海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆…

海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆の万札が、銃弾やムーンライトクッキーに変わって、海月里ほとりをバックアップします。

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  • マッドパーティードブキュア

    ドブヶ丘で戦う魔法少女たちのお話です。

  • くらげの映画感想

    見た映画の感想をまとめています。 主にストーリの勉強のために見ている。 映画見るの初心者です。

  • ドブヶ丘関連

    自分で書いたドブヶ丘関連の色々を貯めていきます。

  • ドブヶ丘集

    妄想虚構都市ドブヶ丘に関する記事をここにためていきます。説明書をよくお読みになり用法容量を守ってお使いください。あなたドブヶ丘に踏み入るとき、ドブヶ丘もまたあなたに侵入している。

  • 出口兄妹の冒険

    腕に口持つお兄ちゃんが妹のために頑張る、怪物たちがドブヶ丘で切ったはったするお話です。

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目次記事

この記事は海月里ほとりの書いた小説をまとめた記事です。 いつの間にかずいぶんと数を書いていたので、辿りづらくなっているのではないだろうか。そんな時ここから選んでいけば好きなところから読めるという寸法だ。 ドブヶ丘の話とかSFな話とか、あとファンタジーな話を書いたりしている。 それぞれの小説の本文は無料ですが、投げ銭用にあとがきをつけていることがあります。気に入ったら読んでみてください。とてもうれしくなる。もちろん本文を読んでもらえるだけでもうれしいけれども。 ドブキュ

    • マッドパーティードブキュア 358

      「どっちにしても、黙ってみているつもりはないぞ」 「そりゃあ、そうだろうとも」  男が頷く。地上からはズウラと天使の声が低く聞こえてくる。殴り合いにも支配にも至ってはいないようだ。まだ、今のところは。つとめて冷静な声を作ってマラキイは言う。 「上もいつまでももつってわけじゃないだろ」 「ええ、さすがにズウラ君だけじゃ荷が重い」 「捨て駒ってことかよ」  盟主の軽い口調が、マラキイの心を苛立たせた。盟主はそのままの口調で肩をすくめる。 「君たちドブキュアがなんとかできるかどうか

      • マッドパーティードブキュア 357

         重々しい口調でそう言ったのは、初老の男だった。マラキイの知らない顔だった。  知らない顔? マラキイは一度そう判断してから、改めてその男の顔を見た。ありふれた顔だ。街のどこにでもいそうな、普通の男。だが、その男からは目を離すことを本能が拒否していた。目を逸らした瞬間にこちらに襲い掛かってくるような、そんな剣呑な気配をまとった男だった。  男は言葉を続ける。 「けれども、あのまま戦っていては勝てなかったというのは、わかっているね」 「ああ」  警戒を解かず、マラキイは頷く。不

        • マッドパーティードブキュア356

          「それは、わからないでやすけどね」  口を挟んだのは、ズウラだった。マラキイは背後に目をやった。ズウラは青ざめた顔をしていた。体も小刻みに震えている。それでも、ズウラは一歩足を前に踏み出した。 「でも、あんたらの世話にならなくても、今までやってこれたでやすから」 「それは、あなたがたまたま運が良かったからにすぎない」  天使はズウラに顔を向けた。ズウラはさらに一歩前に出る。マラキイの隣にやってくる。顔を天使に向けたまま、マラキイに小さく呟いた。 「兄ぃ、ここはあっしが時間を稼

        • 固定された記事

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          19本
        • 電波鉄道の夜
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        記事

          マッドパーティードブキュア 355

           マラキイの頭の中で鳴り響いていた金属の響きが乱れる。それが音であったことに気がつく。美しく鳴り響く、硬質なハーモニー。それがマラキイの意識を塗りつぶしていたのだ。だが、今、それは乱された。なぜ? 浮かんだ疑問が視界を意識に送り込む。黄金の天使の姿を認識する。体全身から輝く波動が流れているのが認識できた。そうだ、あれが倒すべき敵だ。意識を手繰り寄せる。波動は絶えず、意識を手放させようとささやきかけてくる。再び音がした。爆発音だった。波動が乱れる。視界に爆炎が上がるのが見える。

          マッドパーティードブキュア 355

          マッドパーティードブキュア 354

           わずかに稼働する意識が、その不快感が痛みという感覚であることを思い出す。手指の欠落。この欠落は完璧になることを妨げるだろうか? いや、問題はない。不快感を無視して、気をつけの姿勢に戻る。やがて秩序が欠落を埋めてくれるだろう。  だが、不快感は消えない。手指に絡みつくつくように残り続ける。なにかが、混ざりあったなにかが、調和を阻害する。混合物が、頭に鳴り響く調和の音楽を乱して妨げる。うるさい。うるさい声だ。聞きたくない。わめき続ける声。やめろ。静かにしろ。心がざわめく。 「や

          マッドパーティードブキュア 354

          マッドパーティードブキュア 353

           メンチが斧を振り上げて、振り降ろす。完璧なタイミング、必殺の一撃。メンチの斧はたしかに天使の頭部を捉えていた。魔法少女の力をエンハンスされた斧の勢いに、マラキイは縦に両断される天使の姿を予測した。だが 「え?」  驚きの声が消失したマラキイの意識に僅かに残った。消失は数瞬だった。マラキイは自分が気をつけの姿勢で直立していることに気がついた。  過程はなかった。すくなくとも意識できる過程は。ページの抜けたドブグラム(無電源視覚幻覚剤)のように意識が不連続になっている。 「てめ

          マッドパーティードブキュア 353

          マッドパーティードブキュア 352

          「あれは戦うような……戦えるような相手ではないのです」 「その言葉は何度も聞いたぞ」  マラキイは不機嫌そうに言い返した。実際に何度もセエジの口から出た言葉だった。「戦うべきではない」という言葉は。けれども、そのたびにマラキイはその言葉に抗ってきた。そして、その度に覆してきた。今度もそうなるはずだ。すくなくともマラキイはそのつもりだった。  ましてや、今戦わなくて、どこへ逃げるというのだろう。マラキイは目の前のきれいな街並みを見つめる。浄化された世界では、マラキイはマラキイの

          マッドパーティードブキュア 352

          少年とイモニ用ショベルカーの話

           これは私がある地方の山奥の村で聞いた話である。  昔、村に一人の少年がいた。  少年はある夏、村の神社で一人の少女と出会った。大柄な少女だった。ときおり密かに神社で会って遊ぶうちに、少年は少女と仲良くなっていった。  少年は少女についていくつか奇妙なことに気がついた。ひどく力持ちであること、土の汚れを嫌うこと、祭事で作られる「イモニ」という料理に強い執着を示すことなどだ。  「イモニ」というのは芋などを煮込んだ料理だという。祭事においては大量の「イモニ」を作るために、巨大

          少年とイモニ用ショベルカーの話

          マッドパーティードブキュア 351

           声は空から降ってきた。その声は機械のように無機質な声だった。 「この地区での破壊行為は禁止されています」  繰り返された口調は先ほどとまったく同じ調子だった。  声の方角を見上げる。  そこにいたのは天使だった。  堂々たる体躯は一切の妥協なく非生物じみた等角と黄金比で構成されていた。その表面には一寸の汚れもなく、磨き上げられた黄金に輝いている。一つの頭、二対の翼、四対の腕。どのような姿勢をとっても調和に満たされた存在であった。痛々しく失われた一本の腕を除いては。  その天

          マッドパーティードブキュア 351

          マッドパーティードブキュア350

           セエジは答えない。だが、首を有ふりさえしないことが問いかけへの肯定を伝えていた。  重苦しい沈黙が流れる。清浄な空気が肺を蝕んでいるようで、マラキイは胸がムズムズするのを感じた。 「なぁあああ!」  突然の奇声が静寂を破った。メンチの叫び声だった。メンチは奇声を上げながら斧を振り上げていた。そのまま見事に整えられた道端の建物に斧を叩きつけた。  黄金に輝く欠片が宙を舞った。欠片の中に混じった黄金の文字式が絡み合い、元の形状へ戻ろうとする。形が修復される前に、メンチが再度斧を

          マッドパーティードブキュア350

          マッドパーティードブキュア 349

           マラキイが先陣を切った。  切り裂かれた境界の割れ目が、ぬらりと身体をなでる。  境界を越えた瞬間に、空気が変わった。  混沌地区の空気とも粘体ともつかない、ねっとりとした質感の空気はっ境界ではっきりと遮断されていた。代わりにマラキイの肺に流れ込んだのは澄んだ空気だった。吸うだけで思考がクリアになるような気がする。 「なんだ、これは」  あたりを見渡して声をもらす。  変わっていたのは空気だけではなかった。道路も、建物も、街並みも、なにもかも記憶にあるドブヶ丘とは大きく変わ

          マッドパーティードブキュア 349

          リクエスト・フォー・ラグジュアリー・ラーメン

          「ねえ、皆さん、少しわたくしのわがままを聞いてはくれませんか?」  いやに真剣な蘭子の声にゆうは立ち止まった。  スタジオでの収録が終わり、東西南北(仮)の四人で駅へと向かって歩いている途中でのできごとだった。  その日は機材トラブルが発生して、収録が長引いた日だった。想定外の長丁場で、食事もとれず、ケータリングの菓子で飢えをしのいでなんとか収録を終わらせたところだった。  空腹に急ぐ足を止めて、ゆうが振り返ると、蘭子はひどく深刻な顔で、商店街の道端で立ち尽くしていた。異変に

          リクエスト・フォー・ラグジュアリー・ラーメン

          マッドパーティードブキュア 348

           メンチの斧が眩く煌めき、何もない空間を切り裂いた。はらり、と空間に裂け目が入る。 「できた……はずだ」  メンチが自信なさげに呟く。マラキイはその裂け目から流れ込む空気を感じて、自身がなさそうな様子の理由がわかる気がした。 「これは……この向こうは本当にドブヶ丘なのですか?」 「ああ、他の世界が間に挟まる隙間なんてありゃしない」 「でも、これは……」  裂け目から流れ出てくる空気は透き通るほどに清浄で、わずかに吸うだけで心が澄み渡るような澄んだ空気だった。そんな空気はドブヶ

          マッドパーティードブキュア 348

          マッドパーティードブキュア 347

           身の内に取り込んだ、黄金の腕の知識がマラキイに告げてくる。  まだ終わってはいない。 「まさか、ラゲドがまだ生きているのか?」 「いいや」  マラキイは首を振る。ラゲドは倒した。その骸は今も少し離れたところに横たわっている。それはたしかにラゲドの亡骸だ。影武者などではない。  骸は一瞬ごとに姿を変える玉虫色の空を見上げていた。  そこにはもう輝く方陣はない。ただいくつか空いた穴から美しい青空が覗いているだけだ。その穴も輪郭はおぼろになりつつある。そのうち混沌が空にあいた穴を

          マッドパーティードブキュア 347

          マッドパーティードブキュア 346

           緩慢な時間の流れが、本来の速度を取り戻す。  マラキイと黄金の手は元の領域にいた。中空のメンチの斧が、振り下ろされる。黄金の手はもう動けない。かわすことはできない。  斧の刃が黄金の手の表面に触れる。歪んだ轟音。躊躇も逡巡もなく、七色に輝く刃は黄金の秩序装置を切り拓き破壊していく。指のない手はばらばらと形を失い、四散していく。 「ざんねんだよ」  散り散りになっていく意識の破片が、マラキイに語り掛けてきた。その声には何の感情も込められていないように思えた。後悔も、未練も。け

          マッドパーティードブキュア 346