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マッドパーティードブキュア 327

「てめえは止まる気はねえってことだな」
 最後の質問を、マラキイはラゲドに問いかけた。ラゲドは意外そうな顔で答える。
「なんで止まる必要があるんですか? まさか、あなたたちが止めるとでも?」
「ああ」
「止められるとでも?」
 にっこりとラゲドは笑う。目の前の二人など何の脅威でもないというように。
「止められないって思うなら、やってみな!」
 マラキイは叫ぶ。メンチの前にかざしていた手のひらを下ろす。
 マラキイとメンチがラゲドに跳びかかったのは完全に同時だった。二人は一瞬で距離を詰めた。マラキイが右側からつかみかかり、メンチが左側から斧を振り下ろす。
「はあ、その程度ですか」
 ラゲドの呟き声が聞こえた。感情も混じらない声だった。予測通りのことが予測通りに起きた、つまらない事実を確認しただけの感想。
 マラキイはラゲドの喉元に手を伸ばした。必殺の距離だった。この距離なら逃さない。確実に喉を掴み握りつぶせる。だが
「んな!」
 驚きの声が漏れる。腕は伸びなかった。腕だけではない。全身が動かせない。マラキイは自分が空中で静止していることに気が付いた。
「てめえ! 何しやがった!」
 メンチの怒鳴り声が聞こえた。見るとラゲドを挟んで反対側で、メンチが同じく空中で静止していた。斧を振り上げたまま、驚きの表情を浮かべている。
 マラキイはメンチの身体を見つめる。そして気がつく。メンチの手足に黄金に輝く文字が絡みついているのが見えた。直線と円で構成された模様のような文字だった。
「メンチ、黄金律の呪文だ。切り払え!」
 マラキイの言葉にメンチがはっと我に返る。わずかに動く手首を返して斧で自分の手足に纏わりつく文字を切断する。
「こっちもだ」
 マラキイの呼びかけにメンチは勢いそのままにマラキイの手足の黄金文字も切り払った。二人は地面に着地する。目でメンチに指示を送る。メンチは頷く。二人は後ろに飛んでラゲドから距離をとった。

【つづく】


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