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祖父の本棚から波が。
ひとは、どうして大事なことほど言わないのか。
それなのに、どうでもいいことばかり。天気のことや、ドラマのこと。夕飯のことや、サッカーのこと。私の母も、そうだった。母は、いつもどうでもいいことばかりを話していた。主語がないから、子供たちからいつも注意されていた。そうして、肝心なことはなにひとつ言わずに、この世を去ってしまった。
母の父、つまり私の祖父は、私の生まれる前に亡くなっていた。だか
グリッサンド・柳生一族の陰謀
映画を見終えると、わたしはソファに座りなおし、しばらくのあいだ、その余韻にひたっていた。
それからこの映画について、めずらしく誰かに話したくなった。だが、あいにく四十も半ばになるわたしには、そういう友達がいなかった。だから、過去のわたしへ、それを語ることにした。つまり、東京に出てきたばかりの頃の、二十歳のわたしへと。
『 なあ、きみに是非とも見て欲しい映画があるんだ。
それは
白銀のタクティクスオウガ
雪が降れば、スーパーファミコンであった。
それは、洋間にあった。
日曜の朝九時、カーテンを開けると、雪に反射する朝日が目に刺さった。
洋間は板の間だったから、足がかじかんだ。まずはファンヒーターのスイッチを入れる。それから電気コタツ。テレビをつけると、ちょうど「題名のない音楽会」が始まるところだった。
両親は居間でワイドショーを見ているし、二つ上の兄は、まだ自分の部屋で寝ている。この雪で部活
ヴィレッジヴァンガードは、カウントダウンTVだった。
斉藤和義の「歌うたいのバラッド」を知ったのは、カウントダウンTVのエンディングでだった。
それからぼくは自転車をこいで一時間かけて、町のレンタルCDショップへと向かった。それは国道沿いに建つ大型書店の二階にあり、ゲームショップに併設されていた。まだツタヤができる前だった。
残念ながら、「歌うたいのバラッド」はなかった。きっとまだ、シングルが発売されて間もないからだろう。そう思って、翌週も行って