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マイクロノベルちょいす 056「はい、消えたよ」

No.1250
男が笑う。「ゴミを捨てないで下さい、だって。ずいぶん丁寧な書き方だな」看板の周辺にゴミは落ちていない。一つも。きれいに掃除されている。男は空き缶を投げる。空き缶は喰われて消える。地球の質量がほんのわずか減ったことに、立ち去る彼は気づかない。


No.1253
水たまりの中を魚が泳いでいた。「ボウズ、ここは地の底にある巨大な世界だ。雨が降り、少し透けて視えただけさ」魚は、聞け、と警告した。「これより二日ののち、水害が起こる」予言は当たり、僕の家の近所で水道管が破裂した。それ以来魚は見ていない。


No.1265
ぼくは夕食に違和感を覚えた。ネット仲間とゲーム中に「ごめん、そろそろ晩ご飯だから」と女戦士が帰った直後、お母さんから呼び声が。「ごはんよー」俺も私もとパーティーは解散。うーん。明日みんなに、味噌汁の具にブロッコリーを入れるか訊いてみよう。


No.1272
「吾輩は推しである」「吾輩も推しである」「推しは推しッス」推しが増えてしまった。このままじゃスマホの容量を食い尽くされる。「ネットにアップしてよ」こうして増殖した推しがネットをパンクさせた。残ったのは僕の一体だけ。君の目的はなんだったの?


No.1276
もしも人類がみんな眠っちゃったなら、あたしたちが代わりに働いてあげる。年に一度の誕生日に贈る花は造花。花粉とかマジ勘弁。ものまね大会もやってあげる。寝坊する人、遅刻する人、なにもないところで転ぶ人……できるだけやってあげるから安心してね。



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