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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#岩波新書

検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか (川上 高志)

検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか (川上 高志)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 興味を惹いたタイトルではありましたが、何より、著者の川上高志くんが大学時代の友人だったというのが手に取った最大の要因です。
 大いに期待して読んでみたのですが、予想どおり重要な論点を押さえつつ、しっかりした立論が展開されていました。

 まず、著者は、本書で検証を試みた対象である「平

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ジョブ型雇用社会とは何か : 正社員体制の矛盾と転機 (濱口 桂一郎)

ジョブ型雇用社会とは何か : 正社員体制の矛盾と転機 (濱口 桂一郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目に付いた本です。

 「ジョブ型雇用」は、新型コロナ禍対策のひとつであるリモートワークの進展に伴い、日本企業においても導入が加速されつつありますが、私としてもその概要程度は頭に入れておこうと手に取ってみました。

 著者の濱口桂一郎さんは労働法・社会政策の専門家です。
 その立場からの、昨今の関係論

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日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

日本問答 (田中 優子・松岡 正剛)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 変わったタイトルだったので目に付きました。

 松岡正剛さんも著者のひとりということで挑戦することにしました。対談の相方は社会学者(法政大学総長(注:当時))田中優子さんです。

 まさにお二人ならではのとても面白そうなテーマの対談だったのですが、私にとってはちょっと荷が重すぎました。著者と読者の持っている基本的な知的素養の量と質があまり

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行動経済学の使い方 (大竹 文雄)

行動経済学の使い方 (大竹 文雄)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 大竹文雄さんの著作に限らず「行動経済学」の本は久しぶりですね。

 冒頭、行動経済学の基本概念として、「プロスペクト理論」(確実性効果・損失回避)「ヒューリスティックス」の説明がほんのお飾り程度に触れられていますが、大半は、行動経済学的観点からの働きかけの実例を紹介した内容です。

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短篇小説講義 増補版 (筒井 康隆)

短篇小説講義 増補版 (筒井 康隆)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 私が中学生のころ、最初に手にした「短編小説」といえば「星新一」さんか「筒井康隆」さんの文庫本でした。ともかく、その “発想の奇抜さ” に驚いたものでした。
 その後しばらくして、お二人の作品はほとんど手に取らなくなってしまいましたが・・・。

 この本は、図書館の新着本のコーナー

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伝言 (永 六輔)

伝言 (永 六輔)

(注:本稿は、2019年に初投稿したものの再録です)

 先日、たまたまつけたテレビに黒柳徹子さんが出演していて、60年来の友人だったという永六輔さんの思い出を話されていました。

 永さんの著作としては、ちょっと前にも「芸人」というタイトルの本を読んでいるので、今年になって本書で2冊目です。こちらでも永さんのテンポのいい語り口は健在でした。
 その中から私の関心を惹いたところを書き留めておきます

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芸人 (永 六輔)

芸人 (永 六輔)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 永六輔さん。野沢那智さん、愛川欣也さん・・・と並んで、ラジオ深夜放送の中での私の思い出の方です。

 本書は、今から20年ほど前(注:当時)の著作です。永さんの語り口そのままが嬉しいですね。

 本書の構成ですが、かなりの部分は「芸人」やその周辺をテーマにした「語録」の紹介です。
 とはいえ、有名人の言葉ばかりを採録したわけではありません。

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戦争と検閲 ― 石川達三を読み直す (河原 理子)

戦争と検閲 ― 石川達三を読み直す (河原 理子)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 夏になると「戦争」に関する本を1冊は読もうと思っています。
 そんな中、いつも行っている図書館の新着本の棚で目についたので手に取ってみました。

 著者の河原理子さんは朝日新聞の記者とのこと、ある取材で石川達三氏の子息である石川旺さんと出会ったのが本書を記すきっかけになったそうです。
 発禁処分を受けた「生きている兵隊」という石川達三氏の作

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被災弱者 (岡田 広行)

被災弱者 (岡田 広行)

(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)

 「決して忘れてはいけない記憶」というのも正しくないでしょう。
 それは、まだ「過去のもの」になっていないからです。まだまだ、多くの被災者の方々にとっては “現在進行形” なのです。

 本書では、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の復興から取り残されている人々の今の姿(注:2015年時点)や、被災者支援のために、今なお様々な分野で尽力して

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ものの言いかた西東 (小林 隆/澤村 美幸)

ものの言いかた西東 (小林 隆/澤村 美幸)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 何かの書評を読んで気になったので手に取ってみました。

 従来からよく語られる「方言」の地域差とかではなく、もっとベーシックなレベルである「ものの言い方」を切り口に、多くの事例を紹介しながら地域文化論を展開しています。

 そして、その地域差には、関西圏・関東圏・東北圏・九州圏等の区分において一定の傾向があったとのことです。この指摘はとても

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欧州のエネルギーシフト (脇阪 紀行)

欧州のエネルギーシフト (脇阪 紀行)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 ちょっと読む本が切れたので下の娘に相談したところ「これはどう?」と出してきてくれた本です。
 高校の先生から勧められたとのことですが、新品同様の外観からみると、どうも読んだわけではないようですね・・・。

 内容は、原子力発電への姿勢をはじめとして再生エネルギーへの取り組み等について、主要ヨーロッパ各国の対応を実際の現地取材により明らかにし

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同時代のこと ― ヴェトナム戦争を忘れるな (吉野 源三郎)

同時代のこと ― ヴェトナム戦争を忘れるな (吉野 源三郎)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 毎週行っている図書館の「リサイクル図書」のコーナーを覗いた時、目についたので手に取ってみた本です。

 著者の吉野源三郎氏は、雑誌「世界」の初代編集長で、名著「君たちはどう生きるか」の著者として有名ですね。

 本書のタイトルは「同時代のこと」。巻頭の「序にかえて」の章が圧巻です。
 その章では、同時進行している「現代史の捕捉・評価」に関す

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日本語の教室 (大野 晋)

日本語の教室 (大野 晋)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 シンプルなタイトルであるが故に、一体どんな議論がなされているのか気になって手に取ってみました。

 著者の大野晋氏は、丸谷才一氏とも親交の深かった日本を代表する国語学者です。その日本語・日本語文法の大家が、日本語にまつわる素朴な質問に答えていくという形態の本です。

 その一問一答の中から私の興味を惹いた箇所を、覚えとして書き留めておきます

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日本のデザイン ― 美意識がつくる未来 (原 研哉)

日本のデザイン ― 美意識がつくる未来 (原 研哉)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 朝の通勤電車の中で読むのに手ごろな文庫/新書の大きさの本が切れたので、職場近くの図書館で見つけました。

 著者の原研哉氏は、武蔵野美術大学教授で「無印良品」のボードメンバーでもあります。

 本書は「デザイン」という切り口から日本の将来展望を語ったものです。

 まずは、日本が強みを発揮できる分野と考えられている「ものづくり」において、著

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