マッドパーティードブキュア123
どうする? と、テツノはメンチの顔を見た。メンチは険しい顔をして頭をふる。
「信用できるかよ」
「そうですか?」
影が答える。その声は残念なように聞こえる。
「食べられるものくらいは出せると思いますけれども」
「こんなところでか?」
眉をぐいと上げながら、いぶかし気な調子でメンチが言う。メンチの気持ちはわかる。先ほどのレストランでの食事を思い出す。まだ秩序の見えていたあの領域、そこで出された認識困難な食べ物。いったいこの群れでの食事とはどんなものを出されるのだろう。
「ご厚意はありがたいのですけれども」
「ああ、いえ、いらないというのならいいのですけれども」
ずいぶんとしょんぼりとした調子で影が言う。家の影に向かってざわめきを伝える。もてなしは不要だと伝えているのだろうか。影たちはざわめきを交わし、残念そうに首を振りあう。
「あの」
思わず声を上げてしまったのは、そのやり取りがあんまりに無念そうだったから。視線の端にメンチの不満げな顔が映るのを無視する。
「お二人はどういう関係なんですか?」
「え?」
影が不思議そうな様子で尋ね返してくる。
「ずいぶんと仲がよさそうですから。このあたりでは仲の良い関係というのは一般的なのですか?」
「ええ、まあ」
影は照れくさそうに、頭を掻いた。
「いずれは統合できたらよいとは思っています」
「統合?」
耳慣れない言葉を聞き返す。ああ、と影は頷いて付け加えた。
「あなたたちには耳なじみのない言葉かもしれませんね。そうですね……統合というのは」
影はそこまで言って口ごもった。後ろから家の影が何か囁いて告げる。いくつかざわめきのやり取りをしてから影はようやく答えを見つける。
「まあ、その、あなたたちで言うところの、子どもを作る、とかそういうことになるんですかね」
「ああ、なるほど」
影の歯切れの悪い言い方と、二つの影の素振りから、言わんとすることを察して、テツノは頷いた。
【つづく】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?