そつぎょおする #架空ヶ崎高校卒業文集

そつぎょおする #架空ヶ崎高校卒業文集

 1994年  3年A組 どぐまげんち  あのまちからてんこおしてちょんとそつぎょおできるよおになった。てんこおするまで勉強なんてしたことなかったのでちゃんと勉強できるかふあんだったけど、めありせんせえがもじおおしえてくれた。だからちょんと卒業文しゅうもかける。せんせえにすごくありがとう。もじまちがえるとびりびりするぼおしでかぶせてくれた。せんせえのおかげでもじあんましまちがえなくなった。さんすうもおなじぼおしとくすりでおしえてくれた。くすりすげえにがかったっけどゆびあんま

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出口兄妹の冒険 Vol.9

出口兄妹の冒険 Vol.9

 男たちは一言も発することなく、文則を取り囲んだ。 「それで、お兄さんたちは誰さんたちだい?」  右手の口が蠢き、言葉を発した。  男たちは文則を取り囲んだまま答えない。左の手の平がため息をつく。手のぎりぎり届かない距離。文則の間合いの外。文則のことを知っているのだろうか。 「先週の第三管区の廃倉庫」  包囲の外から声がした。囲みが少しだけ割れ、一人の男が姿を現した。鋭い眼光をした、やや小柄な男だった。文則は舌の先に、男が全身から放つ痺れるような殺気を感じた。 「覚えはない

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映画館の見る夢

映画館の見る夢

 この街で消えた人間を探すのは、失くした目玉を見つけるよりも難しい。ボスに命じられなければ、職場に来なくなった同僚、田中のことなど尾内はすぐに忘れていただろう。人が消えるのは珍しいことではないのだ。  こうして通りを探して見つかるものだろうか。尾内は首を傾げる。そもそも今どんな姿になっているだろう。路地裏で酔いつぶれているのか、義体肌屋に並んでいるのか、それともあの臓物煮の鍋の中で食欲をそそる匂いを立てているのか。 「ん?」  探索する視界に奇妙なものが引っ掛かった。ペンキで

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手口兄妹の冒険 vol.8

手口兄妹の冒険 vol.8

 薄暗い廊下をミタケの大きな背中に背負われて進む。瓦礫をよけるときに少しだけ傾ぐ。萎え切った両腕がミタケの肩にしがみつく。両手のひらの閉じた唇は汗ばんだ塩気を感じている。  部屋を一つ一つ覗いていく。そのうちの多くが無人の部屋だった。なにかの拭いきれない汚れが飛び散った荒廃した部屋ばかり。  まれになにかのいる気配のする部屋はあった。部屋全体が肉のように柔らかい壁で覆われた部屋。わずかにうごめく巨大な肉塊が収められたガラスのケースが置かれた部屋。装置の隙間からぎょろりとした目

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手口兄妹の冒険 vol.7

手口兄妹の冒険 vol.7

【前】  病院での日々は恐怖と苦痛に満ちた日々だった。看護婦が古ぼけた台車を押して廊下をやって来るキーキーという軋みの音。その音を聞くたびに文則は吐き気がこみあげ、体が震えはじめる。残飯と汚濁の和え物。そんなものを体に入れたくないと思う。けれども、文則の意思を無視して両手の口は皿に積まれた塊を貪り食ってしまう。   一度ひどく抵抗したことがあった。  手のひらを拳に握り、食欲を堪え、皿を振り払い、残飯の入ったバケツを押し倒した。残飯が部屋に飛び散り、悪臭が部屋を満たした。看

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【ドブヶ丘】明日歩照子は商人~青野研究所裏 殺戮オランウータンとの取引始~

【ドブヶ丘】明日歩照子は商人~青野研究所裏 殺戮オランウータンとの取引始~

「ドブ……FM……うのニュースをおつた……ます」    カウンターの端の柱に括りつけられたラジオがとぎれとぎれのノイズの中に意味のある羅列を吐いた気がして明日歩照子は耳をすました。  汚濁都市ドブヶ丘では情報の有無が寿命を左右することが少なくない。とりわけ、照子のように商品を売り買いして生計を立てているものにとっては。かといって海賊ラジオの情報なんかをたやすく信用する者もあっという間に命を落とすのだけれども。  ラジオのノイズをどのくらい信じられるかを考えながら、泡の消えたぬ

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手口兄妹の冒険 vol.6

手口兄妹の冒険 vol.6

【前】  誰かに呼ばれた気がして、文則は目を覚ました。目を開く。自分がベッドの上に横たわっているのに気がつく。切れかけた蛍光灯がひび割れた天井を照らしている。  体を起こす。崩れかけた壁、なにかの汚れが染み付いたベッド。  病室だろうか? 自問する。  部屋には文則の他に誰もいない。  誰もいない?  ――沙亜耶!  手の中、失われているぬくもり。叫んだ名は音にならずに消えた。口が動かないのに気がつく。混乱。動転。慌てて口元を触る。ザラザラとした手応え。糸の手触り。乱暴に、

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手口兄妹の冒険 vol.5

手口兄妹の冒険 vol.5

【前】 数年前:ドブヶ丘無垢露通り  その町並みは混沌と悪意、汚染と毒性がこびりつき、いびつな印象を見る者に与えている。そこかしらの物陰にうずくまる住人たちは時折通行人たちにうつろな視線を投げかける。  数人の住人が通り過ぎた二人組に訝し気に眺めた。少年と彼より少し幼い少女だ。少女は疲れ切った様子で、今にも倒れそうになりながらとぼとぼと歩いている。   その手を引く少年はやはり疲れ果てているけれども、おどおどとあたりを見回しながら歩いている。   どうしてここにいるのだろう

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手口兄妹の冒険 vol.4

手口兄妹の冒険 vol.4

【前】 ドブヶ丘銀座バラック飲み屋 「ドブギンボール二つ、お待たせ」  ウリダはひび割れたジョッキを二つ、がたつく机の上に置いた。机に座る、人相の悪い二人組は「どうも」と軽く頭を下げて、ジョッキを受け取った。ジョッキの中ではヘドロのような色をした液体が不気味な泡を立てている。 「すみませーん」 「はいはい、ちょっと待っててね」  声をかけてきた別の客に答えながらウリダは開いたグラスを流し代わりのタライに突っ込んだ。  持ち主が「行方不明」になったドブヶ丘銀座のバラックを改

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出口兄妹の冒険 vol.3

出口兄妹の冒険 vol.3

【前】 下水道  ドブヶ丘にかつて文明があった証として下水道の存在があげられる。いつ誰が掘ったのかも、どこに続いているのかも皆目わからない下水道には、町の淀みという淀み、濁りと言う濁りが流れ込み、悪臭と混沌が濃縮され続けている。その全貌を把握する者はいない。  この町で地図を作ろうとする変わり者は少ないし、数少ない変わり者はたいてい短い生涯を終える。好奇心が猫をも殺すのはドブヶ丘においても同様なのだ。   探索者の命を奪うのは有害な排水やそこから発生する異常生物だけではない

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