にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮った…

にじむラ

毎日必ず1000文字くらいの短編作品を書く男。 扉絵はAIが担当。ときどき自分で撮ったやつ。 金周りの悪さにPV屋から遠ざかり、最果タヒで詩を諦めた元詩人。

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    波打ち際ブンガク1年目が500円で読み放題! 360本くらいのオリジナル短編小説(1000字前後)がいっぱい。しかも読みきりばかり。 扉絵はAI出力!これはお得だ!

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【小説】さよなら、チャタロウ

 ブゥゥーーン、と鈍く低い音が鳴って、チャタロウは目を覚ました。  血の匂いとその温度がチャタロウの中で広がっていく。  その中でチャタロウは思い出していた。  チャタロウは世界の形を知らない。だからキリコの輪郭も曖昧なままだ。  チャタロウがキリコの為にできるのはキリコが飽きるまで一緒に生きる事とか、もしくは今すぐにキリコと別れて死ぬことくらいだ。……または殺すとか。その他の全てがエゴでしかない。全てがチャタロウの個人的なエゴだ。  チャタロウは笑った。  チャタロウは思

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【小説】さよなら、チャタロウ

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    弁当ゥハッ!!

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    今日から少し休みます!

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    Re: 【短編小説】ばいばい、キャラメル、BOX

     こんな事になるなら俺もキャラメルくらい食っておくべきだった。  そう思ったが既に手遅れだ。  俺たちはゆっくりと時空の狭間に飲み込まれていく。  あいつは最期の食事がキャラメルか。俺も煙草を吸っておくべきだった。  だが煙草を吸うたびに少し悲しそうな顔をして笑う妻の顔を思い出して涙が出た。 「愛してる──」 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 「そんな開け方しなくてもいいだろ」  サイコロ型のキャラメル箱をまるで破る様にして開けている相棒を咎めると、その相棒は照れくさそうに笑った。

    Re: 【短編小説】ばいばい、キャラメル、BOX

    Re: 【短編小説】天と点が憑なGirl深夜タクシー

     大粒の雨に打たれながタクシーにすべり込むと、運転手は静かにドアを閉めた。 「すみません、シート少し濡れてしまったかも知れません」  そう言いながらも、傘やジャケットからは水滴がポタポタと落ちていく。 「構いませんよ」  こんな日ですからね、と運転手は静かに答えた。柔らかく、だが太く厚みのある声だった。 「どちらまで行きますか?」 「えぇと、甲州街道から東八道路を抜けて三鷹までお願いします」  運転手は静かにタクシーを出しながら、ハザードを切ってメーターを回した。もしかした

    Re: 【短編小説】天と点が憑なGirl深夜タクシー

    Re: 【短編小説】ミライ労働MITAKA City

     目が痛い。  一日中モニターを眺めていた目が夕方になると悲鳴を上げ始める。俺の眼球が真っ赤なトマトの様に完熟していく。熱を持って腫れ始める。  目を閉じて眉間を摘む。すると破裂したトマトが瞼の皺から溢れては世界を右に傾けていく。  汚れた世界だ。洗った方がいい。  スギ花粉で真っ黄色になった湯船に取り外した目玉を入れてゆすぐ。ワイヤレス眼球に買い替えておいて良かったと思うが、ケチらないでヒートシンクも付けておくべきだったと後悔もしている。  やる後悔とやらない後悔、どっち

    Re: 【短編小説】ミライ労働MITAKA City

    Re: 【短編小説】VICのサンダル

     いま春が来て君は綺麗になり、いま冬が去り俺はひとつ歳を取った。  そして夏が居座り終わることのない死の季節に何かを言おうとして、開きかけた口が乾くから全てを諦めた。  俺は醜い。  だが君が綺麗になる間に俺は干支が一周するほど労働者をやった。その結果、サラリーマンがすっかり板についた。裏切られた青年の成れの果て。  だが存在の醜さと言うのは、そう言う概念的な話ばかりでは無い。脂肪だとか病だとか、生物的な話に偏りがちだ。  俺はそのように醜い。  醜い上にサラリーマンだ。

    Re: 【短編小説】VICのサンダル

    Re: 【短編小説】いかがでしたかGirls Don't Cry

     北の海に雨が降った。  南の島にも雨が降る。  当然、東の街にも西の街にも雨が降る。  だが雨は雨だ。別に何かを告げたり、分けたり線を引いたりしない。そんなものに意味を見出すのは、働いていない作家志望のボンクラくらいだろう。  おれは労働者なので、埃臭い雨を喫茶店で避ける権利がある。当たり前だ。そして無職のボンクラが雨に見出す意味を鼻で嗤う権利だってある。  隣の席では別れ話をしているカップルが向き合っていた。  暇か?学生か?おれはそいつらのダラシないセックスだとか食事

    Re: 【短編小説】いかがでしたかGirls Don't Cry

    Re: 【超短編小説】桜前線異常なし

     八月も半ばを迎える頃には陽が傾くのも早くなってきた。  おれは窓を開けて法螺貝を吹き鳴らしながら絶叫する。 「桜前線異常なし!」  指差し確認。 「右良し!左良し!右良し!」  声を出して存在確認!現在位置再確認!  服を着替えて出勤するおれの頭上を桜前線と言う名前の巨大な赤ん坊が這いずって行く。 「おはよう!」  巨大な赤ん坊のヨダレをしながら進む。赤ん坊は這う。それと同じ速度でおれ達は老いていく。  桜が南から散っていく。  おれ達は這う様にして冬に向かう。  冬はな

    Re: 【超短編小説】桜前線異常なし

    Re: 【短編小説】小鳥の首チェリー

     夏の雨が降っている。  しかしそれは秋を告げる雨ではなく、夏を諦めさせる雨だった。  バイクを停めた駐輪場に咲いている巨大な木は既に疲弊して葉を落とす素振りを見せていた。 「疲れたかい」  疲れたさ、だが休むことはまだ許されない。朝い眠りを繰り返すだけだ。 「お前は桜の樹なんだってな」  花がなけりゃ何の樹かも分からない。おれたちは目あきの癖に何も見ちゃいない。  ふと車輪の下を見ると、毛の生えた蟹の爪が落ちている。 「蟹?」  良くみると、それは千切れた小鳥の首だった。

    Re: 【短編小説】小鳥の首チェリー

    Re: 【短編小説】とても明るく暖かい夜のGSポリスメン不惑

     パイセンはPEACEをふかしながら言った。 「単車に乗ってりゃ色々あるさ」  でもアンタの言う色々ってのは、精々が立ちゴケしてブレーキレバーを折るとかその程度だろ?  適当に愛想をコいて帰宅をキめ込む。  じゃあなパイセン。過去の栄光なら勘弁。アンタが載った雑誌の事は知らないから。いまでもその切り抜きは取ってあんのかい?  まぁなんでもいいや。  人生は過去しか見えないのに進むから、それを後ろ歩きに例える話を聞いた事がある。  車やバイクもすこし似てる。  サイドミラーを

    Re: 【短編小説】とても明るく暖かい夜のGSポリスメン不惑

    Re: 【超短編小説】厭な桜

     いまや広い展望デッキの照明は落とされ、僅かな星灯りだけが頼りだった。  漆黒と言うにはあまりも奥が深く、虚無と言うにはあまりにも巨大な闇に数え切れない程の星が輝いている。  この船はどこを目指して飛んでいるのか、それすらも忘れてしまった。恐らく地球にだっておれたちを覚えている人間なんていないだろう。  広いデッキの中央で、ニッポンから持ち込んだ桜の木が散り始めていた。  少なくともこの船は春と言うことになる。  春?  そいつは冬が終わってヨロコビに満ち溢れる予定の季節だ

    Re: 【超短編小説】厭な桜

    Re: 【短編小説】心理的瑕疵メモリー

     太陽と言う死の怪物は、暑さと言う長い尻尾を引きずったまま地球の裏側に隠れてしまった。その怪物は自身の尻尾を追うようて、また地球の裏側から顔を出す。  その間に降るわずかな夕方では街の体温が下がらず、むしろ湿度と不愉快指数を上げていくだけでどうしようもない。  雨上がりの晴れ渡った空とは対照的に、灰色の不愉快さがすっかり沈着してしまった埃っぽい街の路地を何度か往復しながら、ようやく覚悟を決めてドアを押した。   「いらっしゃいませ」  店員の愛想良い声と同時に、店内からは過

    Re: 【短編小説】心理的瑕疵メモリー