかかる記憶を振り払うことは叶わなかった。
「ブッダ……眠っているのか、お前は……」
忌々しく吐き捨てながら、ハンドルを切る。ふと、バックミラーに映る車両がずっと同じタクシーであることに気がついた。
「ほう……何者かはわからないが、私を追うか。なぜ私が甘くないと自称するか、味わってみるといい」
アーマー・インは、ひとまず纏わり付く過去を脳内から振り払うと、ギアを入れ「」替え、フォームをチェンジした!
おお、見るがいい! アーマー・インの乗る社章タクシーはみるみるうちに変形!
さながら武装オープンカーじみたその姿は、明らかに戦闘態勢のそれだ!
社章タクシーはさらに、細部まで作り込まれた変形機構が駆動し、コンピュータ・グラフィックめいた滑らかさでゴリラ型の二足歩行ロボへと変形した!
「ええっ⁉︎ コ○ボイ⁉︎」
声をあげたのはメグルである。驚く彼女の視界の先、二足歩行ロボは腕の脛の肘の肩の背中のミサイルポッドを展開! 一同をロックオン!
イボンコペッタンコ! 秒間三百発のミサイルがBISSを襲う!
「ブッダ! もしかしてこっちに気がついてた⁉︎」
「アブナイ!」
メグルは驚きを隠せない様子だ。ヒオリは慌ててタクシー運転手を庇った。
これがもし、マノやメグルであれば、豊満な肉体が押し付けられて運転手はハンドル操作を誤っていたことだろう。
幸運にも、彼女のバストは平均的だった。平均的である。
迫りくるミサイル! タクシー運転手は叫びながらそれを全て躱した!
「ヨロコンデー!!!」
見よ、このプロ意識を。こうでなくてはアメリカのタクシー運転手は務まらないとでもいうのだろうか。
「あと少しで追いつけます!」
ムンッ! マノは得意のシャウトで意気込む。ついに対面するのだ、アーマー・インと!
アーマー・インは目を剥いた。タクシーはミサイルの爆風をエネルギー源に超加速し、二足歩行ロボとの距離を瞬く間に詰めてみせる。
「アーマー・インさん! 私たちも連れていってください!」
外部スピーカーからマノの声が響き渡り、アーマー・インの元に届く。それと同時に、タクシーは通りすがりのメタルキリコをジャンプ台に、天高く跳ね上がった!
「あなたが好きなもの! したいこと! まるごと知りたいんです!」
「ひとりでそんなに抱え込まないでください!」
「私たち、おなじBISSのメンバーでしょ⁉︎ なんで逃げるのーっ⁉︎」
「ヌゥ……!」
マノの、ヒオリの、メグルの叫びが──点と点と点が繋がって、アーマー・インを強く揺さぶる。然り。彼女たちは強くなった。神と並べるほどに。アーマー・インに課せられたアボガドの呪縛を、解き放てるほどに!
「「「いけーっ!」」」
「ウオーーーーッ!」
タクシーはドリルめいて錐揉み回転! 二足歩行ロボの胸部装甲を、その奥のコクピットを、そしてアーマー・インを貫いた!
KA−BOOOOOOON!!!
二足歩行ロボが爆散! 一方その頃、日本でライブをしていザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
ザザザザザザザザザザザザザザザザザ
ピーーーーーーーーー
***
「………………は?」
「えっ。これで終わりっすか?」
「あれっ⁉︎」
っふゆとあさひの言葉に、愛依が素っ頓狂な声をあげた。「あれっ⁉︎;じゃないのよ。なによこれ。
画面には七色のカラーバーが表示され、ピーーーーーと一定の音が流れ続けている。「ふゆ」ことこの私、黛冬優子は、盛大にため息をついた。
時刻は深夜二時。ホラー映画を見ようと言い出した愛依が取り出したビデオ(令和にもなってビデオよ。正気?)を再生してみたら急にイルミねがトンチキなことしてるドラマが流れ出して、さすがのふゆもどういう顔をすれば良いかわからない。
「なんかよくわかんなかったっす……」
「ちょっと愛依。これなに? なんかのドッキリ?」
「いやいやいやいや! ホントにホラー映画なんだって!」
ふゆたちに詰め寄られた愛依はぶんぶんと両手をふって、言葉を続けた。
「こっから、アーマー・インが変身すんの! そんで、イザナギ? になって、地獄から軍隊を解き放っちゃうの! そんでBISSは実は陰陽師で、ライブは悪霊退治で……!」
「ドドドの鬼次郎の新作のあらすじでしょそれ」
「ホントなんだって冬優子ちゃん〜〜〜!!!」
テレビからは相変わらずピーーーと音が流れ続けていて、カラーバーも微動だにしない。縋り付いてくる愛依をふゆがあしらっている一方で、あさひはそんな画面をじーっと眺めていて。
「……あ。そういうことっすか」
藪から棒にそう呟いて、画面へと手を伸ば──
ずぶ。
「──え」
あさひの手が、いや腕が、テレビの画面へと吸い込まれて。
「冬優子ちゃん、愛依ちゃん! 行くっすよ!」
「え、ちょ」
ふゆが事態を飲み込めずにいるうちに、あさひの身体はずるずると画面に吸い込まれていく。は、ちょっと待って。なに。なんで? なにやってんのアンタ⁉︎
「あさひちゃん⁉︎」
「ちょ、愛依!」
テンパるふゆとは対照的に、愛依は咄嗟にあさひの足を掴んだ。そしてそのまま、あさひと共に画面へと引き摺られていく!
「うわっ⁉︎ な、なんこれ⁉︎」
「ちょ、ま、待ちなさ……きゃっ⁉︎」
黛冬優子一生の不覚。足元に落ちていたスマホを踏んで、ふゆは見事に転倒。画面に吸い込まれかけていた二人にタックルをする羽目になって。
「ちょ、な、なにこれ──」
──そのまま、画面の向こうへと吸い込まれてしまったのだった!
──『映画の世界に転生したけど、ふゆたちは最強無敵だから無双しちゃいました』 今秋、あなたは伝説を目撃する!
(完)
あとがき
本作の元ネタはダイハードテイルズのエイプリルフール企画のアレです。書いている最中にフォロワーと飲み会があったので、元ネタリスペクトでゲストライターとしてリレー小説に参加してもらいました。ありがとうriyaさん、ぐらぐら幽霊さん、紫緑さん、ケイさん!
『帰ってきたシャニマス泥酔制作合同』は、以前この記事でお話しした「呑みながら同人誌作る」企画の第二弾です。
リスペクト元はもちろんマリナ湯森さん主催の『呑みながら書きました』。クリスマスあたりにまたやるようなので、ライナーノーツはその時にやりますネ。
泥酔合同参加者各位も是非是非、本家本元に参加してみてくださいなー
🍑いただいたドネートはたぶん日本酒に化けます 🍑感想等はお気軽に質問箱にどうぞ! https://peing.net/ja/tate_ala_arc 🍑なお現物支給も受け付けています。 http://amzn.asia/f1QZoXz