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Re: 【超短編小説】千手観音菩薩Fucksヶ丘
繰り返し見る夢。
「違う、そうじゃないの」
泣きながら言う女を俺はどうする事も出来ずにいる。
「何が違うんだ」
俺は手にした血塗れの釘バットを握り締める。
巻きつけたテーピングはボロボロになっていて、その釘バットの先端には衣類や皮膚、頭髪が掛かって風に揺れている。
「お前が泣いていたから俺がやったんだ、なのに」
女は地面に横たわる白い皮膚の巨大な男の手を取って泣いている。
俺は釘バット
Re: 【短編小説】NOスモーキング巌流島
前にいたところでゲボってなんて言ったっけ?パイパン?その前にいたところではナカダシだっけ?
とにかくおれは吐き散らかしていた。
何回か転生してようやく現代日本に戻ってきたものの全ての事柄に違和感があり、かつて自分がいた時代に戻るにはどうしたら良いのか考えていたが、船酔いで撒き餌をした後の頭では何も分からなかった。
おれが吐き散らかすのを見ていた船長と言うか船頭は、ボートを島に近づけると無言
Re: 【短編小説】WINS渋谷ルーザー拳
絶叫し続けて喉から血が出るかと思った。
「差せ!差せよ!」
おれの隣ではそのままだと叫ぶクソがいる。気狂いか?そんな逃げ馬ある訳がねぇだろ。夢見てんじゃねぇよ。
おれが買った5番は華麗に差し切った。
大きなため息ひとつ、興奮のあまり握りしめて皺くちゃになったカードを黄色い自販機に入れる。
不揃いな茶色い札をポケットに捻じ込み、返却された不要な投票券をゴミ箱に捨てた。
すでに馬の名前なん
Re: 【短編小説】バイクNO移植ガール電車亡き女想
「海を見たことがないの」
彼女は死にかけている。一度も海を見る事が無いまま。
その海が何を意味するかは知らない。
たぶん東京湾じゃないだろう。
それならおれも海を見たことが無いことになる。だからおれは考えるのをやめた。
考えるのをやめた時に何をするかと言えば、セックスか寝るかバイクに乗ることくらいだし、いまのおれにできるのはバイクにのる事だけだ。
その2ストロークのバイクはもうすでに4
Re: 【短編小説】斜陽アンダーPAR
「見ろよ、鬱くしい人々だ」
サルトヴィコが指し示す方角には、スーパーに陳列されたオレンジみたいにわざとらしい色をして夕陽が校舎を斜めに照らし出し、その校舎から黒い生徒たちの影が排出されてくるのが見えた。
「セックスの足りない奴から死んでいく」
または狂っていく、そこにたいした違いはないけれどな。
でもサルトヴィコにはどうする事もできなかった。
何故なら学校は時限式の檻だからだ。
あそこは
Re: 【短編小説】精神メタボリズム失敗シンドローム
「また終わったあとにすぐ煙草を吸う」
女が拗ねた声で言う。
おれはリット色のブランケットを女の顔まで被せてから、ぽんぽんと頭を撫でてベッドを降りた。
足元に寄ったメェールテが抗議の声をあげる。
「あぁ、ペドロナスがまだだったかな」
骨壷から小さなものを選んでつまみ、メェールテに与えるとカリカリと齧って、一度おれを見てすぐに眠ってしまった。
火のついた煙草を咥えたままバルコニーに出ると新
Re: 【短編小説】屋上パンダ
誰もいない薄暗い廊下を一番奥まで進んで階段をぜんぶ上がったところに保健室がある。
幾度か深呼吸をしてからもう一度保健室と書かれた札を見上げて確認した。
ここで間違いない。
……と思う。
いつだって不安だ。絶対なんて存在しない。もしかしたらこの白い鉄扉の向こうにはスマホカメラを構えた同級生たちがいて、笑いものにしようと待ち構えているかも知れない。
または何も無い部屋が広がっていて、あたか
Re: 【短編小説】飲酒スペースあります
『飲酒できます』
通りを歩いていると、珍しくそんな立て看板を出している飲食店があった。
条例を知らない新参者か、または条例が変わった事を俺が知らないのか。
とにかく近寄って見ると、そこには「飲酒スペースあります」と書いてあった。
店の看板は知らない屋号だったので、やはり新しくできた店なのだろう。
中を覗いてみると混み始めている様だった。
三角巾と前掛けをした店員と思しき男女が忙しそ
Re: 【短編小説】浅漬けサイコガン
「それだけは勘弁して」
そう懇願する女を蹴り飛ばした。派手に転げ回る女を尻目に椅子に腰掛ける。
「おい、いつまで痛いフリをしてるんだ」
女はゆっくりと起き上がり、泣きながら袖を捲った。
「そうだよ、それでいい」
俺は笑いながら煙草に火をつけた。紫白い煙が揺れる。煙が喉にささって咳き込んだ。
女はまだ諦めきれずに首を振る。
「いいからやれよ」
俺は足先で蹴り飛ばす。
女は涙を流した。
Re: 【短編小説】GrandMotherAuto
「これはどこに向かっているんだい」
おばあちゃんが不安そうな声で尋ねたが、俺は答えずにいた。
フロントガラスを雨粒が叩く。
ウインカーの硬い音が聞こえる。
横目で盗み見たおばあちゃん。うっすらと伸びたヒゲが腹立たしい。
「いつもの買い物に行く道と違うんじゃないかい」
「買い物になんて行かないだろ」
思わず答えてしまったが後の祭りだった。
「よかった、聞こえていたんだね」
「……あぁ、聞
Re: 【小説】ババアthe読経(no脳know)
「こちらになります」
スーツの男はおれを振り向きもせずに、ガスメーターに引っ掛けてあるキーボックスの中からディンプル式の鍵を取り出すとドアを開けた。
狭い玄関の右手にシューズラック、左手には洗濯物置き場がある。
短い廊下にはユニットバスとキッチンがあり、その奥には8畳ほどの部屋があった。
東に向いた窓には残置のカーテンが下がっている。
一人暮らしをするには十分な部屋だろう。
駅から徒