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【詩】会話3 神保町のカフェ
老齢の男性と妙齢のご婦人が
向かい合ってスツールに腰かけている
男性の声は
レトロなカセットテープのようで
(テープが伸びたように間延びしている)
ぼくは
ぼくは
と語る声は
滔々と淀みない
話はアメリカの大統領選挙に及んでいた
候補者Aはここがだめで
候補者Bはここがだめで
批評の川は流れ続け
わずかな岸辺を見つけては
ご婦人が感嘆符を口にする
話がこの街の選挙に及んだとき
はじめて男性が訊ねた
いつが開票日だった?
男性はじぶんが住んでいるこの街の選挙には興味がないようだった
やがて二人は店を後にした
去り際
男性に顔を向けるまでのわずかの間に
ご婦人が笑みを作るのが見えた
さながら仮面
その表面に描かれた笑みは
非の打ち所がない
聞き上手の一級品だった
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