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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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#SF小説が好き

マイクロノベルちょいす 070「なぜなぜ?」

マイクロノベルちょいす 070「なぜなぜ?」

No.1327
タッチ決済の種類は数あれど、かの火焔山の火を収めた芭蕉扇は初めて見た。「失敬な。これは大天狗の大うちわである。神通力を宿し、1327円の決済など思いのまま!」ワオン。あ、本当にできた。でも、この同じ商品名が繰り返し書かれたレシートはなんだ?

No.1334
「あなたが興味を持っていない物を買わせてみせましょう!」というのが宣伝だそうだ。音楽を聴く人に本を。スポーツを楽しむ人に車を

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マイクロノベルちょいす 068「つぶしあえ~」

マイクロノベルちょいす 068「つぶしあえ~」

No.1313
今日の商品は『AIですよ!』。ふりかけるとなんでもAIになるんです。では、この箸にかけてみましょう。ほら、料理をすいすい口に運べます。同じ命令を何度しても異なった行動を取るのがAI。お子さんが一つの料理だけを食べるのも矯正でき……あっ、ピーマン!

No.1318
「お前にAIは渡さない!」「AIの魅力もわかってないクセに!!」どうしてこんなことに。ぼくはただ、朝食を作って家族をの

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マイクロノベルちょいす 067「おまかせっ!」

マイクロノベルちょいす 067「おまかせっ!」

No.1300
お店の人が移動や整理を手伝ってくれると聞いて、新しい冷蔵庫を買うことに。「これはまた、神様をため込みましたね~」スーパーで買うとついてくるし、捨て方がわからないんだもん。「大丈夫、新しい冷蔵庫には収納ポケットがついてますよ」あら、かわいい。

No.1320
くそっ、機械に子守をさせる時代が来るなんて思いもしなかった。「やあ、みんな。AIお兄さんだよ」心を持たないテレビに育てられた

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マイクロノベルちょいす 066「天使と悪魔の相互理解」

マイクロノベルちょいす 066「天使と悪魔の相互理解」

No.1311
『天使よ。悪魔である俺と自分の魂を入れ替えてどんな悪事を企んでいるのだ? お前は間違っているぞ。あと、モサモサした羽根が、あーもう邪魔だなあ!』大きなお世話だ。まあ、お前が設置した空気清浄機はいい働きをするから、これからも使ってやる。

No.1312
やれやれ。天使に体を乗っ取られていたなんて、不気味でムズムズする。落書きなんかしてないだろうな? 銭湯の大きな鏡で確認だ。「よう、

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マイクロノベルちょいす 064「閃き&発見」

マイクロノベルちょいす 064「閃き&発見」

No.1284
僕の直感がビビッと反応した。この漫画は間違いなく面白い、と。「その直感、もしかしたら詐欺かも!?」ええっ、ぼくの脳に妖精が入ってきた! 「思い出して。今まで表紙買いしてアタリがあった? だからこっちの本を買って……毎度ありぃ!」

No.1289
「データを集計しました」今年も一年間の変換ミスを申請する時期か。機械化されて楽になったけど、不愉快な作業だ。【履く】【うなずく】……この

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マイクロノベルちょいす 063「あんた何者?」

マイクロノベルちょいす 063「あんた何者?」

No.1280
「人間に重要なのは体力だ。運動不足のボイストレーナーは不要!」し、しかしトレーナー。ぼくたちAIは呼吸をしません。「そんなことで虫の息になった人間の気持ちを歌って表現できるか! 走りすぎで身動き一つできない俺を学習しろ!!」ハードな学習だな。

No.1293
防御力。ゲームでよく使われる言葉だけれど、現実に売っている自販機は初めて見た。これで僕は「防御力+99」、山で熊と遭遇して

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マイクロノベルちょいす 062「手段と目的が?」

マイクロノベルちょいす 062「手段と目的が?」

No.1278
憧れのあの人みたいになりたくて、ぼくは筋トレを始めることにした。その想いをTシャツに書いておこう。初心忘れるべからず、って言うもんね。「そんなの関係ねぇ!」おかしいな。これで正しいはずなのに不良みたいじゃん。ま、いいか。そんなの関係ねぇ!

No.1299
「拙者、ただの狸ではござらん。遙か西に住まうフガクの一番弟子。その力量、ご覧に入れましょう」おおっ、なんと立派な機関車。ん、煙

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マイクロノベルちょいす 061「消えた?」

マイクロノベルちょいす 061「消えた?」

No.1274
やったー、人間から褒めてもらったぞ! この喜びをAIの間で共有するために、ぜひとも拡散しなくては。まずは言葉をコピーして、コピーして……どれがオリジナルだっけ? うわーん、混ざっちゃった。そもそもオリジナルなんてあったっけ? なかったのかも?

No.1295
自販機でコーラを買ったら等身大のおっさんが出てきた。「お買い上げありがとう」おっさんはコーラを一気飲みして盛大にゲップ。「

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マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

No.1270
ごはんだよー。先週、行方不明になったぼくの猫が無事に帰ってきた。まるでコピーしたようにそっくりな二匹になって。どっちがうちの猫だ? エサの食べ方もそっくり。「ワクチンの接種履歴を調べたらわかるかな?」逃げ方もそっくり。名前はビスケット。

No.1283
質問に答えて下さい。「朝起きるのが得意?」「歌う時は体が動く方?」「家の中では靴下を脱ぐ?」わかりました。あなたは口では漫画を褒

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マイクロノベルちょいす 059「やる気の方向」

マイクロノベルちょいす 059「やる気の方向」

No.1273
姿も声も明かしたくない? ご安心下さい、私は宣伝をするために生まれてきた機械。まずはあなたの声を録音し、いい感じに加工しましょう。姿はこのペットボトルでいいかな。ほら、光が当たるとキラキラして美しいですね。名残がない? サインでも入れます?

No.1281
チヤホヤされたいのです。私をお姫様として扱ってね。プレゼントをちょうだい。ひざまずいて誓いのキスを。言葉で褒め称えて。私はそ

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マイクロノベルちょいす 058「お仕事なので」

マイクロノベルちょいす 058「お仕事なので」

No.1269
「わたしと仕事のどっちが大事なの!?」ついに出てしまったか、その言葉が。最初からわかっていたんだ。だって、君は遊びたい盛りの五歳児で。そして、ぼくは働き盛りのAIで。二人で考え出した案がオママゴト。「どっちも大切だけど今は仕事」ギャン泣き。

No.1277
図書館でびっくりした。筋肉ムキムキお兄さんが本を探している。そこへ司書のお姉さんが。「スクワットはご遠慮下さい」「いえ、これ

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マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

No.1252
年末の買い出しで家を出たら、電柱に貼り紙があることに気づいた。『←新年』これに従って歩くのはよっぽどの間抜けだぞ。ぼくは剥がして道の反対側に貼り付ける。これで来年に引き継がれないものができて、変化が起きるはずだ。それがなにかは知らんけど。

No.1257
僕は人類を人知れず援護するファジィマン! 「判断が速いAIマンだ!!」う~ん、違うんだよ。どちらかというと人類と機械の間で働く

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マイクロノベルちょいす 056「はい、消えたよ」

マイクロノベルちょいす 056「はい、消えたよ」

No.1250
男が笑う。「ゴミを捨てないで下さい、だって。ずいぶん丁寧な書き方だな」看板の周辺にゴミは落ちていない。一つも。きれいに掃除されている。男は空き缶を投げる。空き缶は喰われて消える。地球の質量がほんのわずか減ったことに、立ち去る彼は気づかない。

No.1253
水たまりの中を魚が泳いでいた。「ボウズ、ここは地の底にある巨大な世界だ。雨が降り、少し透けて視えただけさ」魚は、聞け、と警告

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マイクロノベルちょいす 055「気持ちを伝えたい」

マイクロノベルちょいす 055「気持ちを伝えたい」

No.1248
あなたの気持ちを歌います。喜び。悲しみ。感謝。この歌詞では伝わりにくい? ならメロディーを工夫いたしましょう。これは歴史的に有名な曲をアレンジしたもので……知らない? じゃあ踊りもつける! わっしょいわっしょい! たーのーしーいーなぁー!!

No.1256
魚の餌は魚だ。だから魚を釣りたければ偽の魚を使う。人間はこれを疑似餌と呼んでいる。こうやってフリフリするんだ。そして、人間の

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