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ひみの連載ストーリー
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2022年2月の記事一覧

第210話 暗闇キャンドルナイト(前編)

第210話 暗闇キャンドルナイト(前編)

 スサナル先生のエゴセルフから、徐々にこんな弱気が漏れてくるようになった。

「あなたに聞くのが怖かったことがある。
あなたにとっての僕が、大切なものじゃなかったらどうしようって思ってた。」

 大切なものはあなただよ。漆黒の中でも吹雪の中でもちゃんとあなた見えるように、そのために私を光らせてきたんだよ。

 すると彼が安堵して、緊張がほぐれて徐々に降伏してきているのが伝わった。

「僕のこと、置

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第209話 有限なる無限、夢幻なる幽玄

第209話 有限なる無限、夢幻なる幽玄

 いつからかお馴染みとなった道を走っている。
夏休みを迎えていたその日、鎌倉市内は以前のような鎌倉らしさ……観光地としての渋滞があちらこちらに見受けられ、なかなか車が動かなかった。その道すがら、助手席からのこんな言葉を耳にした。

「なんかこの前くらいからさぁ、私の脳天から体の中に向かって、自分じゃ抜けない剣が入ってるっぽいんだよね。
これ、いつの間に埋め込まれたんだろう……。」

「あ、そうなの

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第208話 プレアデスの性と子宮に棲む龍

第208話 プレアデスの性と子宮に棲む龍

 『たった一人の女性に巡り会えない男性の魂の悲しみが、時間と共に男性器を肉体のみの快楽の道具にしてしまった……。』

 本来男性の肉体とは、その魂全部の愛を、たった一人の真実の女性に注ぐためのものであった。宇宙でたった一人だけに捧ぐ純粋な『愛』のためのもの。

 ところが肝心のその女性とは長い輪廻の歯車の中で、今まで巡り合うことが決してなかった。その悲しみは悲痛さを増し、その一人の人を探し回ってい

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第207話 波打ち際の人魚の夢

第207話 波打ち際の人魚の夢

 次に訪れるべき神社の名前が判明すると、全てが恐怖に支配された。浄化も排出も間に合わないほど大量の闇が押し寄せたことで、一瞬で頭蓋骨の中が膨れ上がってパンパンになった。

 それはまだ、六月の上旬のある日のこと。けーこと共に、川崎市にある川崎大師に空海さんを訪ねていた。
 その帰り道、駐車場からほんのニ、三分の場所を通過した時に、男性器が描かれたピンクの幟(のぼり)を発見するとほんの一瞬ギョッとす

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第206話 スパイラルの光線を紡ぎ、その菩提樹を冠に

第206話 スパイラルの光線を紡ぎ、その菩提樹を冠に

 ハイヤーセルフ以上、オーバーセルフ未満のあたりの螺旋のどこかに繋がっている。

 自分の意識レベルが上がると私自身がハイヤーマインドになってくる。すると当然徐々に意識は拡大し、以前はアクセス不可能だった自分自身の更なる上の領域が次の教師となってくれる。
 これはその、スサナル先生の意識領域と会話をしていた時の話。

 故に今日は是非とも、あなた自身のハイヤーセルフに繋がりながら、通訳に入ってもら

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第205話 笹の葉さらさら天の川さらさら

第205話 笹の葉さらさら天の川さらさら

 駅の構内を一旦出ると、自動販売機を探す。

「カフェっぽいのならあるけどどうする?ペットボトルは売ってないかな。」

 何歩か進んで目を凝らすと、やっぱり駅に戻ろうと降りてきたばかりの階段を上がる。
 コンビニで塩分入りのジュースを買うと、開封しながら汗を拭いた。

「なんかうちら、軽く呆れられてるんだけど酷くない?『お前らさっきからウロウロウロウロ、なーにやってんだー』だって。」と、まだ鳥居を

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第204話 妙なる力は何見て笑う

第204話 妙なる力は何見て笑う

「ひみちゃーん。
千葉県気にならん?まだ二人で行ったことない場所。」

 こういう時の行き先探しの役割は、どういうわけか丸々けーこに降りてくる。私が目的地を拾うことは殆ど無く、是非の『非』となった場合のみ、「違う。」と口にすることになる。

 千葉市にある、妙見(みょうけん)本宮千葉神社。リンクされてきたホームページを見ると、うっかり少しニヤついてしまった。ご祭神となる北辰妙見はその司る方位から、

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番外編 あきらとけーこ

番外編 あきらとけーこ

 それは、あきらがまだ小学生だった頃の話。

 小児病棟でのスマホや携帯の扱いには、細かいルールが定められていた。Wi-Fiは無く、それでも面会中の私のスマホを使ってのオンラインゲームや動画視聴は時間によって可能だったり、家にいる時、キッズ携帯から私宛てのメールが届くこともあった。
 ベッド上での生活を続けてきたあきらが、車椅子で病棟の外へと移動できるようになったのは、入院してから半年後。ようやく

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第203話 三艘目の船員から始まる世には出ない(であろう)外伝の序章

第203話 三艘目の船員から始まる世には出ない(であろう)外伝の序章

 あきらの心に青い滲み(にじみ)が広がっていく。
母である私が、けーこやタケくん、それから宇宙子さんといったシリウスのソウルファミリーと次々再会していくのを目の当たりにすると、あの子の心の内側から、普通にしているつもりでも誤魔化しきれない疎外感が溢れてきているのがわかった。

 夕飯後、そんな闇の存在がじわじわ出てきているのを確認すると、「お風呂を終わらせたら、あきらと少し話をしよう」と考える。

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第202話 亜空間デート

第202話 亜空間デート

 一体いつからだろう。
確か初めて連れていってもらったのは、まだここに引っ越してきたばかりの頃だったと思う。その時既にけーこに出会っていたかどうかも、今となってははっきりしない。

 あきらの幼稚園が半日でお迎えになると、帰宅するなり強い眠気に襲われて、どうしようもなくて昼寝をとった。

 高い壁に沿ってミカエルと共に上昇していくと、彼は必ず一番最後、私の両腰の部分を持って優しく“そこ”に座らせて

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第201話 そらのいろ

第201話 そらのいろ

 羽田空港神社から、meetooという船の女神に男性神をお迎えした。
 太陽が一番長く伸びる夏至の中、やって来てくれた空の船の男神もまた太陽のような人だった。

……

 あれからも、私とけーこは週にニ、三か所という驚異的なペースで神社仏閣などに出かけ、様々な事を吸収していった。

 昔は自殺の名所だったという川を見下ろす弁財天からは、生者にとっての目線では決して得られない視点をいただく。
「せめ

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第2💍💍話 約束の指輪

第2💍💍話 約束の指輪

「きっと僕のことなんてすっかり忘れちゃったかな。あの時置き去りにしたこと、怒ってるんだろうな……。」

 ヤマタ先生から“命そのもの”である性を取り返したことにより、スサナル先生の“顕在意識に近い部分”がようやく私の存在を思い出し始まった。それまで私の魂を覆い隠していた憑依が外れてきたことで、吹雪を彷徨う彼の視界に私という灯台の明かりが薄っすらと届き始めていた。

 根気よく繰り返し、「大丈夫だよ

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第199話 想い合う。支え合う。

第199話 想い合う。支え合う。

 その宇宙子さんとのセッション終盤、そろそろエネルギーを閉じようかと意識をこちらに戻す準備を始めた時に、家の電話が鳴り響いた。

 あっ、なんか電話来ちゃった。どうしよう……。

 ところが一瞬だけ狼狽えるも、お知らせのように2コールだけ鳴ると音はすぐに切れてしまった。そしてその瞬間に気がついた。

 そうか、この人だったのか……。

……

 いつからか、家に一人か、あるいはリビングに一人の時だ

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第198話 性を奪還せよ

第198話 性を奪還せよ

 次の宇宙子さんとのセッションでは、再び表面までたくさん浮上してきた義行と、一度はゆっくり蓋をした、その母であった過去世を視ていくことになった。

 初めて親子と分かった時には幼児だった義行は、先日少しだけ成長した姿で現れた。それが今日のセッションで視えた“今生の別れのシーン”では、六、七歳の年齢は殆どそのままに、カーキの上下に身を包んだ坊主頭の姿となっていた。
 太平洋戦争は、その終盤の局面へと

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