シノハラケンタ

かいてあがいて穴埋めて

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かいてあがいて穴埋めて

最近の記事

10なし

福岡に引っ越した。 引っ越しは「いくじなシリーズ」とテーマ的に関連がないだろう。福岡に引っ越した、という書き出しはこの一連のエッセイの趣旨から逸れているように感じる。 いま僕は「趣旨」と書いた。そもそもこのエッセイに趣旨などという偉そうなものがあるのかしら。 −−− ある、ある。 2つある。 ①育児の記録を少しでも残して置けば後から見返すことができる、と思った。 ②このシリーズを書きはじめた当時書いていた小説のテーマの一つが育児だった。 いずれも動機として、と

    • 9なし

      生後8か月。ついにここまで来たか、、、隔世の感がある。隔世の感、という言葉を始めて使う、大げさすぎて厳密には正しくない用法である気がするけれど、使ってみる。 ずりはい、しまくる。動きまくる。話しかけるとこちらを向くし、笑う。 離乳食については、大人と同じものを薄味ですり潰してあれば食べてくれる。 一気に成長したなあ、と感じます。 来月は、ハイハイしているでしょう。 そして間もなく、「ママ・パパ」と話し出すでしょう。 それから、つかまり立ちし出すでしょう。 毎月ぐんぐんで

      • 8なし

        考えてみたら、生後0カ月を0なしとしてスタートしていれば、月齢とタイトルが一致する。まどろっこしさがなかったかも。 8なしとは月齢7か月目のことです。あとでこっそりと修正しておこうか。きっとそんなに多くの人に読まれていない。 身体が重たい日々である。この時期の子育ては、日に日に楽になっていくというわけではないのだ。 睡眠時間は確保できるようになったし、意思疎通もある程度できるようになてきたから、精神的なストレスは生後初期(寝返りする前まで?)よりも少ない。身体のだるさも

        • 7なし

          ハーフバースデーである。生後6カ月だ。 半年はあっという間に過ぎた。 一気に新生児感が抜けて赤ちゃん化してきた気がする。寝返りができるようになった。目を離した隙にもくるっと寝返りしてしまう。離乳食も始まった。リンゴやバナナや豆腐を磨り潰したものやおかゆ、パン粥を食べる。うんちもそれらの匂いになる。 声掛けをしてコミュニケーションが成立している気がする。寝返り、離乳食、コミュニケーション能力の発達、その3点が新生児感→赤ちゃん感へと僕が感じる要素なのかもしれない。 前回大

          6なし

          前回の日記からあまり大きく変化していないように思うなあ、というのが正直なところ。とはいいつつ、書いていけば成長点が続々と出てくるのは前回の日記で経験した。 ミルクの量は160ml、これはどうだろう、もっと多く200mlにしてもいいかもしれないけれど、でも160mlを飲み干すのは稀だからな。そのままの量でキープ中。 あ、そうだ、飲み終わった後にげっぷをさせていない!ずっと「げっぷマスト」だったのが、いまではほぼ「ノーげっぷ」。だいぶ楽になったものだね。ミルクを吐くことはたま

          5なし

          わーはえー。もう4か月も経ったのか、という感じである。 生後4か月と4日だ。 成長をしているのは間違いないのだろうが、いままでのように急激に、という感じではない。ミルクの量も変わっていないし、寝返りもまだできない。クーイングのレパートリーも特筆するほど増えていない気がする。 そういえば、沐浴を卒業した。一緒に風呂に入る。 表情は豊かになって、かわいさが増した。結構笑ってくれる。くすぐったり、緩急をつけて擬音語を発すると笑ってくれる。 身体は大きくなったのだろうか、ど

          保坂和志|言葉の外へ

          “「小説家は言葉のプロだから」という言い方が嫌いだ。”から始まるその冒頭を読んで、ああ、この本を買ってよかったと思った。* 最近は純文学を読んでいない、というと嘘になる。何冊か並行読みしていて、なかなか進まない。相変わらず色々読んでみようというつもりでいて、純文学以外を早く読み終えてしまう。* 僕はプロの、金を稼ぐ小説家ではないが、小説を書いている事は機会があれば人に話すように意識していて、表明することで何か変わるかもしれないと思って、そうしている。いつか、同僚が「小説を

          保坂和志|言葉の外へ

          4なし

          生後3か月。厳密には3カ月と3日である。 まずはミルクの量から。160ミリリットル。ミルクの量に大きな変化はない。寧ろ生後2か月の時よりも飲まないことがあるくらいで、これは満腹中枢の発達によって、満腹を感じることができるようになったから、と育児本で読んだ。ミルクの吐き戻しはほとんどなくなった。 げっぷもスムーズに出るようになった。延々とトントンせずとも2,30秒で出してくれる時がある。新たなげっぷの出し方を試していて、床なり膝なりに娘を座らせた状態でげっぷをさせる。抱っこ

          長谷川櫂|決定版 一億人の俳句入門

          俳句に興味を持った。だから、買って読んだ。 家事や育児に追われる中、ぽっと空く時間がある。スマホを弄ることは貴重な時間を安売りしているようで避けたい。本を読んだり映画を観るには疲れすぎている、文章を書くには脳みそが働かない。そんな時に俳句を詠む(というか頭の中で言葉を練っている)と、ラップトップの前でキーボードを叩いていなくとも、「自分はいま、ものを書くためのトレーニングをしているのだ」という気分になって、少し心が落ち着く。 俳句を詠むのに適した時間の流れの中で、いま僕は

          長谷川櫂|決定版 一億人の俳句入門

          3なし

          生後2カ月が過ぎた。 誕生月が「1なし」、生後1カ月の日記が「2なし」なので、「3なし」は生後2カ月時点の日記ということになります。 まずは、ミルクの量から書いていきましょう。160ミリリットル。これは少し得した気になる。なぜかと言うと、わが家は160ミリリットル哺乳瓶で、ミルクを作る際は単純に一番上のメモリにお湯がくるように合わせればいいので、楽だからだ。まあ、これは些細な話。 小さいところから入ったので、次はもう少し社会的な話。 第一回目の予防接種を打った。生後2

          伊藤比呂美|ショローのおんな

          伊藤比呂美さんを身近に感じるのはなぜだろう、と思った。僕が福岡に住んでいた頃、熊本で開催されたイベントへ会いに行ったことがある。簡単に言葉を交わし、ご著書にサインをいただいた。 身近に感じさせる何かがあるとすると、それは何か。西日本新聞で何年も続いている人生相談の回答はどこかほっこりさせられるし、早稲田の学生さんたちも「いとう先生」「伊藤せんせい」と親しみを込めて呼んだ(書いた)。メールなどで、全部漢字の「伊藤先生」とはならなかったということ。中には「お母さん」と授業中間違

          伊藤比呂美|ショローのおんな

          2なし

          前回書いてから1か月以上が経つ。ここのところまともに文章を書く時間が確保できなかったのだ。まったくもう。 とにかく寝不足である。僕自身の生活リズムが整っていないから、1日の中で書く時間を確保するのが難しかったし、"予定" の時間になっても疲れていて寝てしまったり。そんな日々だった。だっと、というか現在進行形である。 子どもに沐浴やげっぷをさせるのは慣れてきた。第一子の時も育児にフルコミットしていたから、初心者ではない。身体が覚えているみたいだ。ほにゃほにゃの新生児にひよっ

          1なし

          第2子が生まれた。病室から帰ってきて今日から家で一緒に暮らしている。生まれてから家に来るまでの約1週間は上の子どもS君(3歳男児)をワンオペで面倒みていた。脱線だが、ワンオペは確かすき家で問題が起きて以来、世間では劣悪な労働環境を指す悪い意味で流通されるようになったと記憶している。私はすき家で高校生の頃バイトをしていた。すき家の例のワンオペも経験したことがあるが、子育てのワンオペはちょっとそれとは比べ物にならない別次元の大変さがある。さて、2年程前から子育てを一つの軸として小

          F列1番

          一番好きな村上春樹作品は?と訊かれれば「ダンス・ダンス・ダンス」と反射的に答えてしまうが、同じ本を読み返すことって基本的にないから、断片的に印象に残るシーンやセリフはあっても、話の筋を思い出すことができない。 再読すれば新鮮な気持ちで楽しめるとは思っているので、当時の感動をそのままに残しておきたいということかもしれない。よく考えてみれば僕は本に限らず、お気に入りの映画も観返そうという気にならない。繰り返し体験する事で再確認し愛情をより強固にする人がいて、一方で一度限り刹那的に

          弟の就活

          年の離れた弟がいる。今年オーストラリアの大学を卒業予定で、現在就活中らしい。このようなご時世なので、就活も大変だろう。 心配してたまに電話をするが、就活に焦った様子はみせず、就活の悩みを直接的に私に相談してくれる訳でもない。弟は口数が少ないが、意志は強い。きっと本人なりに色々真剣に将来について考え、悩んでいることと思う。 少し前に、極力本人のストレスにならない程度にアドバイスを、と思い、とりあえずリンクトインのプロフィールを作るよう勧めた。作ってくれた。 その他にも少しは有益

          カーテン

          ふと、雨が止んだ。 気が付いたらいつの間にか雨が止んでいた、というのとは違った。雨の終わりを告げるまさにその瞬間、いま、ここで止みました、という瞬間が私にははっきりとわかったのだ。 なんて不思議な感覚なんだ、私は興奮して、読んでいた文庫本を捲るページを止めた。クライマックスであと数ページという所だったが、何の迷いもなく本をぱたりと閉じ、スカートの裾についたビスケットのかすを払い落とすと、文庫本をさっきまで座っていたソファの凹み跡の上にそっと置き、導かれるように窓際に歩いて行っ