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トーキョー家族

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生み育ててもらった「実家」。 夫を育んでくれた「義実家」。 そして今の私と夫で息子を慈しむ「家族」。 東京に暮らす三つの大事な家族の話をまとめています。
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記事一覧

つれづれ、クリスマスソングの思い出

つれづれ、クリスマスソングの思い出

毎年この時期になると、頭の中をぐるぐると同じ歌の同じフレーズが駆け巡る。

「ジングル・ベール、ジングル・ベール、金持ーってこい♪」

父親によるひどすぎる替え歌が我が家の定番ソングだった。
金、と鐘をかけているのだが、正しくは鈴である。
このフレーズを思い出すたび、サンタが熨斗つきの分厚い封筒を差し出してくる場面が頭を横切る。一体何の弱味を握られたのだ。
ついつい息子の前で口ずさんでは、違う違う

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パン耳を食べる夫婦の朝は

パン耳を食べる夫婦の朝は

最近、パン耳ばかり食べている。

「どうしたの? 砂東さん、お金がなくなったの?(お金ライター大賞取ったのに?)」
「可哀そう。ちょっとスキ(サポート)してあげようかな」

と思われるかもしれないが、安心してほしい、そうじゃない。
スキもサポートも……していただけるならちょっと欲しい。

***

事の発端は、息子の離乳食だった。

赤子とは、世の中のありとあらゆる固いものを消化することができない

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雨はまだやまないが

雨はまだやまないが

虹が出るのは、雨の後だ。

そんな当たり前のことに、「くらしのきほん」の松浦弥太郎さんの言葉で気がついた。

虹が見たい。だから、多少の雨や風は我慢する。

「くらしのきほん」ーー松浦弥太郎

***

朝、私が会社に出掛けるときにはごく普通に元気だった父親が突然倒れたと連絡が入ったのは、忘れもしない、2015年2月25日の3時頃だった。

「息ができないって言ってたから心臓系かも。でも、右腕が動

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純水すぎる愛

幼少期の休日、家族でよく出かけていた区内のホームセンターは、おもちゃ売り場の一つもなく、女児にとっては退屈きわまりのない場所だった。
しかし、楽しみにしていたものが一つだけある。
買い物が終わったあと、決まって立ち寄る和風ファミリーレストラン。そこでデザートメニューの一つとして提供されていたある甘味を、私はたまらなく愛していた。

くずきりである。

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生来、「つるつる」や「もちもち」の食

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保存食のタイムラグ

昨日、我が家の味噌が切れた。
あーあ。

そろそろなくなるかな、二日分の味噌汁にはちょっと足りないかな、なんて思いながら、近所のスーパーで予備の味噌を買っておいたので、問題ないと言えば問題ない。

それでも、あーあ、だ。
何せ今まで使っていたのは、父が趣味で仕込んでいた手作りの味噌だったから。

***

父は手作業が好きな人で、なにかと「手作り」するのを好んだ。ちなみにもっとも壮大な「手作り」は

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【大黒柱が倒れたら】医療費哀歌

【大黒柱が倒れたら】医療費哀歌

突然、大黒柱が倒れてしまった我が家はごく普通の四人家族だった。

サラリーマンを定年退職して数年過ぎた父。専業主婦の母。アラサーOLの私。新卒三年目の弟。

主な生計は、父が祖父から相続した若干の土地が生み出す家賃収入と、一年ほど前から受給するようになった年金。子どもたちからそれぞれ数万円の食費を徴収しているものの、それがないと困るというわけでもない。
家は持ち家、ローンも特になし。お金のかかる趣

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【祝】お金ライターコンテストで大賞頂きました!

FROGGY×note「#お金ライター 投稿コンテスト」にて、なんと大賞をいただいた。

ちなみに、受賞の連絡を頂いたその時、私がいたのは病院のベッドの上だった。

陣痛の真っ最中だったのである。

これまでの人生においてぶっちぎりナンバーワンの強烈な痛み(無痛分娩だったのだが、お産を進めるために一時的に麻酔を切られていた)に耐えながら、私はスマホを確認し、小さくガッツポーズした。そして、思わず口

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平成最後の朝、または幸福な朝。

平成最後の朝、または幸福な朝。

羽海野チカ著、『3月のライオン』の中に、こんなシーンがある(と前置きする必要もないくらい、この作品は多くの人たちに読まれているのだけれども)。

前日、いろいろあって疲れ切った零(主人公)は、川本三姉妹(ヒロイン姉妹)の家で、倒れるように眠り込んでしまう。
目覚めた場所は、布団の上。
零は姉妹たちに挟まれ、川の字に寝転びながら、「にちようび」の朝を迎えていたのだ。

年頃の娘たちのなかで、異性扱い

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ヨーグルト、それは無償の……

ヨーグルト、それは無償の……

子どものころ。
夜に冷蔵庫を覗くと、そこには必ず、ガラスの器に移されたヨーグルトが入っていた。
朝早く出勤する父の分だ。

それは両親が結婚してすぐに始まった習慣だという。
父の出勤時間に合わせて起きようとした母を、父が止めた。

自分は朝、食欲が湧かないタイプの人間だから、朝食を作ってもらう必要はない。俺に合わせてわざわざこんな早くに起きることはないんだよ。ヨーグルトだけ買っておいてくれればいい

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投票行って外食しようよ。

投票行って外食しようよ。

独身時代は断然期日前投票派だったのだけれど、結婚してから選挙当日に投票に行くことが増えた。
別に、何らかの強いこだわりがあるわけではなく、単純に今の家からは当日の投票所の方が近いというだけの理由である。

特別な用事がなければ、夫と一緒に連れ立って投票所に行く。
息子が生まれてからは、ベビーカーをガラガラと押しながらの投票だ。

毎回毎回、無意識のうちに頭の中では同じ曲が流れる。

選挙~の日って

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家事本、処方しておきますね。【6・完】

家事本、処方しておきますね。【6・完】

子どものころ、嫌いな食べ物を頑として口に運ばない私に、母がため息をつきながら「まぁ、大人になったら食べられるようになるでしょう」と言った。ほほう、そういうものなのか、と思った私は、あらゆることを「大人になった自分」に丸投げする習慣がついた。

「今は食べられないけれど、大人になったら食べられるようになるよ」
「今はできないけれど、大人になったらできるようになるでしょ」
「今は忙しいだけで、大人にな

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家事本、処方しておきますね。【5】

家事本、処方しておきますね。【5】

先週は3日しか夕飯を作らなかった。
2日分、旦那の飲み会が入ったからである。

ごはんいらない、と言われた瞬間、頭の中では「なぁんだ」と「ラッキーー!!」と「今週中に使いきらねばならない食材の量と賞味期限」がミキシングされ、ドロリとした微妙な感情が生まれる。
ドロリの原因は三つ目に挙げた材料に他ならないので、こういうときにもっと諸手を挙げて全力で喜べるよう、力を入れるべきは食材の保存法である。

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家事本、処方しておきますね。【4】

家事本、処方しておきますね。【4】

特に何をしたわけでもないのに、家にいるだけで、いやいなくても、そこいら中に埃が積もっていくの、何でですかね。
あの独特なふわふわした灰色の綿は、どこから生まれ出ずるの? 気づいていないだけで、人や、人が一度触ったものからは、ざらめをわたあめ器に入れたときに出てくる甘い繊維のような、灰色の繊維が絶えず沸き出しているのではないの……?

いちいちそんなことを考えず、毎日クイックれ(注・掃除機を置いてい

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家事本、処方しておきますね。【3】

家事本、処方しておきますね。【3】

三回目にして、ようやく本題がやってきた。
私の独断と偏見による、おすすめの、なおかつ現在も大変お世話になっている家事本を一冊ずつご紹介させていただく。(アマゾンのリンクが貼れるのか?貼れないのか?がわからなかったのでリンクはなし)

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『家事は、すぐやる!』(著:マキ、ワニブックス刊)兼業主婦3日目、息も絶え絶えに手に取った『しない家事』と同じ著者による時短家事本。
本を薦めた友人から「結

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