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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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#ポエム

【詩】CROW

【詩】CROW

深淵はもう飽きました
表層に憧れてます
うらぶれた地質学に小さな納屋を建て
夕陽のことを考えて、戒名と共に暮らす
昨日の事を今日のように話す家畜と
生活の匂いのしない長さと
大小の容れ物に仕舞われた作物と
舌先(のようなもの)と

戻った時にはひとりだった
今度は耐えられるだろう
レンズの裏側に捕らえられた展望のうち
一体どれだけのものを私は相続出来るだろう?
どれだけの足が私の後を追うだろう?

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【詩】凱旋門

【詩】凱旋門

もう忘れたかな?
駅までの道が暗くて少し怖かったこと
もう忘れたかな?
ルーズリーフの穴の数が微妙に合わなかったこと
あの角のタコスサンドは閉店間際は大盛りで
もう忘れたかな?
君は大勝利を手にあの門を潜る
堂々と胸を張って
胸を張って

もう忘れたかな?
「ありがとう」と「ごめんね」を毎日繰り返して
もう忘れたかな?
いつまでも好きなままじゃいけないって気付いて
ハイドパークの白鳥に指を噛まれて

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2020/09/08【立ち喰い蕎麦】

2020/09/08【立ち喰い蕎麦】

物語の主人公になれる人ってだいたいさ、昔ながらのナポリタンとか、駅前の安い立ち喰いそばが好きだよね。社会人何年目になっても、東京には染まらず、高級なお店には背伸びしていくよね。

いつまで経ってもそういった安い立ち喰いそばが好きなことが、青春を忘れないための布石になっていて、いつまでも舌が肥えていないことが、あえて、優位になる世界な気がする。
私がそういった物差しでしか物事を図れないのかもしれない

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タバコの人

背中まるめ 隠れるように

タバコを吸う 人がいる

手帳を 見つめ 真剣に

肺いっぱい 煙を吸う

なんの邪魔も 来ませんよ

あなただけの 箱ですよ

わたしは 窓を 曇らせる

人生という 小さな箱

1人のいのち 愛しくおもう

ズボンを 腰より 

上で履き

髪は 灰色 

肌は 焼け

たくさんの 皺がある

笑うと どんなお顔ですか

歩くと どんなふうですか

わたしの いのち

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ことば

ことば

わたしの こころ すくうため

わたしは ことば つむぎます

なんの やくにも たちゃしない

なんの こうして たっている

くうきが すんだ あさやけも

くうきが ねばる くらやみも

ことばは いつも まっている

ひろってくれよと まっている

わたしが ことば つまんだら

わたしの こころ おどりだす

そうこなくっちゃ あそびましょう

そうこなくっちゃ うたいましょう

おひさ

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カーテン

カーテン

ふと、雨が止んだ。
気が付いたらいつの間にか雨が止んでいた、というのとは違った。雨の終わりを告げるまさにその瞬間、いま、ここで止みました、という瞬間が私にははっきりとわかったのだ。
なんて不思議な感覚なんだ、私は興奮して、読んでいた文庫本を捲るページを止めた。クライマックスであと数ページという所だったが、何の迷いもなく本をぱたりと閉じ、スカートの裾についたビスケットのかすを払い落とすと、文庫本をさ

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向き合う。

向き合う。

例えば

君が僕に
背を向けたとしても

僕は君に
背を向けたりなんかしないよ

だって ほら

君が
振り向いた時に

向き合っていられる
僕でありたいから

君の言葉を
一つ残さず
聞いていたいから

だから
僕は

君より
先にも後にも

背を向けたりしないよ

【詩】STAY HOME

【詩】STAY HOME

飛行機雲が稜線に交わる
伝えたいもの手に入れたからSTAY HOME
まだ出て行かないよこの星から

目も眩む深い谷を渡る
木霊に何度も呼び掛けて確かめていたい私の本当の住所
それでも明日が来てしまうなんて考えたくなくて
動きたくないんだこの橋から

ペンと紙切れひっ掴んで駆け出した
芽生えた気持ち逃がすためのSTAY HOME
まだ出て行かないよ
燻ってる炎、消えるまで見届けたいから

指先に宿

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くじら

メランコリー(黒胆汁)はきっと

部屋に住み着き

お墨付きの鬱たちが

隅っこで塊になって

やがて

黒くて大きなくじらになる

自由になれるといいね

ロマンスの現実逃避24

ロマンスの現実逃避24

はじめて幸せが怖いとおもった

半月の夜

2人の間では満月のように
満ちていて
欠けたところは何もなかった

ううん
欠けていたり穴が開いていたり
不完全だったのかもしれないけど
見えなかっただけで
全部がおだやかな光で包まれていた

何を話していても
ことばを通り越して
心の奥の奥の奥に
溶けて溢れていった
それでも
決して過激ではなくて
音もなければにおいも
形さえもなくて
穏やかさだけが

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