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雲の向こうにスタアを送る


仕事でミスをした話をします。恥を忍んで。


今の時代、撮影データの納品はクラウド上で行われる。出来上がったらクライアントにダウンロードアドレスを送り、先方はデータをチェック後、確認メールをくれる。「納品おつかれさまでした!」とか「確認しました」とかそんな件名のメール。それが普段の流れ。


この確認メールを開く時って、やはり少しだけ緊張する。


なにも問題無かったか、気に入って頂けたか、そんな不安がメールを開封する瞬間に頭をスッとよぎる。この仕事を始めて長いが、いまだに毎回よぎる。よぎるなあ。ある意味これもルーティンなんだろうね。


長年ビビりながらメールを受け取ってきた結果、開いた瞬間に「型どおりの確認メールか否か」が分かるようになった。それがクレームかお叱りか、はたまた賞賛か、さすがにそこはしっかり読まなきゃ分からんけれども「型どおりか否か」は開いた瞬間にすぐ分かる。別に超能力じみた話では無くて、読むとは無しに無意識なまま読んでいるのかもしれないね。「納期が」「素敵な」「留意の上」「また是非」「改善」「契約上」みたいな象徴的な単語を。


今朝がたクライアントから届いたのもそんな納品確認メールだった。件名は「Re: 5/18納品分です」。一昨日納品したデータに関しての返信である。メールを開く。


いつもどおりスッとよぎった不安が確信に変わった。このメールは「型どおり」では無い。強烈に違和感のある単語が頭に飛びこんできた。モニターの前でフゥと息を吐く。



「...確認しました..........早々にご対応いただき.......。全く問題ございません。早速........頂きます。引き続き......。



写真の出来自体に問題は無かったようだが、正直、それは始めから分かっていた。あがりには自信があったんだ。僕が気になった箇所はそこでは無い。



「........ところで一点、ご確認させて頂きたいのですが、頂戴した納品画像フォルダの最後に...」



あのタイミングだな。あそこで間違ったんだな。



「...納品画像フォルダの最後に田村正和さんの画像が2枚ございました。」







田村正和は大好きなスタアだ。



彼の訃報にショックを受けた僕はGoogle画像検索で正和めぐりをした。感傷に浸りつつ気に入った画像を保存していたのだが、正和めぐりの直前まで納品画像の書き出し保存をしていた流れで、正和画像のダウンロード先を「5/18分納品フォルダ」のまま変更していなかったらしい。らしいも何も先方に送ったフォルダに正和が混ざってんだから間違いなく僕の落ち度だ。気づいて無かった。なんてことだ。




「...田村正和さんの画像が2枚ございました。こちらマスダさんの私物で間違いなかったでしょうか?問題無ければ私の方で削除しておきますね(笑)」





はい。間違いなかったです削除しといてください。私物て。



メール開いた瞬間、飛びこんで来たんだよな。「田村正和」ってシンボリックな固有名詞が。大慌てで納品画像フォルダ(正和抜き)をクラウドに再アップし、謝罪のメールを送った。こんなやらかしは久々だ。メールの相手がプライベートでも飲みに行くツーカーの仕事仲間で助かった。「ブログのネタが出来ましたねw」とフォローしてくれる人で本当に良かった。いや、良くは無いんだけれども。



皆さんも取引先にファイルを送る際は気をつけた方がよい。一度、送信したものは決して取り消せないんだぞ。知らぬうちに田村正和が紛れるやもしれぬネットワークの世界に僕らは生きているのだ。俺は何を言ってるんだ。



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