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#彼女

片翼の天使と片足の僕と 《詩》

片翼の天使と片足の僕と 《詩》

「片翼の天使と片足の僕と」

片翼の天使が眠っている

ベッドに眠る彼女には
沢山の管が繋ぎ込まれている

窓の外には風は無い

人の形をした化け物達が沢山居て

僕等を狙っている

僕はバス停の側に咲いていた

小さな花を摘んで持って来た

ガラスの瓶に其れを飾る

ごめんね 
高価な花束は買えないんだ

海で拾った綺麗な貝殻と
山で見つけた水晶の欠片

片足しかない僕だけど

誰かさんの様には

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白い月の光 《詩》

白い月の光 《詩》

「白い月の光」

夜明け前の白い月に 

僕達ふたりの

それぞれが抱える
事柄の差異が映し出される

その白い月は夜空の端っこで

暗示的な光を微かに放つ

僕は迷いの中で朝を迎える

其れは圧倒的な混乱とは違う 

確信のある答えが
欲しかっただけなんだ

彼女は時計を見つめている

その針は宿命的な時を示す

僕は彼女の背中をそっと
指先で撫で

君は静かにうなずいた

所有し所有される事の

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黄色い月 《詩》

黄色い月 《詩》

「黄色い月」

春が終わりに近づいた夜 

空気は漠然とした湿り気を帯び

薄靄に包まれた
黄色い月がふたりを見ていた

僕の隣りで不規則に美しく揺れる
君のスカートの裾 

僕は自分を失ってしまうほど

激しく君を求めていた

はぐらかす様に微笑む君の唇に

静かに指先で触れた

少しの間の沈黙 

其れは彼女の同意を意味している

全てが再び現実の位相に服すまで

彼女の長い睫毛が

僕の心の

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頭上の星 《詩》

頭上の星 《詩》

「頭上の星」

僕は何処まで行っても僕であり

彼は彼であり

彼女は彼女であり続ける

陰が陰であり 

陽は陽であり続ける様に

川は理由も無くただ流れている

動かない水が流れを持つ時  

始めて生きている意味を知る

想像力の範囲を超えた物語は

いとも簡単に圧殺され

暗闇の中で彼が僕に話しかける

戦場で眠る 
兵士の頭上にも星は輝くと

僕が僕で
あり続ける事に気が付いた時

彼も

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不実な雨と小さな同意 《詩》

不実な雨と小さな同意 《詩》

「不実な雨と小さな同意」

低く暗い雲が

空を覆い垂れ込めていた

憂鬱そうに傘をさして歩く人

彼女は僕の唇に人差し指を置いて
全てを閉じ込めた 

不実な恋人がそうする様に

彼女は静かに目を閉じて…

そう言った

僕は小さな声でうなずいた

空っぽの空間に

何かが
流れ込んで来るのを感じていた

些細な現実と不必要な寄り道と

その遠く先に見える降り出した雨

いくら探しても
見つから

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真白に輝く黒き羽根 《詩》

真白に輝く黒き羽根 《詩》

「真白に輝く黒き羽根」

僕は彼女の小さな唇の動きを
見逃さなかった

ほんの少し口元が動いた

気のせいじゃ無い

君は夢の中で眠り続けている

悪い夢を忘れる事が出来ないまま

白く鋭利な刃の様な三日月

霞んで消えそうな星屑

闇に包まれた漆黒の夜

時は巡り時間は流れる

今は静かに太陽が燃える時を待つ

やがて生まれた
朝が眩しい陽の光を連れ

君を照らす

黒き羽根は光を帯び真白に輝く

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葡萄酒の上に浮かんだ月 《詩》

葡萄酒の上に浮かんだ月 《詩》

「葡萄酒の上に浮かんだ月」

秘密に縛られた心

その箱の蓋を開ける事は

貴方自身を物語の一部に取り入れて

ある意味での犠牲者にしてしまい

共有していかなくてはならない

そう 俯いて囁いた

深い沈黙が意味を帯び

彼女の語り始めた言葉を
注意深く拾い集めた

限定された空間の空にしか無い
観覧車が廻る 

ゆっくりと静かに

僕は彼女と共に其れに乗っていた

大きな運命の輪に結びつけられ

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AC COBRA 《詩》

AC COBRA 《詩》

「AC COBRA」

チーズと生ハム 
ガーリックトースト

ちぎって浮かべたクリームスープ

土曜日の太陽が平らな庭を作り出す

煌めいた銀色のボディー 
AC COBRA

爆音の中 
タイヤが擦れて立ち込める匂い

キスをするには最高の午後

澄み切った空に彼女の柔らかな声

花は夜に咲くらしい

キスはおあずけ やるせない仕草

空を剥がして月を浮かべ 
小さな星を散りばめる

静かに無

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未成熟な夜 《詩》

未成熟な夜 《詩》

「未成熟な夜」

未成熟な夜 

風に運ばれた枯葉

新しいルールの
新しいゲームは既に始まっていた

僕はそれを 
ただぼんやりと眺めていた

街には混線したラジオの音が流れ

僕は自分宛てに書いた
昔の手紙を破り捨てた

もう全ては終わっていて

何ひとつ
終わって無い事を知っていた

聞きたくなかった言葉

それを先に口にしたのは
彼女の方だった

口紅 《詩》

口紅 《詩》

「口紅」

君が僕を求めたから 

僕は此処にいる

僕が君を求めたから

君は此処にいる

彼女の髪に触れていた

彼女は半分吸った煙草を
僕に手渡した

フィルターに付いた口紅を
愛おしく眺めて 

僕は煙草を口にした

午後の強い日差しが包み込む 

違う場所でしか叶わない夢を持つ
ふたりを同化していく様に見えた

夏も終わりに近づいていた

九月の風 《詩》

九月の風 《詩》

「九月の風」

時の彼方から吹き込む九月の風

混じり合った何種類ものピース

そんな物でこのパズルは出来ている

繋がる事の無い断片と断片で
違和感を生み出す

別に私に名前が無くたって
誰も困らないわ

そう言って彼女は笑った

その時の笑顔と声が
今でも僕の中に眠ってる

入り口があれば出口もあるよ 
安心しなよ

僕は最後にそう付け加えた

九月の風はもう此処には居なかった

ノルウェイの森 《詩》

ノルウェイの森 《詩》

「ノルウェイの森」

静かな森を歩いてる
君とふたりで

君が僕の傍に居た事は
決して忘れない

風の歌を聞いたノルウェイの森

愛してあげるって君が言ったから

表参道ですれ違った女
昨夜の長電話

そんな事より僕は
スパゲティを茹でる事に夢中だった

ビートルズは聞かない

違う色をした欠落た花を探した

不完全なものを愛してる

生の中には必ず死が潜んでる

3つ並んだ小さな瓶に
飾る花を探

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アカウント 《詩》

アカウント 《詩》

「アカウント」

左肩に小さな花の刺青
細い足首 長い黒髪 

彼女は美しかった

瞬きする間に恋に落ちた

僕は彼女の方言が好きだった

時々真似してみせた
それ 違うよって彼女は笑った

忘れて無いよ 好きだった

彼女は美しかった 
彼女は優しかった

彼女は消えて行った
何も言わずに

一度も逢えないまま
彼女のアカウントは消えた

ただのSNSで知り合っただけの女
ただそれだけ 

彼女

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明日の夢 《詩》

明日の夢 《詩》

「明日の夢」

花屋の彼女
降って来た言葉を紙に書いた

それを月明かりの下
ふたりで読んだ

昨日の夢は 花束を持った少年

今日の夢は 
ティンカーベルの彫刻が施されたドア

明日の夢は

僕は君の夢の話を聞くのが 
とても好きで
優しい時間は流れた

彼女に残る微かな花の香りと
声に包まれて

静かに星が瞬いた

Photo : Free Pic