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アクセスの多い記事

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全体ビュー(全期間)でアクセスの多い記事を集めました。アクセスの多い順に並べてあります。
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#エッセイ

エッセイ、一人称の小説、三人称の小説

エッセイ、一人称の小説、三人称の小説

 今回は、古井由吉のエッセイと小説を紹介します。

 前回の記事でお知らせしましたように、しばらくnoteでの活動をお休みして読書に専念するつもりでいたのですが、気になる下書きが複数あるので、ペースをうんと落として投稿する方向に気持ちが傾いてきました。ふらふらして申し訳ありません。

◆雪の描写
 古井由吉が金沢大学の教員として金沢に住んでいたころを回想した文章を読んでいて、感動したことがあります

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読みにくさについて

読みにくさについて

 ある記事を書こうとしていて、ある部分が長くなってきたので、そこだけを記事にすることにしました。以前なら多少長くなっても強引に記事にしたのですが、このところ体力が落ちているので、無理をせずに別の記事にします。

文章の特徴
 蓮實重彥の文章を読んでいて感じる特徴はいくつかありますが、なかでも私が目を惹かれるのは以下の四つです。

1)音声化できない文章の要素である約物の使用。

⇒「立体、平面、空

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薄っぺらいもの・01

薄っぺらいもの・01

 世界は薄っぺらいものに満ちています。薄っぺらいのに厚いものに、です。

 薄いと厚いは矛盾しません。辞書を開くと、短い見出し語に長い語義や説明や例文があるのと似ています。

 短いほど長かったり長いほど短かったりするのですが、目をうんと細めて見ると、よく見えます。

 ぎゃくに目を大きく開くと、見えすぎて見えなくなり気付きません。

 薄いは厚い。長いは短い。小さいは大きい。見えるは見えない。

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あやしい動きをするもの

あやしい動きをするもの

 今回は小話っぽい文章を二つ投稿します。そのうちの「抽象を体感する、具象を体感する」は「【小話集】似ている、そっくり、同じ」に収録したものです。少しだけ加筆しました。

「【小話集】似ている、そっくり、同じ」は、かなり盛りだくさんな記事なのですが、これまでのアクセス数(全期間・全体ビュー)がいちばん多かったものです。よろしければお読みください。

 この記事は新顔の「人間椅子、「人間椅子」、『人間

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ドナドナ

ドナドナ

 最近、こんなことを考えています。

*はかる:人が苦手な行為。人は、「はかる」ための道具・器械・機械・システム(広義の「はかり」)をつくり、そうした物たちに、外部委託(外注)している。計測、計数、計算、計量、測定、観測。機械やシステムは高速かつ正確に「はかる」。誤差やエラーが起きることもある。

*わける:人が得意な行為。ヒトの歴史は「わける」の連続。分割、分離、分断、分類、分別、分解、分担、分

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有名は有数、無名は無数

有名は有数、無名は無数

「これはね、森鴎外作『寒山拾得』から引用したもので、三島由紀夫の『文章読本』で激賞されている文なんだ」

「そうかそうか、さすがに名文だね。短いけど、すごい。なんというか、こう、気品が漂ってくるのよね」、「やっぱりね。違いますよ。短いけど、そんじょそこらの文章とはぜんぜん違う。なんというか、こう、文体が違います」、「分かります。そんな気がしたんだよな。言葉に独特のたたずまいがあるでしょ? なんとい

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あいまいでやさしい境

あいまいでやさしい境

 小学校の低学年のころに、市内の書店からカレンダーをもらって勉強机の前の壁に貼っていました。世界地図が大きく載っていて、カレンダーの部分は下の方に小さく印刷されているだけでした。

 この地図は中学生になっても貼っていて、よくながめました。メルカトル図法なので、北極地方や南極大陸がばかでかく見えるのです。

 地球儀は高価で買ってもらえなかったのですが、その存在は知っていました。それなのに、目の前

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有名は無数、無名は有数

有名は無数、無名は有数

 今回は、拙文「有名は有数、無名は無数」の続編です。その記事から、いちばん大切な箇所を以下に引用します。

     *

     *

 以上は、「有名は有数、無名は無数」からの引用でした。今回は「有名は無数、無名は有数」というお話をします。

「有名は有数、無名は無数」と「有名は無数、無名は有数」――じつは同じことなのです。

     *

 現在では、美術や音楽や文学の鑑賞が複製の鑑賞で

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言葉は嗜好品(言葉は魔法・03)

言葉は嗜好品(言葉は魔法・03)

 言葉と文字は人にとって最強の嗜好品かもしれません。なにしろ、さまざまな嗜好品をつかって言葉と文字を呼びだそうとするのですから。

書くときに必要な物
 書くときのルーティーンみたいなものが、誰にもある気がします。

 まず、これがないと文章を書く気になれないという物、つまり書くときの必需品ついての話から始めましょう。

 文房具にこだわる人は多いですね。愛用している筆記具はいとおしいもので、他

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ガラスをめぐる連想と思い出(言葉は魔法・04)

ガラスをめぐる連想と思い出(言葉は魔法・04)

 私には、連想にうながされ、みちびかれて書く癖があります。

 簡単に言うと、

・「AだからB、BだからC、CだからD、Dだから……」という論理っぽいつながりではなく、また、
・「Aして、次にBして、それでもってCして、それからDして……」という物語っぽい流れでもなく、
・「Aといえば、Bといえば、Cといえば、Dといえば……」という連想っぽい運ばれ方が、

いちばん、しっくりくるのです。

 そ

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意味を絵で見せる漢字、意味を音で奏でる仮名(好きな文章・05)

意味を絵で見せる漢字、意味を音で奏でる仮名(好きな文章・05)

 今回の記事は、「痛みをつたえる名文(好きな文章・04)」のつづきです。「好きな文章」という連載の番外編です。

漢字、感字
 漢字には感字の側面があるように思います。いっぽう、ひらがなやカタカナを見ると、それが形であることを忘れて、音に直して自分の中に入れている気がするときがあります。

 漢字は意味をともなった形がダイレクトに目に入ります。有無を言わせずに入ってくるのです。

 痛い、いたい、

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