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マッドパーティードブキュア 165

「倒されるために、送り込んできたってことか?」
「ええ、もしも獣たちを倒す存在がいたとすれば」
 セエジはそう言ってメンチとマラキイを眺めた。メンチの斧と、マラキイの拳。どちらも獣の煤で混沌に汚れている。
「そこに何かがあると考えるでしょうね」
「じゃあ、この場所がばれているということですか?」
 口を挟んだのは影の男だった。動揺の滲む声だった。
「あなたたちのやり方のままではすぐにばれていたでしょうね」
「どういうことでやすか?」
 すまし顔のセエジに、ズウラが問いかける。セエジは変わらぬ顔のままで答える。
「そうなるとまずいでしょう? ですから僕がここに来たのです」
「あ?」
「獣を倒す存在があると向こうはそれを危険と判断するでしょう。であれば」
 セエジは自信たっぷりの顔で一同を見渡した。
「別の獣を倒しうる存在を用意してやればいいのです。そうすれば、やつらはそちらにやられたと思うでしょう」
「別の存在ってのは、なんでやすか? こっちの世界にはあんまり強い人はいねえみたいですけど」
 メンチはレストランの店内を見渡した。そこかしこの席でざわめき声をかわす客たちは心なしか、以前より減っているような気がする。いくらマラキイやセエジが獣と戦ったとしても、この世界の存在たちが抵抗できないのであれば、犠牲を出さずにことを収めることは難しいだろう。
「先ほどの戦いをご覧になったでしょう? この世界の原生獣を使うのですよ。獣同士ならどちらが勝つかはわかりません」
「この世界の獣なんかであいつらの獣に勝てるのか? 随分強そうだったけどよ」
 メンチは斧の柄をさすりながら尋ねた。襲い掛かってくる獣たちの身に纏う混沌は容易に破れるものではない。この世界の原生生物がいかに強靭だったとしても簡単に戦えるとは思えない。
「多少は僕が強化しています。それに不自然にならない程度に指示も出しています。そうすれば十分に抵抗できるのですよ」

【つづく】

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