ゴリュウジ

詩・小説・散文。読んだ人の心がちょっぴり愉快になるような、風通しのよい作品を創作してい…

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詩・小説・散文。読んだ人の心がちょっぴり愉快になるような、風通しのよい作品を創作していきます。

最近の記事

【詩】会話3 神保町のカフェ

老齢の男性と妙齢のご婦人が 向かい合ってスツールに腰かけている 男性の声は レトロなカセットテープのようで (テープが伸びたように間延びしている) ぼくは ぼくは と語る声は 滔々と淀みない 話はアメリカの大統領選挙に及んでいた 候補者Aはここがだめで 候補者Bはここがだめで 批評の川は流れ続け わずかな岸辺を見つけては ご婦人が感嘆符を口にする 話がこの街の選挙に及んだとき はじめて男性が訊ねた いつが開票日だった? 男性はじぶんが住んでいるこの街の選挙には興味がな

    • 【詩】劣等感

      百九十センチある後輩と並んで歩く 足も長い 風のように先を行く 必死になって追いかけているうちに じぶんが縮んでいくような錯覚に陥る するり と それまで舞台袖に隠れていた劣等感が姿を現す ほらほら 見て見て チビが通るよ と 外へ向いていたわたしの視線を 内へと引っ張る その呪力 全人類の負の引力を集めたら 地球がぺしゃんこになってしまうかもしれない 比べるにはものさしがいる 計る 量る 測る 道具が増えるほどに わたしを苦しめる手管も増えていく 道具を手放せ 劣等

      • 【詩】言葉のかけちがい

        この世界には声が溢れている 話したい 喋りたい 伝えたい いつだって 言いたいが聞きたいを追い越していく 言葉のかけちがいなんて言うけれど そもそも言葉は噛み合わないものだ わたしの見ている世界が きみの見ている世界と違うように ボタンのかけちがいなら 最初からやり直せばいい ボタンには合う穴が用意されている 言葉のかけちがいにやり直しはきかない やり直そうとすればするほど 穴は深く大きくなっていく それでも 人は声を発せずにはいられない 誤解されても 嫌われても 否

        • 【詩】白緑―びゃくろく―

          六月の晴天 公園の木々が 風にそよいでいる さわさわ  さわさわ ひそやかな声 陽のきらめき 白緑に 耳を澄ます

        【詩】会話3 神保町のカフェ

          【詩】人生の答え合わせ

          いつのころからか 人生の答え合わせをするようになった 振り返ると 頼んでもいないのに 背中に たくさんの過去が振り積もっている まるで殻を背負ったかたつむりのようだ もっと大きく もっと頑丈に そう願うほど のろのろ とろとろ 歩みは遅くなるいっぽうだ 重い 放りだしてしまいたい でも 塩をまかれるのが怖い 溶けて消えるのは嫌だ 逃げ出したいくせに 重たい殻を脱ぎ捨てられずにいる もうとっくに未来は見通せなくなってしまった 近ごろでは 現在も見失っている それでも

          【詩】人生の答え合わせ

          【詩】会話1 松本のカフェ

          今日は山に登るつもりが 寝過ごしてしまったんだ 不思議に思って窓を開けると 外は雨だった  右脳のお告げかもしれないですよ そうかもしれない 強い雨だったから 普段はつい左脳でものを考えてしまう 論語と算盤は大事だよ でも寄り道がないと生きているのはつまらない  道草  いいですよね 俺が若い頃 と言っても もう二十年も前の話だけれど 日の出町がホームだった いい店がたくさんあったよ でもいい店はつぶれるんだ  ビジネスでやっていませんからね  今だと  ハイエナみ

          【詩】会話1 松本のカフェ

          【詩】時間と距離(映画『再会長江』を劇場で観て)

          10年前の心残り 中国の大河長江 その最初の一滴へと遡る旅路 峡谷 高原 少数民族 変わりゆく人々の暮らし 映画のなかで 繰り返し語られる 10年という歳月 全長6300キロ 悠遠なる旅路 けれど 10年という歳月は なお深い 距離は挑むもの 前進する 時間は振り返るもの 後退する 辿り着いたまだ見ぬ景色は 新鮮で 心を潤す 思い返す記憶は 色褪せ 心は涙する それでも 輝いていることに変わりはない いつか どこかで 距離と時間は交差する ひととき 心は満ちるだ

          【詩】時間と距離(映画『再会長江』を劇場で観て)

          【詩】タグ(会社を辞める後輩を見送った夜に)

          今日で会社を辞める後輩 夢に向かうため ホームで 線路を乗り換える 去っていく彼の背中を見送っていたとき 背広から「現在」のタグがなくなっていることに気づいた 付き合いのある人たちには「現在」のタグがついている 付き合いがなくなると ハサミが現れて パチン タグが切れる 背広は会社員という記号だ もう袖を通すことがなくなってしまった後輩の背広を 記憶のタンスにしまいこむ ときどき ふと思いついて 引き出しを開ける日もあるかもしれない なつかしむけれど 取り出して眺めるこ

          【詩】タグ(会社を辞める後輩を見送った夜に)

          【詩】阿吽の狛犬

          通勤途中にある神社で 毎朝一礼する 願掛けはしない 前の職場で 朝一緒になる先輩がいた 神社の前を通ると 必ず足を止め きりり 姿勢よく一礼していた ラジオから こんな話も流れてきた コロナ禍に 毎朝神社へ通うようになった 足を運ぶたびに 願いは消えていき 一礼の所作だけが残った 粋である マネすべし 春夏秋冬ひとめぐり はじめてから 二回目の春を迎えた はじめたころに 何を願っていたのか もうとっくに忘れ 近頃では 狛犬と 挨拶を交わすようになった 阿吽の狛犬

          【詩】阿吽の狛犬

          【4コマ漫画】『地球は青かったんだぞ』

          ロー、あるいはロッくんと呼ばれている男の子のお人形のお話です。

          【4コマ漫画】『地球は青かったんだぞ』

          【4コマ漫画】ローは、ロッくん

          周りからロー、あるいはロッくんと呼ばれている男の子のお人形さんのお話です。

          【4コマ漫画】ローは、ロッくん

          【旅行】『緑の魔法』(奈良県吉野)

          夏を先取りしたような五月晴れの週末、奈良の吉野まで小旅行をしてきた。 近鉄奈良駅から小豆色の車両に乗車してみると、急行の車両は思いのほか揺れて、ちょっとした船酔いのようで慌ててしまった。 久しく電車に乗っていないと、こんな些細なことも発見になるものだ。 吉野を訪れるのは、実に20年ぶりである。 関西のとある大学の学生であった頃、ふらりと思いついて訪ねたことが1度だけあった。四半世紀近く前のことであるから、ほぼ記憶はないのだか、唯一トイレを借りたことだけは覚えている。 吉野に

          【旅行】『緑の魔法』(奈良県吉野)

          【詩】『5月の公園』

          青々とした木々が さわさわ 風と遊んでいる 枝葉のカーテンの奥からは カッコウが  カッコー   カッコー 本番前の練習をしている さわさわ 風が吹き 緑の芝生の上では 小さなシロツメクサたちが のっぽのたんぽぽとダンスしている そこにやってきた 虫取り網をかついだ少年が 声を弾ませ チョウチョさんだ 二人もいる と駆け出していく ひらりひらり 風の手に守られるように チョチョは 宙を舞う 休日モードの父親が あせるなよ と笑顔で声援を送る 仰げば やさしく陽光を

          【詩】『5月の公園』

          【詩】『さんさん』

          皐月晴れ 緑あふれて 花 光まとい 色さんさん

          【詩】『さんさん』

          おかえりジャンプ!!

          おかえりジャンプ!!

          【詩】『珈琲風雅』

          奈良駅の西 京都と橿原を南北に結ぶ国道24号バイパス 柏木町北の十字路を 西へ折れた先 そこに ぷろばんすはある 誰が呼んだか珈琲風雅 春夏秋冬 日本庭園 めぐる季節の借景あり 店の奥には電話室 昭和レトロか 大正モダン ジャズの調べが 優雅に給仕 エプロン姿のマスターは 巨匠の風格備えつつ 気配り目配りお手のもの 店のウェイターウェイトレス 適材適所に配役し 準備万端 いざ開幕さあさあ主役のお出ましだ 現れたるは 電気式サイフォンコーヒー 彼こそは 文明開化の申し

          【詩】『珈琲風雅』