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日常の絶え間ない忘却へのささやかな抵抗
普段は開けない戸棚の奥底には、中学生の頃に書いた読書感想文の原稿がしまわれていた。色褪せた応募票の題名の欄には、『記憶には残らないもの』と書かれている。上記の文章はその冒頭の部分である。
幼い頃、記憶を失うこと、忘れてしまうことへの恐怖心が強かった。幸福な記憶は長くは続かず、つらい記憶は歪められて変質し、生々しい感情は時間というヴェールに包まれて薄く淡くなっていき、やがて消えていく。そのことが
過去の自分は、いまの私の所有物ではない|物語化する/される私たち#2
「人生は物語のようなものだ。重要なのはどんなに長いかということではなく、どんなに良いかということだ。」というセネカの言葉にあるように、私たちはしばしば自分の人生を物語やストーリーという枠組みの中で捉える。
前回の記事に続き、今回は、私たちが自らの人生を物語化(ストーリー化)することによる弊害について、最果タヒの著作『十代に共感する奴は皆嘘つき』や過去の不登校児のインタビューを交えながら書いて