海月里ほとり

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海月里ほとり

俺は小説書きサイボーグ。淡々と小説を書いてお前を押しつぶす。 お代は見てのお帰り。 皆の万札が、銃弾やムーンライトクッキーに変わって、海月里ほとりをバックアップします。

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  • マッドパーティードブキュア

    ドブヶ丘で戦う魔法少女たちのお話です。

  • くらげの映画感想

    見た映画の感想をまとめています。 主にストーリの勉強のために見ている。 映画見るの初心者です。

  • ドブヶ丘関連

    自分で書いたドブヶ丘関連の色々を貯めていきます。

  • ドブヶ丘集

    妄想虚構都市ドブヶ丘に関する記事をここにためていきます。説明書をよくお読みになり用法容量を守ってお使いください。あなたドブヶ丘に踏み入るとき、ドブヶ丘もまたあなたに侵入している。

  • 出口兄妹の冒険

    腕に口持つお兄ちゃんが妹のために頑張る、怪物たちがドブヶ丘で切ったはったするお話です。

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目次記事

この記事は海月里ほとりの書いた小説をまとめた記事です。 いつの間にかずいぶんと数を書いていたので、辿りづらくなっているのではないだろうか。そんな時ここから選んでいけば好きなところから読めるという寸法だ。 ドブヶ丘の話とかSFな話とか、あとファンタジーな話を書いたりしている。 それぞれの小説の本文は無料ですが、投げ銭用にあとがきをつけていることがあります。気に入ったら読んでみてください。とてもうれしくなる。もちろん本文を読んでもらえるだけでもうれしいけれども。 ドブキュ

    • 電波鉄道の夜(創作大賞応募用)

      【あらすじ】  みんな頭の中にだけいる非実在のアイドル、セロリモネ。聞こえるはずのない彼女の声を探して、夜、見知らぬ電車に乗るお話。  その電車は奇妙な電車だった。どこまでも続く車両にどこへ行くともしれない線路。  乗ってくるのも奇妙な乗客ばかりだ。物売り、夜盗、兄妹と先生。  いろいろな人が乗ってきて、いろいろなお話をして、電車を降りていく。  時には危険な目にもあい、時には自分を見失ったりしながらも、それでも僕はセロリモネを探して、電車に乗ってどこまでも行く。  はたし

      • マッドパーティードブキュア 297

         テツノがうつむいて言葉を続ける。 「それに私が外に出るよりも、なんとかしてマラキイさんが外に出た方が」 「そうできるならそうするが」  マラキイは空を見上げた。何度見直しても空の穴は遠い。 「あいにく、俺じゃあどうやってもあそこには届かない」 「私でもとどかないですよ」 「いや」  マラキイは首を振る。魔法少女ドブキュアの判断力が一つの策を授けていた。自分自身を脱出させることはできないけれども、テツノを逃がすことはできる。 「私が外に出ても何もできないですし」 「俺とお前の

        • マッドパーティードブキュア 296

           肉の塔を登り、視点が高くなってからマラキイは気がついた。 「袋だ」 「え?」 「俺たちは今、袋のなかにいる」  テツノに言葉の員は伝わっただろうか。  マラキイたちは巨大な袋のなかにいた。  集められた混沌の靄は袋のなかに集められたせいで濃くなっているのだ。空に見える方陣は、空高くにあるので天に開いた穴から覗いて見えるのだ。 「マラキイさん、あれが袋の口ですよね」 「ああ、たぶんな」  テツノが空の穴を指差して尋ねる。天に開いたその穴、それは袋の入り口。 「なんだかだんだん

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        記事

          マッドパーティードブキュア 295

           テツノの気配が薄れて、すぐに戻ってくる。 「どうだ?」 「それが……」  帰ってきた囁き声は戸惑いにあふれた声だった。 「どうした?」 「どこにも奴がいないのです」 「逃げたか?」 「いえ、それにしては……」  テツノの薄い影が隣で首を傾げる。違和感はマラキイも感じていた。たしかに何かおかしい。ならば、どうするべきだ? ラゲドたちの行動の意図はマラキイたちにはわからない。どう打って出るべきかを判断しかねていた。 「またさっきみたいにそこいらに隠れているということはないのか?

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          マッドパーティードブキュア 294

           耳が落ち着いたその声を捉える。体中の血液が燃えるように沸き立つ。度重なる裏切りの記憶。その度に飲まされた苦渋。 「ラゲド」  脳を焼く怒りを押さえつけて、低く声の主の名を呼ぶ。 「おやおや、覚えておいていただけたとは光栄だ」 「まさか本人がこんなところにお出ましとはな」 「それなりに重要な局面ですので」  こちらの声に含まれる怨嗟に気がついているのか、それとも無視しているのか、どこから冷静で嫌味な声が聞こえてくる。どこから聞こえてくるのだろう。  先ほどラゲドの姿が見えたあ

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          マッドパーティードブキュア 293

           身構えて、衝撃に備える。  静寂。衝撃は来ない。 「ん?」  細めていた目を開く。  人面の獣の姿はない。 「逃げ……た?」  あたりを見渡す。原生生物たちも不思議そうな顔をしながら辺りを見渡している。 「どこに行った?」 「わかりません」 「気配は?」 「それが、影も形も、残り香も」  テツノの戸惑いに満ちた声が聞こえる。本当に見つけられないようだった。 「逃げたのか?」 「それも、わかりません。かくれているだけかも」 「ぎゅばおん!」  ふいに、原生生物の一匹が悲鳴を上

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          マッドパーティードブキュア 292

          「さて、どうする?」  マラキイは一歩人面の獣に向かって足を踏み出した。慎重に。とどめのタイミングは見誤らないように。だが。さらに一歩足を踏み出す。あまりのんびりする時間もない。 「おとなしく事情を話すなら逃がしてやってもいいが」 「そういうわけにもいかねえな」  獣はマラキイを見つめ返してくる。虚勢か意地か、それともまだ何か策があるのか。獣の目の輝きは失われていない。 「まあ、野蛮な獣たちに期待をしていたわけじゃあない。手前らをぶち転がすのなんて私一人で十分さ」  その言葉

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          マッドパーティードブキュア 291

          「案の定、原生生物をいじっていたか。外から持ち込むには資源がかかりすぎるものなぁ」  マラキイは人頭の獣、今はただ一匹残された直線の獣に向かって、笑いかける。頬が緩み、口角が上がっていくのを止められない。策を考えるのは好きじゃないが、考えた策に敵がはまった時の楽しさは嫌いじゃない。  直線の表面を失った原生生物たちの痙攣は止まっていた。胡乱な感覚器たちが人頭の獣に向けられる。 「上手くいったよ」  マラキイのかたわらにテツノの影が像を結んだ。 「みたいだな」  マラキイは人頭

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          マッドパーティードブキュア 290

          「へえ」  マラキイは驚きの声を漏らす。  剥がれ落ちた空間の向こう側から、直線の獣たちが姿を現す。獣たちは羊膜を振り払うように身震いをした。体にまとわりついていた混沌の光景が砕けて落ちる。  二匹、三匹。マラキイは目で獣の数を数える。七匹だ。輪郭のはっきりした獣は数えやすい。 「それが隠し玉かい」  獣たちは完全に同期した動きで鋭い眼差しをマラキイに向ける。マラキイはそのまなざしを無視して、ただ一匹、人間の顔が生えた獣に語り掛ける。 「驚いてくれてうれしいよ」  人頭の獣は

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          マッドパーティードブキュア 289

           破裂音  今度は二つの音だった。繋がって、一つに聞こえるくらい、ほとんど同時に鳴り響いた音。  獣の姿が視界から消える。驚異的な初速だ。さっきよりも速い。今度弾けた袋は二つ。加速も二倍。だが、ドブキュアの視力ならば捉えられる。目で見えるなら、手で止められる。軌道に手をかざす。マラキイの右手がドブの七色に輝く。全てを捕え、掴む手のひら。 「ドブキュア! マッドネ……」  叫ぼうとしたところで、再び高い破裂音が響いた。獣の脇腹の袋がはじける。マラキイは目を見開く。獣の軌道が空中

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           ――はやい  マラキイの脳内をそんな思考が走る。呑気な感想が浮かぶよりも早く、身体は反応してくれていた。上半身が後方に逸れて、眼前を爪が通り過ぎる。ふわふわとした柔らかな前髪が数本、爪に切り裂かれて宙を舞う。  そのまま後ろに転がって距離をとる。  生身で戦うのには手強すぎる敵だ。  立ち上がり、心臓に手を当て、握りしめる。  口から叫び声がほとばしり出る。 「ドブキュア! マッドネスメタモーフ!」  虚空から現れたきらめくドブの奔流がマラキイを包み込む。身に着けていた服が

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           挑発するようにマラキイは声を投げつける。  毛のない獣の顔が笑う。のっぺりとした虚ろな笑顔だ。 「不意をつかにゃあ、勝てん相手でもないからな」  返ってきたのは平静な声だった。もとより、挑発に乗って隙を見せるような相手でもないだろう。こちらも挑発に乗ってやるつもりはない。答えながら頭を働かせる。  この獣が姿を現すまで、一切の気配はなかった。目にも映らず、物音もせず。出現を予測させるものはなにも感じられなかった。  なんらかの隠ぺい技能を持っているのは明らかだ。他には何を隠

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           身を隠すことなく、むしろ堂々とマラキイは歩を進めた。  瘴気の立ち寄らぬ球状の領域。その中央に見えるラゲドはあいかわらず熱心な様子で天空の方陣を見つめていた。一歩、マラキイは前にでる。ラゲドの顔が微笑んでいるのがわかる。期待に満ちた顔だ。  マラキイの接近にラゲドが気がついている様子はない。仮説は当たっていたようだ。ラゲドのいる領域と、マラキイのいる領域は切り分けられていて、互いに干渉できないのだろう。  さらに一歩、前に踏み出す。 「おやおやおやおや」  どこからともなく

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          「本当になにもいなかったのか?」 「ええ、私が関知できる範囲では」 「そうか」  テツノの言葉を聞いてマラキイは考え込む。違和感の正体を見つけておきたい。不意を打つつもりで、不意を打たれて無事に勝てる相手ではない。 「あそこにテトラポッドが見えるんだが」  遠くの風景を指さしてマラキイは言った。テツノの気配が頷いて、そちらの方に向く。 「やけにはっきりちゃんとした形に見えるんだよ。その向こうのリンゴも、麒麟も」 「そうですか?」  テツノが首を傾げる。マラキイの言わんとしてい

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           ああ、本当はそれが言いたかったのかと得心する。  テツノの顔は地面を向いていてよく見えない。そうでなくても影の姿は目に見えずらいというのに。だが、目を見なくてもその声を聴いただけでテツノが真剣であることはわかった。 「メンチはきっと帰ってきます。そのときに、この世界が変わっていたら、どこに戻ってくればいいかわかんなくなっちゃうじゃないですか」  テツノが繰り返す。そうかもしれない。あの斧で境界を切り裂いたとしても、律を書き換えられた世界で同じ場所に帰ってこれるとは限らない。

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