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マッドパーティドブキュア 326

 マラキイは会話をメンチに任せて、ラゲドの様子をうかがった。機はいつ来る? わからない。だが、今ではない。間違ったタイミングで仕掛ければ負ける。待ち、構える者、それがラゲドたちの正黄金律協会のやり方だ。そのやり口をもっと早くに知って入れば、現在の状況は違ったものになっていただろうか。悔やむ必要も余裕もない。
「あたしは……あたしらはこの街で生きてる。ちゃんといるんだ。たしかだったやつが曖昧になることもある、曖昧だったやつが実在を得ることもある。その境目こそが曖昧なんだ。誰がそれを判断するんだ」
「誰も判断なんてしません。不運なものが変質して失われるだけです」
「お前が……お前が不確かなものになったら、お前は大人しく消えるのか?」
「あたりまえでしょう。秩序が導くのであれば」
 二人のやりとりを聞き流しながら、マラキイはラケドを睨んでいた。激昂していくメンチとは対象的にラゲドは一切動じない。秩序の狂信者。一番揺るがしづらい相手だ。
 マラキイはちらりと空を見上げた。方陣は素人目にも完成に近づいていた。手も方陣も僅かな余白を残して大部分が完成している。
 時間はラゲドの味方をしていた。このまま方陣を完成させてしまえば、マラキイたちは戦うことさえできずに敗れる。完成してしまった完全に抗うことなどできやしない。
 ならば、せめてまだ勝機がある今のうちに仕掛けるべきだろうか? 勝算が完全になくなってしまう前に。
 どん、音がした。いつの間にか地面に落ちていた目線を上げる。音はメンチの斧が大地を叩いた音だった。
 二人の会話はいつの間にか終わっていた。
 メンチはズウラを睨みつけ、ズウラは二人を微笑んだまま見つめている。
 メンチの視線を感じた。マラキイに催促の目配せをしている。待て、の指令が撤回されるのを待っている。
 マラキイは腹を決めた。ふっと短く息を吐く。
 いいだろう。結局二人でできることはシンプルだ。

【つづく】

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