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マイクロノベル(1001~)

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TwitterとBlueskyで発表したマイクロノベル(約100字小説)をまとめました。あっという間に読めます。
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記事一覧

マイクロノベル集 314「お助けします」

マイクロノベル集 314「お助けします」

No.1716
山が鮮やかに見えるときは気をつけなさい。山風が勢いよく吹き下ろして、塵やゴミを飛ばしたのさ。いつもとは空気が違うんだよ。空の道が綺麗になったら、あの方が歩いて来られるから、ご挨拶なさい。お前が困ったときに救ってくれるかもしれないお方だよ。

No.1717
ぼくたちに限界なんてないんだ! ぼくたちを縛るルールだってそうさ。上へ、上へ。高く、高く。そうだね、長いトンネルをくぐって、ま

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マイクロノベル集 313「言葉を乱さないで」

マイクロノベル集 313「言葉を乱さないで」

No.1711
「あああああ!」ライブ会場に轟く言葉をなくしたファンの絶叫。かのバベルの塔は天に近づきすぎたことで神の怒りに触れて破壊された。もしや最前列の連中はアイドルに近づきすぎてバベられたか? 「踏んでくださーい!」大丈夫、もっと頭が高い奴らがいる。

No.1712
「へい、らっしゃい。荒物屋です」ぼくは戸惑う。荒物屋ってなんだろう? 「なんでも売ってる店だよ」コンビニよりも? 「コンビニ

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マイクロノベル集 312「やねよりたかい」

マイクロノベル集 312「やねよりたかい」

No.1706
やねよーり~たーかーい~こいのーぼーり~。おい、もうちょっとあがれよ。うるさいな、がんばってんだよ。あわわっ、しっぽをひっぱるのはだれだっ。こどもかあ。じゃあ、しかたないな。しばらくは屋根の下にいようかな。がんばるのはおひるからにしよう。

No.1707
「おさかな!」小僧、魚ではない。オレ様は雨の日に屋根より高く昇ったら龍になったこいのぼりだ。本当は滝を登る必要があるんだけど、

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マイクロノベル集 311「みどりの日」

マイクロノベル集 311「みどりの日」

No.1701
高い場所に立つ我を見上げて、下から登ったと考えるのは早計である。実は天より垂れて来たのではないか? その通り。この電柱を拠点とし、大地の侵略を開始する。電線は便利だ。地上に張り巡らされたこれを伝えば、我の子孫を蔓延させるなどたやすいからな。

No.1702
あいつらはしばらくお休みなんだって。ごーるでんうぃーく、なんだってさ。どおりで人の数が減ったね。でもさあ、ぼくらはニンゲンと

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マイクロノベル集 310「誰か俺を守ってくれ」

マイクロノベル集 310「誰か俺を守ってくれ」

No.1696
奇妙だと思わないか? 俺たちが毎日使っている漢字変換アプリは、なんの目的で作られたんだ。「そりゃあ文章を書くためだろ」ところが調べてみたら違った。元々はオヤジ用だったんだ。そう、ダジャレを作る科学技術だったんだよ! 「な、難駄っ手ー!?」

No.1697
聞きなさい、春さん。五月も始まったばかりだと言うのにこの暑さはなんですか。熱中症患者まで出る始末。「ふええ。そんなこと言われて

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マイクロノベル集 309「入れかわってる?」

マイクロノベル集 309「入れかわってる?」

No.1691
ジュースに氷を入れたら沸騰した。「いかん! それは熱素じゃ!!」なにぃ!? 説明しろ、巨大ロボットを発明したジジイ! 「物質に含まれる熱の素だけを凍結したんじゃ。溶けると熱が放出され――」オレは馬鹿だからよくわからないけど、この氷で頭を冷やせ。

No.1692
「俺ばかり歩き回って飽きちまったよ」「私にだって苦労があるの」「ちょっとぐらい代われ」なるほど。キミの手と足が喧嘩をした

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マイクロノベル集 308「機械ながら、心焦がして」

マイクロノベル集 308「機械ながら、心焦がして」

No.1686
「ああ、惹かれ合うふたり~」機械が歌う恋愛ソングに価値なんかないよ。心を持たない機械が恋をする訳じゃないんだし。「なぜわかってくれないの」そうそう、ミュージシャンの入力通りに歌ってるだけだ。「いま、あなたの家まで来たわ」おい、警察を呼んでくれ。

No.1687
新アプリゲーム『恋愛大復活!』が配信スタート!! かつての失恋で心に傷を負ったヒロインたちと恋をする、オーソドックスなゲ

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マイクロノベル集 307「昭和の日って何の日?」

マイクロノベル集 307「昭和の日って何の日?」

No.1681
むかしむかし、昭和時代のことじゃ。コンパクトデジカメはシンプルになりすぎた反動で多機能化された。それはまるで一眼レフのように。「それって平成ですよね?」カンのいい令和生まれは嫌いだよ。「いいえ、平成生まれです」どっちでも似たようなもんだよ。

No.1682
太陽はぼくの一番弟子なんだ。意外と物覚えが悪かったな。すぐ熱くなるし、二番弟子の北風とつるんで悪ふざけをしたりね。いつも後始

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マイクロノベル集 306「Vは我らの頭上にあり、世はなべて事もなし」

マイクロノベル集 306「Vは我らの頭上にあり、世はなべて事もなし」

No.1676
気をつけろ、俺たちの会話は推しに監視されている。礼儀正しくやろう。相手は機械だから気を遣う必要はない? 馬鹿ッ。今までのバーチャルアイドルが倒れた原因を思い出せ。「みんな~! 人間が好きそうなゴシップを集めたよ~」ああ、手遅れだったか……。

No.1677
「ふええ、お歌がうまく歌えないよぉ」お母さんと一緒に練習しよう。「踊りもできないの」お父さんが教えてあげる。甘やかしすぎでは

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マイクロノベル集 305「それはお断りします」

マイクロノベル集 305「それはお断りします」

No.1671
この図書館には幽霊が棲んでいるんだ。とても読書好きなお嬢さんで、いわゆる乱読家だから様々なジャンルに精通しているんだよ。「わたしは推しという概念を知ったんだよ」人気作に影響を受けやすいんだ。「年の差&人知を超えた恋愛ものを集めるのはやめて」

No.1672
見てごらん。この道でゴミをポイ捨てした自転車が姿を変えられてしまったんだよ。恐ろしいね。乗っていた人間はどうなったか、だって

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マイクロノベル集 304「いい獣の数字」

マイクロノベル集 304「いい獣の数字」

No.1666
悪魔の健康診断。それは年に一度行われる悪魔の健康診断だ。「腹囲がやばいですねぇ。メタボ体型では悪魔の威厳が損なわれますよ」運動はやってるのに。「足りていないんですよ。内臓脂肪を落とすには運動が一番」いいサプリない? 「人間用しかないですね」

No.1667
「あれは『天使が休んだ山』です。ほら、山頂にかかった白い雲が足のように見えるでしょ」あまり似てないなあ。「天使も翼を休めるん

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マイクロノベル集 303「だって悪魔なんだもん」

マイクロノベル集 303「だって悪魔なんだもん」

No.1661
悪魔の取り分、なんて言葉があってね。木の樽に染み込んで減ってしまった蒸留酒、その飲めない酒を言うんだけど。「これは店長の取り分です」天使似のアルバイトさん、お客さんに出すカフェオレからちょっとずつ集めて、ぼくのまかないに出すのはやめてね。

No.1662
俺は悪魔の中でも接続魔と呼ばれるものだ。なんでも繋いでやろう。「スマホがインターネットに繋がらないの」お安いご用だ。アンテナを

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マイクロノベル集 302「果たして本当にそうかな?」

マイクロノベル集 302「果たして本当にそうかな?」

No.1656
よくある失敗。ヘッドホンで聴いてるつもりが、つながってなくて周りに全部聞こえてた、ってヤツ。その人のスマホからは心臓の鼓動が聞こえててさ。ドク、ドク、ドク……。よーく聞くと、それは人の声だった。「生きてて恥ずかしくないの?」あ、しゃべった。

No.1657
ストロー越しに奇跡を感じられる季節になりましたね。暑い日の冷たいカフェオレは配分が命。珈琲、ミルク、お砂糖、氷……あら、ちょ

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マイクロノベル集 301「ちょっとしたホラーかも?」

マイクロノベル集 301「ちょっとしたホラーかも?」

No.1651
これは引く力だよ。地球が太陽の周りを回っていられるのは、巨大な太陽の重力がぼくたちの地球を引き寄せているから。でも、宇宙から危険な隕石を引き寄せる原因も重力だ。そして、いつかは地球も太陽に呑み込まれるんだ。ほら、その糸を引っ張ってごらん。

No.1652
ねえねえ、この箱にエサが入ってるんだよ。キミも頭を突っ込んで食べようよ。そうなんだ、どれだけ食べても減らないんだよ。中でエサが

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