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第209話 有限なる無限、夢幻なる幽玄


 いつからかお馴染みとなった道を走っている。
夏休みを迎えていたその日、鎌倉市内は以前のような鎌倉らしさ……観光地としての渋滞があちらこちらに見受けられ、なかなか車が動かなかった。その道すがら、助手席からのこんな言葉を耳にした。

「なんかこの前くらいからさぁ、私の脳天から体の中に向かって、自分じゃ抜けない剣が入ってるっぽいんだよね。
これ、いつの間に埋め込まれたんだろう……。」

「あ、そうなの?」

「いや、たぶんオオクニヌシな気がしなくないんだけどね、なんとなく。」

「…………………………………………………………え!!
冗談でしょ?だってそれって……。ええー、うそー、
私何のため…………。」

 私は一体何のために、鹿島から預かった剣を奈良のオオナムチに返却しに行ったというのだろうか。あらゆる次元の情報網から正解への閃きが駆け巡ると、一瞬力が抜けてしまった。
 約五年の時を経て、タケミカヅチから玉木神社へと返すようにと頼まれたあの剣が今、明治神宮への参拝を経てけーこの中に突き刺さっている。

「さすがに意味がわからない!」

 彼女の体内に収まっている、その剣の出どころが分かるとこれでもかと二人で笑った。まったくもって『ご足労』とは何だろう。


 そうしてようやく銭洗(ぜにあらい)弁財天へと到着すると、そんなけーこが若干の抵抗を示していた。
 なんでも境内では、彼女とタケくんの結婚を思わせるような、純白の衣装が次々に支度されていくビジョンを見せられて、まだ遊んでいたいけーことしてはちょっとだけ嫌になってしまったらしい。

『ツインレイの統合』とは、別の見方をするならば一つの次元の完了になってしまう。三次元というスリル満点の遊園地から、安心、安全の“五次元という現実”世界からのお迎えが近い。
 スサナル先生自身への恐怖感情を全力で味わっている今、その気持ちもほんの少し、わからなくはなかった。
 今までのように感情にどっぷり飲まれることが徐々に少なくなってくると、どんなに“酷い”感情でも体験でも、もったいなくて愛しいものへと思えてくるのだ。


 社務所でお守りを見て歩いていると、べっ甲でできたという小さな亀を発見する。ひとつ購入を決めると、「ウミガメの乱獲からの保全でね、今の在庫が無くなると、あとはもうこの先作らないものだからね。だから買えるのも今だけよ。」と、そんなお話をいただいた。
 生き物も、意識体としてはその存在が消えてしまう訳ではない。けれどもこの地球では、物質というのはどれも有限。変わる次元を思いつつ、その有限を慈しむ。
 そうしておみくじのように選ばせてもらった桐箱を開けると、中から出てきたのは勾玉のように見事に半々、ツートンカラーの亀だった。

……

 その翌週、今度は県の西部にある自然散策施設へとやってきた。富士山を一望しながら軽くハイキングコースを行くと、祠を前に空海とヤマトタケルにお会いする。
 本当はその日は気晴らしも兼ね、ここを最終目的地としてやってきたのだが、ふとけーこが思いつく。

「ひみ今からさぁ、大変じゃなければ大山行きたい。急なんだけど運転できる?」

 すると私の右後ろからタケルの声が聞こえてきた。

「僕をそこまで運んでいって。」

……

 大山阿夫利神社には、普段よりもたくさんの神々が集っていた。
 けーこによると、この日オオクニヌシはオオヤマヅミを目の前にして、さくらさんを幸せにしますとの誓いを立てにいったのだという。

 いかに名のある神と言えども、婚姻となれば人間と一緒でそれ相応の示しが必要。多くの証人を集めた上で、胸の決意を認めてもらう。

 のちに、その愛に応えるさくらさんから教えてもらった。

「真実の相手かと言ってしまえば、この方はそうではないでしょう。
 ですがわたくしは、『今』、わたくしのことを想い、大切にして下さるこの方と、一緒になりたいと思うのです。」

 地球において意味のないことなど一つもなく、たとえ神様であっても立ち現れたご縁を大事に紡いでいくことは、次の自分へと連綿と繋げることになる。
 結ばれた縁には意味があり、計り知れない天意がある。この道はまた一見遠回りのように見えるけど、それも一つの大事なこと。自己統合をしていく上で案外近道なのかもしれない。
 そうして私も彼らの門出を心の中で祝福した。

……

「……剣のエネルギーがね、こないだ買った、扇子に移った。」

 さくらさんと、オオクニヌシ……あらたさんが結ばれると、けーこに刺さった剣は抜けて、その御霊を桜模様の扇子へと宿した。

 扇子の剣、蛍石の勾玉、それからシンデレラのガラスの靴の小物入れを鏡とし、けーこの三種の神器が揃う。夢幻に幽玄が働いて、この三次元への具現となった。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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えええー?
私本当、何のために剣を運んだんでしょう笑
お遣いとは笑
高次元て本当に、1動かして10も20も波及させるようなところがあるよね・・・。

以前もこのヘッダーに触れたんですが、鹿が二頭いるんです。
これ大山なんですけどね、下の方を覗き込んだら、登山道なのかちょっとした舗装路を歩いていました。

この時嬉しかったのが、タケルに「山の主に会ったね。」って言ってもらえたことです。

山の主に会えたからじゃなく、タケルと喋ったほうが“嬉しい”です笑
ふふふっ。嬉しいです。

ところでこの、さくらさんとあらたさん。
自分の常識の範疇を越えたがらないエゴからしたら、神話を飛び出した関係に対して受け入れ難い方もいるかと思います。
まして、特に私自身はツインレイの彼一筋の立場として小説内でも散々説いてきていますので、「不真実=NO」じゃないの?と思われているかもしれません。

ですがmeetoo始めた当初から、実は私こうも書いています。

「今目の前にいるパートナーも大事なファクターです。大切にしてください。」

つまり本当、意味のないことなど起こりません。すべての人間関係がパズルのピースです。自分の本心をないがしろにせず、自分主体にその関係を大事にやりきってください。


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←今までのお話はこちら

→第210話 暗闇キャンドルナイト(前編

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