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【詩】阿吽の狛犬

通勤途中にある神社で
毎朝一礼する
願掛けはしない

前の職場で
朝一緒になる先輩がいた
神社の前を通ると
必ず足を止め
きりり
姿勢よく一礼していた

ラジオから
こんな話も流れてきた
コロナ禍に
毎朝神社へ通うようになった
足を運ぶたびに
願いは消えていき
一礼の所作だけが残った

 粋である
マネすべし

春夏秋冬ひとめぐり
はじめてから
二回目の春を迎えた

はじめたころに
何を願っていたのか
もうとっくに忘れ
近頃では
狛犬と
挨拶を交わすようになった

阿吽の狛犬
向かって右がアと口を開け
左がウンと口を閉じる

ああと嘆き
うんとうなずく
そんな日もあれば 

うんと納得したつもりが
ああと落胆する
そんな日もある

どんな日でも
一日は一日
ああとうんの繰り返し

今日も行く人見送って
受け止め
励ます
阿吽の狛犬

一礼
きりり
空っぽの頭で
身を新調する

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