マスダヒロシ

フォトグラファー。右投右打。素敵な人たちを撮って生活しています。 インスタはこちら。…

マスダヒロシ

フォトグラファー。右投右打。素敵な人たちを撮って生活しています。 インスタはこちら。 https://www.instagram.com/masudahiroshi/ ツイッターはこちら。 http://twitter.com/masuda_h

最近の記事

僕を見送るタイタニック

劇場で『タイタニック』を観た。感じるところがあったので少し書く。 とはいえ映画評の類では無い。その手の優れた文章は既にたくさんあるので回れ右してそちらを読んでください。そもそもこの文章には映画自体の話はほとんど出てこない。ノスタルジーやルサンチマンがぐずぐずあふれ出るだけの独り語りに過ぎない。 『タイタニック』が最初に日本で一般公開されたのは1997年12月20日。同じ年、同じ月の1日に僕はスタジオに就職した。スタジオというのは博多区の巨大商業施設にある外資系ホテルの写真

    • レッド、謝礼はいいものだよ

      専門学校で講演をした。 僕は写真家なので専門は写真撮影になるのだがその学校は写真とは一切関係無くて毎回なぜ僕なのだろうと訝しみながらも謝礼につられて依頼を受けている。 年若い学生たちにとって華も知名度も無く専門分野も違う僕はまったくもって興味の対象外のはずである。まずは学生達に「こいつの話を聞いてやろう」と思ってもらわないことには互いの時間が無駄になるだけなので、話を聞く価値がある何者かのふりをしなければならない。ラップトップと連動した教室前方のスクリーンに自己紹介兼ねて僕

      • 先日、櫛田神社の木の上でこの子がじたばたしてたので降ろしてやって束の間遊んだんだけど、それ以降、撮影依頼が引っ切り無しに来るようになった。化身?

        • 前撮りでにらみ利かせてた花嫁のパパ、久々に会ったら初孫かかえて目尻さがってた。めでたいな。 ※左が五年前の前撮り  右が昨日の宮参り

        僕を見送るタイタニック

        • レッド、謝礼はいいものだよ

        • 先日、櫛田神社の木の上でこの子がじたばたしてたので降ろしてやって束の間遊んだんだけど、それ以降、撮影依頼が引っ切り無しに来るようになった。化身?

        • 前撮りでにらみ利かせてた花嫁のパパ、久々に会ったら初孫かかえて目尻さがってた。めでたいな。 ※左が五年前の前撮り  右が昨日の宮参り

          ワイルドスピードを観てくれない人

          表題のとおり。 映画「ワイルドスピード」を観てくれない人がいる。その人は、僕の大切な「ワイスピ」に興味を示してくれないのです。 ちょくちょく映画の話をするお友達がいて、お互いが観た映画や興味を持っている作品の話をしては楽しませてもらっている。そうした場だと当然の流れとしてこれ観た?どれ観る?あれまだ観てない?観たほうがいいよ、なんて話題が出るのだけれど、僕が「ワイルドスピード」の話を持ち出したときの彼女の気の無さったら目をみはるばかりだった。「あー見ないっすね!」の一言だっ

          ワイルドスピードを観てくれない人

          きらきら金曜日

          「あっという間に週末が来るね。」 そう言ってベランダに向かった妻の背中に僕は気の無い相槌を打ち、皿の上のマドレーヌをつまんだ。チョコマドレーヌと名乗るわりには申し訳程度のチョコチップしか見当たらない。手早く洗濯物を取り込んだ妻は、組んだ両手を高く上げ、軽く背すじを伸ばしながら「キンタマキラキラ金曜日」とつぶやいた。 待て待て。アンニュイな顔して何てこと言うのさ。なんのつもりだ? 「キンタマキラキラ金曜日よ。知らんの?」 知らんし。 ネット上、と言うかツイッター上かな

          きらきら金曜日

          いつか『本当に』結婚出来る日まで

          ついつい「新郎新婦」って呼びそうになる。もう口癖になってんだろうな。気をつけなきゃ。 本番前の披露宴会場で自分に言い聞かせる。その日、撮影に入った結婚式には「新婦」がいない。 だから間違えちゃいけない。 新郎新婦って言わないようにな。 でも気をつけるのはそれくらいだ。 新郎が新郎と結婚するだけの話だ。 特別なことは何もない。 そう思っていた。 今、考えるとやはりそれは間違いだ。 ◇ 若い頃、3年程フランスに住んでいた。御多分にもれず始めのうちは友人も出来なかった

          いつか『本当に』結婚出来る日まで

          B'zでゲンを担いだ夜。長渕でUターンした明け方。

          世の中に B'z を好む人がたくさんいることは知っていた。日本を代表するヒットメーカーである彼らにファンが多いのは当たり前で今さら驚くことでも無いのだが、B'z のサブスク解禁をにぎやかに歓迎するタイムラインを見るにつけ、改めて彼らの人気を思い知った。すごいよね。  アーティストへの思い入れにおいて肝になるのは 「必要な瞬間があったか否か」かもしれない。もちろん「好きか嫌いか」は感覚的で分かりやすいが、それと同じかそれ以上に「必要な瞬間があったか否か」は大きな意味を持つ。

          B'zでゲンを担いだ夜。長渕でUターンした明け方。

          雲の向こうにスタアを送る

          仕事でミスをした話をします。恥を忍んで。 今の時代、撮影データの納品はクラウド上で行われる。出来上がったらクライアントにダウンロードアドレスを送り、先方はデータをチェック後、確認メールをくれる。「納品おつかれさまでした!」とか「確認しました」とかそんな件名のメール。それが普段の流れ。 この確認メールを開く時って、やはり少しだけ緊張する。 なにも問題無かったか、気に入って頂けたか、そんな不安がメールを開封する瞬間に頭をスッとよぎる。この仕事を始めて長いが、いまだに毎回よぎ

          雲の向こうにスタアを送る

          そういう人とは働かなくていいですよ

          今から若干ドヤ顔風味で書きますけどドヤ顔のくせに至極当たり前のことしか書かないんで謝っときますね。ごめんよ。 丸23年自営業やってきました。この5月から24年目です。まあまあ長くやってきたフリーランス生活を振り返って改めて思うのですが、人を無料で使おうとする人に誠意や善意で相対しても、こちらが望む結果にはなりませんね。そもそも相手の誠意を感じとれる人なら最初から他人を無料で使おうなんて発想は持ちません。誠意や善意で動くのにもエネルギーが必要じゃないですか。あなたのその労力は

          そういう人とは働かなくていいですよ

          燃え殻がいいよと息子は言った

          妻に何か買って帰ろうと未来屋書店をぶらついていた。彼女が新作を読みたいと言っていたカズオ・イシグロの単行本を手に取る。しかし今の妻にこの分量の小説を読む時間が捻出できるのだろうか。逡巡している僕の目に入ってきたのはさくらももこの昔のエッセイ本。ひとつの話が数ページで読み終わるエッセイ集の方が現実的かも。さくらももことカズオ・イシグロを手に取り考えこむ僕の背後に長男がピタリと貼りついていたようだ。気づいていなかったので「ようだ」としか言えないが。 ママの本を探してくるからここ

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          リモート写真講座で勝手に転倒する俺

          水前寺さんから連絡がきた。 水前寺さんは元・取引先の人で、そう書くと僕が取引先に首切られたみたいにも読めるのでつくづく文章は難しいのだが、彼女の職場が変わっただけで僕の首は今のところ繋がっているのでこうしてブログなんか書いているよ。よかった。 水前寺さんはラグドールみたいな顔をした瞳の茶色い色素の薄い美しい人で抜群にお洒落で抜群に気どりがなくてその上抜群に頭の回転も速くてこれはもう言う事なしの抜群なので当然の如く僕は大好きだった。しかし転職後は会う機会も減り、この御時勢で

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          試着室に住まう

          試着室から一度も出ることなく残りの人生を過ごす。自分がそんな選択をするとは思ってもいなかった。 この試着室には天井まで届く背の高い鏡とローチェストがある。チェストの引き出しは六本。人ひとりが暮らすには充分事足りる。チェストに何を入れるかを考えるのは悩ましくも楽しいし、鏡があれば寂しくも無いだろうし。 家具より重要なものと言えばが言わずもがなだが壁紙だ。壁紙にはそれなりに詳しいので触れて確かめることにする。指四本だ。親指以外の左手四指で均等に触るのが好ましい。手のひらまで触

          試着室に住まう

          僕がヒトであるために

          修業時代、仕事場にはパワハラモラハラその他もろもろ多種多彩なハラハラが満ちあふれていた。手も足も言葉も飛んでくる、それはそれは華やかなハラスメントの見本市であった。 スタジオ内で一番社歴が浅い上に落ちこぼれだった僕は的(まと)にするには最適だったようで、毎日、罵詈雑言をぶつけられていた。そんな悪口の中でも一際忘れられない言葉がある。先輩女性事務員から頂いた珠玉のフレーズ。 「あんたの彼女ってあんたのどこがよくて付き合ってんの?なんの取り柄も無い役立たずなのに。彼女馬鹿でし

          僕がヒトであるために

          屋上 喫煙所 挙式前 花嫁の父 独りたたずむ

          屋上 喫煙所 挙式前 花嫁の父 独りたたずむ

          四月の魚に揺らぐ横顔

          「丹波哲郎がシュウチョウの役やってんの。シュウチョウってインディアンの酋長とかのシュウチョウね。丹波哲郎が南の島の酋長なんだよ。あなたなら面白いよ。気に入るよ。」 そう言ってころころと笑う国分は、白くて細い体と美しい横顔の持ち主で、それだけでも喜ばしいのに、よりによって短髪だった。国分は他所の大学の院生で、僕は白くて細くて短髪の美人が好みの学生だった。 お互いの家に泊まりあうようになって数か月が経ったある日、急にバイトのシフトが変更になった国分は予定より早く僕のアパートを

          四月の魚に揺らぐ横顔