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マッドパーティードブキュア 156

 声の主の少女はマラキイだった。その隣に座る男がズウラだ。
「こっちだ、こっち、早く来いよ」
 マラキイが腰を浮かせて手招きをする。
 メンチとテツノは顔を見合わせて、頷き、警戒しながらテーブルに近づいていく。あのように呼び掛けてくるような性格だっただろうか。合わないでいる短い期間に変質することでもあったのだろうか。それとも、何かが変質してマラキイの姿をとっているのかもしれない。
 そっと腰に提げた斧を握る。さりげなく足を速めて、先頭に立つ。
 テーブルに近づく。左手でテツノと女神と影の男を軽く遠ざけておいて、じっとマラキイたちを観察する。
 あまり変わった様子は見えない。別れたときよりも少しだけ、衣服の汚れが増えているような気がするだけだ。あの後も何度か獣と戦ったのだろうか、そんな感じの汚れだ。
「どうした?」
 不思議そうな顔でマラキイが尋ねる。察したようにズウラが口を挟んだ。
「あれじゃないでやすか? 兄ぃがやけに愛想良いから」
「悪いかよ」
「悪くはないでやすけど、怪しまれても仕方ねえでやす」
「あ?」
「あー、いや」
 曖昧に首を振るメンチにズウラは訳知り顔で頷いて見せる。
「あんまりに暇なんで、退屈しちまったんでやすよ」
「暇、だったのか?」
「まあ、それなりにな。最初はいくらか獣も出てきたんだけど、毎度掴み殺してやってたら、そのうち来なくなっちまってよ」
「なるほど」
 少しだけ、警戒を解く。嘘はなさそうだ。テツノたちに頷いて見せてから、椅子に座る。メンチは一番外側に座る。斧の柄には手をかけたままだ。
 メンチたちの様子を見てマラキイは言う。
「そっちもいろいろあったみたいじゃねえか」
「まあな」
「テツノもなんか影薄くなってねえか?」
「ちょっと影になっちゃいましてね」
 テツノが笑って答える。
 ふと、マラキイはテーブルの端にカップが二つ置かれているのに気がついた。中に何かの液体の入ったままのカップだった。

【つづく】

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