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好きな記事、好きな小説、好きな文体

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個人的に好きな記事や小説や文体。個人的に注目している書き手、活動。
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#料理

「感動した!」と言ってもらえるぼくの料理には、圧倒的な戦略とロジックがある

「感動した!」と言ってもらえるぼくの料理には、圧倒的な戦略とロジックがある

はじめまして。鳥羽周作と申します。「sio」という代々木上原のレストランでシェフをやっています。

このnoteでは、ぼくがふだんどのようなことを考えながら料理づくり、お店づくりをしているのかをお伝えしていければと思います。



ただの「おいしい」ではなく「感動した!」と言われたいぼくが目指すのは、ただの「おいしい」ではありません。「感動」です。

日本に「おいしい」お店は無数にありますが、「

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20|卵かけご飯は料理である

20|卵かけご飯は料理である

たまに学生を呼んで食事会をする。人を呼ぶときはたくさん料理をつくるので(これまた学生がびっくりするほど食べる)、「毎日こんな料理が食べられていいですね」と言ってもらえたりするが、普段はそんなふうにはつくらない。

最近は、平日は味噌汁と納豆とか、味噌汁と卵かけご飯とか、朝ごはんみたいな夕飯が多い。

それは、まったくもって手抜きではないと、確信している。

きっかけは、子供にご飯を食べさせるのに苦

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私の10年を肯定してくれた一皿のこと

私の10年を肯定してくれた一皿のこと

つい先日。私はとうとう、人生初・ミシュランデビューを果たした。個人的な節目として、意を決して予約したのだ。

お店は新潟県村上市の「割烹 新多久」さん。予約してからの3か月間、それはもうそわそわしっぱなし。

「30歳までに恵比寿の某ミシュラン店にデートで行けたらイイ女」という定説(?)とはかけ離れているけれど、私には理想のミシュラン・デビュー様式があった。

自分の稼いだお金で、ひとりで、カウン

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注文を聞かない料理人

注文を聞かない料理人


Entrée
「遅いですね。」

「そうなるよね。」

「分かってたんですか?」

「俺、ベテランだもん。」

なじみのホテルのメニュー撮り。撮影台の上には何も乗っていない角皿が鎮座している。実際に使用されるのと同じ皿を置いて構図とライティングを決め、料理が来たら、空の皿と料理の乗った皿を取り替え撮影開始である。

準備は終わった。あとは料理だ。アシスタントのミッチーと一皿目を待つ。予定の時間を

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フィルモア通信 New York No17     流れる水

フィルモア通信 New York No17     流れる水

流れる水

 天ぷらの修業のつぎは鰻の捌きを覚えようと思い立ち、中央市場の老舗の川魚店に見習いに行くことにした。
朝四時からその捌きは始まり、六時には終わるのでそれから仕事に行くことになった。その川魚店には鰻捌きの名人と言われる人がいて、多くの京都の料理屋がその名人の捌いた鰻を仕入れに来ていた。

 名人は初老の痩せた男で、子供の頃からこの道一筋らしく、まな板の位置と右手の包丁使いの動きに合わせ

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フィルモア通信 New York No6  アメリカの夜 

フィルモア通信 New York No6 アメリカの夜 

 ベトナム戦争時の外交補佐官だったドクター・ヘンリー・キッシンジャー氏のパーティーがあったのは、とても冷える冬の夜だった。
 
 そのパーティーのために作ったラムのローストミント風味、胡瓜と海老のシェリーサラダ、ブルーチーズのスフレなどを次々とダイニングルームへ送り出し、オーブンやスチーマーはうんうん、シューシューと働き、
背の高いシャンパングラスが音をたててキッチンに運び込まれたりするなか、オー

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フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

フィルモア通信 New York Seiji&Huberts going going gone.

セイジ、ニューヨークタイムス、ぼくらの手

 セイジさんは日本の大企業から在米駐在としてニューヨークにやってきた。そして何年か後アメリカ永住権を取得して会社を辞め、四十歳を前にして料理の道に入った。当時アメリカでは最高峰の料理学校、ニューヨークアップステートにあるCULINALY INSTITUTE OF AMERICA 通称CIAは授業料も高く基本的に全寮制なので除隊補助でもないと自力でやるしか

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「あー、これを食べるときが一番幸せ」

「あー、これを食べるときが一番幸せ」

今一番好きな食べ物を聞かれたら、たまご焼きと答える。
それも卵2つに醤油だけで味を付け、少し多いかなと思うくらいの油を熱したところへジュッと一気に入れたら箸で大きく混ぜて、なんとなく形作っただけの適当なのが一番で、自分にとっておいしければそれでいいもの、それが好きな食べ物かなと思う。

これまで直に接した中で最も尊敬する料理人の1人に、料理屋での修行を一度も経験せず、本からの知識と自ら歩いて得た体

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クレイジーソルトから『クレイジー』のみを抽出する

クレイジーソルトから『クレイジー』のみを抽出する

いきなりだが、私は料理ができない。

暇すぎて久々に気持ちを高めて料理をしてみたものがこれだ(もやしとチーズをレンチンしただけ)。

これを料理と言えるのかどうかはわからないが、私はこの程度のもので十分だし、正直料理に時間をかけるのが意味がわからないと思ってしまう側の人間だ。その時間があったら部屋で倒立の練習をしているほうがはるかにマシだ。(かつて兄に料理を振舞ったら「ブタの餌みたい」と言われただ

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トマトで乗り切る、この灼熱地獄

トマトで乗り切る、この灼熱地獄

何年か前、トマトのおかげで乗り切れた夏があったなあ。あまりの暑さに呼吸さえやっとというとき、食欲がなくてもトマトなら食べられた。オリーブオイルと、あったら粉チーズをかける。ほおばると、青臭さはあるけれど、口の中に清涼感が広がる。
火を使わなくて切るだけでいいというのも、夏の天使だ。

トマトの名前を始めて意識したのは桃太郎。それまでトマトはトマトだった。その桃太郎がずっしりしていて甘かった。

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今度は鹿の「脳みそ」を食べてみた

今度は鹿の「脳みそ」を食べてみた

さて、前の記事で「鹿の解体」を体験した私ですが

今度は鹿の「脳みそ」を調理して食べました。

前回の記事で、鹿の解体体験がきっかけで「鹿肉の流通」をテーマに卒論を書いたと触れましたが、その調査中に鹿の脳みそをいただきまして。そのときのお話しです。

※この記事には脳みその画像が出てきます!苦手な方はご注意ください※

1.鹿の脳みそをもらっちゃった!卒業論文の最後の調査先にて。猟師さんに「シカの

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ポテトサラダ事件、冷凍餃子事件についての私の見解を、暇なら聞いてくれ。忙しいならスルーしてくれ。

スーパーの惣菜でポテトサラダを買おうとしている女性に「そのくらい作ったらどうだ?」的なことを言った人がいるそうだ。冷凍餃子を出され、喜んでいる子どもに「手抜きだよ、これは冷凍っていうんだ」とか言った夫がいるそうだ。

このことに対して、色々と火花が散っているらしいですな。

よし、エロい人代表として、俺の見解を述べよう。。。

まず、「作れ」やら「手抜き」やら、そういったことは各人の価値観なので、

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