ゴリュウジ

詩・小説・散文。読んだ人の心がちょっぴり愉快になるような、風通しのよい作品を創作してい…

ゴリュウジ

詩・小説・散文。読んだ人の心がちょっぴり愉快になるような、風通しのよい作品を創作していきます。

記事一覧

音楽1 listude『HOUSE』

listude。奈良の四条大路にある音工房。 ここで開催されるライブに足を運ぶと、いつも音の銀河を旅しているような夢見心地になる。 今夜の演目はHOUSE。 阿部海太郎さんと…

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本屋1 とほん(奈良)

旅先の奈良で とほん を訪ねた 金魚の町 奈良県は郡山にある本屋さんだ 近頃は かつてのように頻繁に本屋には行かないようにしていた 理由は明白で 欲しい本が次から…

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奈良1

2024年7月に今年3度目の奈良を訪れると 明らかに外国人旅行客が増えていた オーバーツーリズムでパンク寸前の京都のお裾分けだろうか? 神社仏閣も カフェも ラーメン屋…

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みんな

コンビニ前の喫煙所でタバコを吸っている旅行者がいた 灰皿の横にはブロックで作った小さな座椅子 こじんまりと収まりがよく 彼は上機嫌に煙を吹かしている わたしの視線に…

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【詩】働く3

彼は人がいい 色んな人の気持ちを汲み 愛想よくふるまう 月に一回の入院 しばしばの診察 暴飲暴食の輪から抜け出せずにいる 体を壊してまで 人に好かれる必要なんてない …

3

【詩】速度

ワールドツアー中のバンドのボーカルがこんなことを言っていた  飛行機で移動するというのは実はとても不自然なことだと思う  体は海を渡って運ばれる  でも大切ななに…

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【詩】働く2

去り際になって はじめて知ることがある もっとこうしておけばよかった 別れるたびに 小さく後悔する その反発で少しだけ前を向く 後ろ向きだから 前を向けることもある …

2

【詩】夜1

曇天の夜 川面 白々と きらめき流れる 月無く 星絶えて はじめて見える光もある

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【詩】みどり

一面のシロツメクサ 白と緑 輝いて 風吹き あつかぜいたる 夏が来る

ゴリュウジ
11日前
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【詩】みどり2

公園の木々が風と囁きかわしている さわさわ さわさわ ざわざわ  ざわざわ 葉擦れの音が激しくなっていく 嵐の前触れ 帆を張るように 枝がしなり 鳴る

ゴリュウジ
11日前
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【詩】鉄塔

鉄塔を見上げていた 空を区切るように 電線が走る ある映画の話 中国の最奥の地に住む少女は飛行機を見たことがなかった 飛行機なるものの話を聞いた少女は訊ねる 空にレ…

ゴリュウジ
12日前
2

【詩】会話3 神保町のカフェ

老齢の男性と妙齢のご婦人が 向かい合ってスツールに腰かけている 男性の声は レトロなカセットテープのようで (テープが伸びたように間延びしている) ぼくは ぼくは と…

ゴリュウジ
12日前
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【詩】劣等感

百九十センチある後輩と並んで歩く 足も長い 風のように先を行く 必死になって追いかけているうちに じぶんが縮んでいくような錯覚に陥る するり と それまで舞台袖に隠…

ゴリュウジ
2週間前
2

【詩】言葉のかけちがい

この世界には声が溢れている 話したい 喋りたい 伝えたい いつだって 言いたいが聞きたいを追い越していく 言葉のかけちがいなんて言うけれど そもそも言葉は噛み合わない…

ゴリュウジ
2週間前
4

【詩】白緑―びゃくろく―

六月の晴天 公園の木々が 風にそよいでいる さわさわ  さわさわ ひそやかな声 陽のきらめき 白緑に 耳を澄ます

ゴリュウジ
2週間前
2

【詩】人生の答え合わせ

いつのころからか 人生の答え合わせをするようになった 振り返ると 頼んでもいないのに 背中に たくさんの過去が振り積もっている まるで殻を背負ったかたつむりのようだ …

ゴリュウジ
2週間前
2
音楽1 listude『HOUSE』

音楽1 listude『HOUSE』

listude。奈良の四条大路にある音工房。
ここで開催されるライブに足を運ぶと、いつも音の銀河を旅しているような夢見心地になる。

今夜の演目はHOUSE。
阿部海太郎さんと武田カオリさんが十余年の時をかけて紡いだ、ある架空の女性のポートレート。武田さんの心に光を点すような歌と朗読が、残されたモノたちに宿った記憶の欠片をきらめかせる。

前半はピアノと弦楽四重奏が奏でる密やかな調べ。
悲壮、哀惜

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本屋1 とほん(奈良)

本屋1 とほん(奈良)

旅先の奈良で とほん を訪ねた
金魚の町 奈良県は郡山にある本屋さんだ

近頃は かつてのように頻繁に本屋には行かないようにしていた
理由は明白で 欲しい本が次から次に目に入ってくるからだ
旅先は 特に購買意欲が増す
離れた土地であればあるほど 一期一会の出会いに思えてきて この本もあの本も と手に取ってしまう

家には積読の塔がすでに何本も聳えている
このうえさらに塔を増やしてどうしようというの

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奈良1

奈良1

2024年7月に今年3度目の奈良を訪れると 明らかに外国人旅行客が増えていた
オーバーツーリズムでパンク寸前の京都のお裾分けだろうか?
神社仏閣も カフェも ラーメン屋も ホテルも 大浴場も
飛び交う言葉の意味がわからない

こちとら湿気むしむしの北陸育ち
根っからの小心者で内弁慶だ
関西弁でもビクッとしてしまうのに
知らない言葉は心臓に悪い
ふらりふらり と歩くうちに表通りから外れていた

てく

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みんな

みんな

コンビニ前の喫煙所でタバコを吸っている旅行者がいた
灰皿の横にはブロックで作った小さな座椅子
こじんまりと収まりがよく
彼は上機嫌に煙を吹かしている
わたしの視線に気づくと
彼はくいっと眉を上げてみせた

街は無数のルールで溢れている
不法侵入禁止
ここは禁煙です
規則を守りましょう
みんが気持ちよく過ごすために

みんなとは誰のことだろう?
そこにわたしは含まれているのだろうか?
あの旅行者は?

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【詩】働く3

【詩】働く3

彼は人がいい
色んな人の気持ちを汲み
愛想よくふるまう

月に一回の入院
しばしばの診察
暴飲暴食の輪から抜け出せずにいる

体を壊してまで
人に好かれる必要なんてない

どうせ太るなら
くまのプーさんを目指せばいい
高い木に登ったはいいが
降りられずに困っている友人の危機に
平然と
その友人のお弁当を食べてしまえるのん気さ

気配りはほどほどに
じぶんへのいたわりを忘れずにね

【詩】速度

【詩】速度

ワールドツアー中のバンドのボーカルがこんなことを言っていた

 飛行機で移動するというのは実はとても不自然なことだと思う
 体は海を渡って運ばれる
 でも大切ななにかがこぼれ落ちてしまっているような気がする
 速すぎる速度は体に悪い

そうか
時差ボケはなにかがこぼれ落ちてしまった体が上げている悲鳴だったのか

わたしには歩く速度がちょうどいい
自転車でも怖い
車は暴力的で
新幹線は走るたび世界を

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【詩】働く2

【詩】働く2

去り際になって
はじめて知ることがある

もっとこうしておけばよかった
別れるたびに
小さく後悔する

その反発で少しだけ前を向く
後ろ向きだから
前を向けることもある

なかなか
人生は捨てたもんじゃない

【詩】夜1

【詩】夜1

曇天の夜
川面
白々と
きらめき流れる

月無く
星絶えて
はじめて見える光もある

【詩】みどり

【詩】みどり

一面のシロツメクサ
白と緑
輝いて
風吹き
あつかぜいたる

夏が来る

【詩】みどり2

【詩】みどり2

公園の木々が風と囁きかわしている

さわさわ
さわさわ
ざわざわ
 ざわざわ

葉擦れの音が激しくなっていく
嵐の前触れ
帆を張るように
枝がしなり
鳴る

【詩】鉄塔

【詩】鉄塔

鉄塔を見上げていた
空を区切るように
電線が走る

ある映画の話
中国の最奥の地に住む少女は飛行機を見たことがなかった
飛行機なるものの話を聞いた少女は訊ねる
空にレールが敷かれているの?
都会から来た人たちはそんな少女を笑った

航空力学
わたしたちは飛行機が空を飛ぶものだと知っている
……つもりになっている
本当は空にはレールが敷かれているのかもしれない
人間だけが知らない見えないレールがあっ

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【詩】会話3 神保町のカフェ

【詩】会話3 神保町のカフェ

老齢の男性と妙齢のご婦人が
向かい合ってスツールに腰かけている

男性の声は
レトロなカセットテープのようで
(テープが伸びたように間延びしている)
ぼくは
ぼくは
と語る声は
滔々と淀みない

話はアメリカの大統領選挙に及んでいた
候補者Aはここがだめで
候補者Bはここがだめで
批評の川は流れ続け
わずかな岸辺を見つけては
ご婦人が感嘆符を口にする

話がこの街の選挙に及んだとき
はじめて男性が

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【詩】劣等感

【詩】劣等感

百九十センチある後輩と並んで歩く
足も長い
風のように先を行く
必死になって追いかけているうちに
じぶんが縮んでいくような錯覚に陥る

するり と
それまで舞台袖に隠れていた劣等感が姿を現す
ほらほら
見て見て
チビが通るよ と
外へ向いていたわたしの視線を
内へと引っ張る

その呪力
全人類の負の引力を集めたら
地球がぺしゃんこになってしまうかもしれない

比べるにはものさしがいる
計る
量る

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【詩】言葉のかけちがい

【詩】言葉のかけちがい

この世界には声が溢れている
話したい
喋りたい
伝えたい
いつだって
言いたいが聞きたいを追い越していく

言葉のかけちがいなんて言うけれど
そもそも言葉は噛み合わないものだ
わたしの見ている世界が
きみの見ている世界と違うように

ボタンのかけちがいなら
最初からやり直せばいい
ボタンには合う穴が用意されている

言葉のかけちがいにやり直しはきかない
やり直そうとすればするほど
穴は深く大きくな

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【詩】白緑―びゃくろく―

【詩】白緑―びゃくろく―

六月の晴天
公園の木々が
風にそよいでいる

さわさわ
 さわさわ

ひそやかな声
陽のきらめき
白緑に
耳を澄ます

【詩】人生の答え合わせ

【詩】人生の答え合わせ

いつのころからか
人生の答え合わせをするようになった

振り返ると
頼んでもいないのに
背中に
たくさんの過去が振り積もっている
まるで殻を背負ったかたつむりのようだ

もっと大きく
もっと頑丈に
そう願うほど
のろのろ
とろとろ
歩みは遅くなるいっぽうだ

重い
放りだしてしまいたい
でも
塩をまかれるのが怖い
溶けて消えるのは嫌だ

逃げ出したいくせに
重たい殻を脱ぎ捨てられずにいる

もうと

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