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マッドパーティードブキュア 257

 赤い水柱が次々とほとばしる。
「なにしやがった!?」
「ちゃんとしつけの効果が出たようだね」
「あ?」
 ドブパックの顔に浮かぶにやにや笑いがうっとおしい。殴りつけたくなる。が、衝動をこらえる。今起きていることを把握する方が重要だ。
「あんたの仕業だとでも言いたいのかい?」
「ああ、そうだよ。そうに決まってるだろう? あたしの『子どもたち』なんだ。どう扱おうと、あたしの勝手だ。他の誰かの意志にゆだねるくらいなら、とっとと命を絶つように言っていたんだよ」
 けらけらと笑いながら、ドブパックは語る。「子どもたち」が命を絶ったこと、それはどうでもいい。メンチはそう思った。重要なのは。
「袋の力の支配はなくなったはずじゃあ」
「袋? ああ、そうかい」
 ドブパックは笑って続ける。
「あんたはあたしはあの袋がないと何もできないと思ってるんだね。かわいそうに。もしかして、あんたはそうなのかい? その斧がないと何もできないんだね? 残念だけど、あんたがそうだからって、あたしがそうだとは限らないんだよ」
「強がってんじゃねえよ」
 メンチは言い返す。下腹に力を込めて。そうしないと圧力に声が震えそうな気がした。ドブパックは気にしないで続ける。
「強がりだと思うかい? だったらやってみればいい。あんたを倒して、あの婆さんも倒して、他にあんたの仲間が隠れてるなら、そいつもぶちのめして、それで万事解決、元の通りさ」
 淡々と言葉を続けるドブパックを、メンチはじっと観察する。どちらだろう。はったりなのか、本気なのか。見誤ってはならない。間違えてしまえば……。間違えてしまえば?
「大丈夫だよ」
 頭の中の声が囁く。
「相手がなんの力を使っているにしても、あたしが力を貸してあげるから、大丈夫さ」
 ふわりとメンチの魔法少女装束が揺らめく。握りしめた斧が手の中でじわりと熱を持つ。
 間違えたところで問題はないのだ。
 そんな考えが頭に浮かんだ。

【つづく】

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