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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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詩「ワンルーム•パパ」

先日あなたは
遠くに行きました
戻る気配はないようです

買ったことない
野菜の調理法
誤って
歯に挟まったり

そんな僕のような
あやまちを
母さんと出会う前
あなたもしたでしょ

"ひとり"と"ひとり"になれたから
話をしたい
「エヴァ、終わりましたね。」

やり切れない思いを
見せ合いながら 笑いながら

眉毛の太い
足の短い
僕によく似た男の子

書評 『三行で撃つ』

書評 『三行で撃つ』

 小説家志望ならば物の書き方の本を読んではいけない。大昔に読んだ本にあった言葉だけれど(しかし、それは物の書き方の本の一節だったから、自己矛盾を起こしていると思う)、私は物の書き方の本を結構読む。

 物を書くと一口に言っても、誰が、どういう媒体に書くのかによって、注意すべき点は少し異なるだろう。最初の数ページに「小説はぬるい」とあって、具合が悪くなったけれど、それでもこの本には得られるものがあっ

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2人の老人どちらに譲るか

2人の老人どちらに譲るか

電車に乗っていて、お婆さんが立っているのに気づいた。お婆さんは私の左斜め前にいる。私は席に座っていたので、ここはひとつ席を譲ろうかと思った。

私は席を譲るタイミングを見計らい、お婆さんの方へ視線をやった。視線をやってから席を譲るべきか迷った。改めて見ると、お婆さんはお婆さんじゃない気がしてきた。

少し若いのである。お婆さんだとしても、まだ成り立てだ。お婆さんとしての自覚が足りてないかもしれない

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始まりで終わる

始まりで終わる



朝夢から覚めた瞬間に
今までありありと体感してた夢の中が
一気に袋とじに圧縮されて
銀河のどっかに投げ捨てされる。

夢はいつも
夢を見つけた途端
闇の彼方へ回収される。

僕はそれは
君といる時間となんか似てるなと思ってる。

君をやっと感じると、
闇が彼方から僕を飲み込んで
僕の全感覚を回収しにくる。

夢との違いは、
闇に投げ捨てられるか
闇に投げ入れられるかの、
それくらい。

スキをしたくなるかも

スキをしたくなるかも

今、幸せですか

もしもし
少し隣に腰掛けて行きませんか
ぼくもそれを探して旅をしているので
ひと休みしているところなんだ

パラダイスってどんなところだろう
人は誰もが幸せになりたいと憧れている
なりたい、と思うということは
今、幸せではない、と思っているということだ

きみはいささか不満を感じているというわけだ

noteで何を書こう
書いても上手くかけないな、売れないな
疲れちゃうな
あの人

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海へとつづく国道で

海へとつづく国道で

遅くまで仕事をした日、わたしはときどき少し遠回りして国道を歩いた。

色とりどりの光を放つ大きなトラックや、風だけを残してあっという間に見えなくなるバイク。犬と一緒に夜の散歩をするご老人、ファーストフードから出てきて自転車にまたがる塾帰りの中学生。

まばらな街灯と星明かりの下で、みんな夜に半分姿を隠されている。誰かの気配を存分に感じるのに、誰も彼も干渉はしあわない。それぞれの人生が一瞬だけ交わる

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【詩】CROW

【詩】CROW

深淵はもう飽きました
表層に憧れてます
うらぶれた地質学に小さな納屋を建て
夕陽のことを考えて、戒名と共に暮らす
昨日の事を今日のように話す家畜と
生活の匂いのしない長さと
大小の容れ物に仕舞われた作物と
舌先(のようなもの)と

戻った時にはひとりだった
今度は耐えられるだろう
レンズの裏側に捕らえられた展望のうち
一体どれだけのものを私は相続出来るだろう?
どれだけの足が私の後を追うだろう?

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ころころ

マイナス6℃。
冷え込む白馬村の山小屋の窓から、僕はリフトが人を運んでいく様子を眺めていた。

窓の前を、波線を描くように小鳥が飛んでいた。

その鳥がリフトのすぐ手前で地面におりて、僕に何か訴えかけるようにピョンピョン飛んでいた。

スペースファンタジーのサンフェアリーを思わせる。
人懐こいやつだ。

鳥の鳴き声は「ピーピー」と表記されるけれど、それはたしかだろうか。

目の前の人懐こい、この鳥

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悲しい時
辛い時
苦しい時
マナティーに会いに行く

マナティーはこちらに
顔を見せてくれる
愛くるしい姿は
心の闇を吸い取ってくれる

彼女は夢の本編

夢の中のあの人はいつも怒っている。

それは私があの人の夢を見ることに負い目を感じているからなのか、あの人を好きでいることに罪悪感を抱いているからなのか、それとも本当に怒っているからなのか、よくわからないけれど、とにかく夢の中のあの人はいつも怒っていて、私は目が覚めるたびに誰もいないさびれた浜辺に打ち上げられたような気分になる。不思議な時空の空白に放り出される。

夢の中で私はあの人とゆるやかな長

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高架橋の向こうを目指して

高架橋の向こうを目指して

 高架橋のすぐ下の遊歩道を、わたしはずっと歩き続けている。
 橋桁と橋桁の間はコンクリートでふさがれ、反対側へ渡れないようになっていた。
 わたしは、どうにかして向こう側へ行きたかった。どんな町並みが広がっているのだろう。どういった人たちが暮らしているのだろう。その全てを知りたいと願った。

 高架橋に貼り付くようにして、赤い屋根の保育園が建っている。どうも見覚えがあると思ったら、子供の頃に通って

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仲間を探す

仲間を探す

 仲間が欲しくなったので問屋へ行ってみた。
 それは昭和の頃に作られた古い橋の下にひっそりと建っていた。レンガ造りの小さな建物で、ピザを焼く竈と言われても納得できそうだ。
 全体が蔦やなんかでめちゃくちゃに覆われ、近くには幅の広い川が流れている。流れも速い。ネットの情報によると、大河ドラマなんかでたまに使われるらしい。

 赤いドアは薄汚れている。誰もここを掃除しようだなんて思ったりしないのだ。ガ

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午後ティーを愛しているから。

午後ティーを愛しているから。

僕は午後の紅茶ミルクティー、通称『午後ティー』を愛飲している。
小学生の頃、たまたま母親が買ってきていたのを飲み、運命の出会いを果たした。
後に母親にその事を言ったのだが、そうだっけ、の一言で、どうでもいい出来事と化してしまった。
母親よ、息子の運命を忘れるでない。

30代になった今も、午後ティーへの愛を忘れず、もうそれしか飲まない、人から見れば罰ゲームなのか、と訝られる生活を送っている。
朝起

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透明なまま
電車に乗り込む
空いている車内なら
誰かにバレることなく
網棚に寝そべっていられる
長い長い
通勤だからそれがいい
そのうち
満員列車になって
人々の蒸気が立ち込める
もやもやが
透ける体と心を侵してくる
そろそろ降りて
色付き人間に戻らなくては
みなさん
おはようございます