力鬼士の洞窟

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」(全セクション版)

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」(全セクション版)

1 「ファック野郎!」 スコップを振り下ろし、襲い来る力鬼士の指をぶった切る! 「ギァーーッ!」指は土に還る。力鬼士は後退し、チッチッと音を発した。仲間を喚んでいる! ボゴン! ボゴン! 床や壁から力鬼士が這い出す。囲まれた!「くそったれ……! まさか、実在するなんてな!」 デリックはスコップを振り回して威嚇し、事の発端を思い出す。 ◆ 「父を、助けて下さい!」デリックの店に飛び込んで来た少女は、小さな手で銀貨を差し出し、そう言った。「町の長老様や兵士さんにも頼んだ

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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」名鑑&ライナーノーツ

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」名鑑&ライナーノーツ

◆デリック(Derick) 土矮夫(ドワーフ)。エールッフ帝国の西方辺境、アドラノンの町に住む元傭兵の男。体格はよく、あごひげがある。昔はそれなりの荒くれだったが、結婚を機に足を洗い、これまでのツテを頼りに雑貨屋を経営している。 "女房と店を持つ引退した戦士で、今では地元の揉め事解決などを頼まれる男のようだ。長老や兵士らも手を出さないような案件に、彼は義理人情と侠気で首を突っ込み、知恵と人間性とカラテでなんとか解決して戻ってくる。タフな男だ。ガンドーのような私立探偵に近い

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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#4

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#4

【前回】 ……風は向こうから吹いてくる。あの、異様な節回しの歌のする方から。風は生臭く、磯臭い。 「ど、ど、どうしましょう」「あっちはヤバい。土の力鬼士どものいる方もヤバい。別の抜け道を探そう」デリックとヴァシリーは踵を返す。暗闇に目が慣れては来たが……いや、妙に明るい。苔やキノコの光じゃない。壁自体が光っている。それは二人を導くように、別の道へ伸びている。 デリックは息を呑む。「……これは、魔法ってやつか……実際に見るとはよ」 魔法。そうとしか言えない。おとぎ話の夢

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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#3

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#3

【前回】 大柄な男が小柄な男を背負い、スコップを杖に洞窟を進む。入口は塞がれ、松明も角灯もなく、暗闇の中を歩く。ところどころに光る苔やキノコがあり、ぼんやりと道を照らしている。「くそったれ」「ああ、神よ……」 出口を求め、風の吹いてくる方へ向かったデリックとヴァシリーだが、力鬼士は次々湧いて来て、次第次第に追い詰められる。光る苔やキノコも次第に増える。「な、仲間の方とかは」「いない。俺は単独行動だ」「兵士たちは」「あんたを見捨てた」「ひどい!」ヴァシリーは歯ぎしりした。

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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#2

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」#2

【前回】 「力鬼士の棲む洞窟に財宝があるって、噂を聞いて。昨日黙って出ていったんです」 デリックは首を傾げた。表情と沈黙に促され、少女、ソフィアは続けた。 「うちは貧乏です。母は二年前の疫病で死んで……父は仕立て職人なので、二人でなんとか食べてはいけます。けれど、きっと私の将来のことを考えて……」少女は顔を手で覆い、また泣き出した。デリックは彼女を宥めながら、店の奥へ連れて行く。女房が事情を察して店番を代わる。 ソフィアが落ち着くと、デリックは尋ねた。「その噂は、どこ

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『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」

『元傭兵デリックの冒険』より「力鬼士(リキシ)の洞窟」

「ファック野郎!」 スコップを振り下ろし、襲い来る力鬼士の指をぶった切る! 「ギァーーッ!」指は土に還る。力鬼士は後退し、チッチッと音を発した。仲間を喚んでいる! ボゴン! ボゴン! 床や壁から力鬼士が這い出す。囲まれた!「くそったれ……! まさか、実在するなんてな!」 デリックはスコップを振り回して威嚇し、事の発端を思い出す。 ◆ 「父を、助けて下さい!」デリックの店に飛び込んで来た少女は、小さな手で銀貨を差し出し、そう言った。「町の長老様や兵士さんにも頼んだんです

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