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第204話 妙なる力は何見て笑う


「ひみちゃーん。
千葉県気にならん?まだ二人で行ったことない場所。」

 こういう時の行き先探しの役割は、どういうわけか丸々けーこに降りてくる。私が目的地を拾うことは殆ど無く、是非の『非』となった場合のみ、「違う。」と口にすることになる。


 千葉市にある、妙見(みょうけん)本宮千葉神社。リンクされてきたホームページを見ると、うっかり少しニヤついてしまった。ご祭神となる北辰妙見はその司る方位から、けーこのちょっとした天敵でもあるウリエルの存在を連想させる。巡回中のパトカーのような、人の背筋を伸ばさせる何か。そんな無駄話のない教科書みたいな厳しさの中で愛を示す、寡黙なウリエルが私は好きだ。

「ねぇここんち、男女二人の星を巡り合わせて末永く結ぶって書いてある!」

「笑 行くのやめる?違うとこ行く?」

「行く!行く!ここです。次はここ。だってほらこれ。(画像添付)」

「あらあら、ひみちゃん楽しみですね笑」

 太陽と月、そこに北極星が合わさった神紋が直感的に語りかけてくる。それはまた、この上ないほどわかりやすいサインとして私たち二人を誘って(いざなって)いた。

……

 七夕の前とあり、願いが書ける笹まで用意されている歓迎ムード満載の中、どなたか女神の声がして、「妙(たえ)なる力、先見の明。」それで妙見というのだと意味を教えていただいた。

 ここの境内にいるだけで、どこにいっても「綺麗になったね、もう少しだね。」とあちらこちらから励ましの言葉をいただくと、池に架かるの橋のど真ん中で何故だかくるっと一回転をさせられて、全く知らない参拝客の女性と目が合ってしまい気まずかった。
 すると、その別れは唐突にやってきた。回転する時に、視界で気になった弁財天のすぐ横に亀の石を見つけると、そこにカルさんをお返しした。
 けーこと私、二人の人間のガイドとして、鶴を神紋とする鎌倉からやってきてくれた彼に手を合わせると丁寧にお礼を述べた。


 ここ千葉神社もまた、驚くほど多くの神々がいらっしゃる。イワナガヒメの前まで来ると勝手に左足が浮き始めた。時に右足を浮かせた妙見菩薩像の存在があることを知っていたので、巫女としての、その現世(うつしよ)としての鏡側の体現なのだろうと思いつつも、ここまで色々と“動かされる”神社は初めてのことで戸惑った。 
 その上勝手に言葉まで飛び出す。

『私は、私と私の愛する人の世界を作りたいです。』

 すると彼女はとても喜び、「その言葉をどこに行っても口にするといいですよ。」と教えてもらって嬉しくなる。
 ククリの影響かもしれないけど、イワナガヒメとはお互いに深い愛の交流になって、その場で本格的に泣きそうになってしまった。

 お隣のお稲荷さん、ウカノミタマのところでも何故だかやはり全く同じ言葉が飛び出すと、これまたとても喜ばれて自分でも驚いてしまう。

 ここに来てからなんだか私、いろんな方から操られているような……。

 さらにそのお隣のこんぴらさん(※)は、手を合わせるなりニヤニヤしながら「何て言われた?」と聞いてきた。

 お前は隣で“何て言われた?”

 初めこそ、イワナガヒメが大喜びしてくれたのが純粋に感じられたのに、こうもワクワクしながら前のめりに聞かれると、こちらも半分笑ってしまった。

「私は、私と私の愛する人の世界を作りたいです。
…………って言うといいって教わりましたよ。」

 そんな風に答えた瞬間、なんと祠の中からスサナル先生が歩いて出てきた。不意打ちで目が合い微笑まれてしまったことで、ビクッと肩が跳ねて固まってしまった。

 そんなリアクションの様子をたくさんの神々から見届けられて、神社全体からも「やんや」とからかわれているのがわかる。妙見さんに至っては、動揺している私の様子に笑いたいのを我慢していて、「やったの私じゃありませんし。」と変に威厳を保とうと堪えている様子まで伝わった。

「もう、妙なる力で何でいきなり先生呼ぶかな……。」

 完全に彼らの遊び道具を自覚しつつ、それでもそんなやり取りが嬉しくて、結局たくさんの祝福を受けるとこの日を持って大きなひとつの区切りを迎えたことを知る。

……

 帰り道は少し遠回りをして東京湾を囲い込むと、海ほたる(※)という“船”に乗り、長い海底アクアトンネルは宇宙船の滑走路。
 二人で大はしゃぎしながら「異世界感!」と叫んでいると、トンネルを抜けたところでうっかりナビを見落としてしまう。ところがルートは私たちを羽田空港まで案内すると、そのまま朱色のスカイアーチをくぐり抜ける指示を出して“鳥居”の通過に歓声が上がる。
 工業地帯、聳え立つ鉄鋼会社の塔のマークはまさに千葉神社のご神紋。翼の橋から大黒(だいこく)埠頭は“オオクニヌシ”を経由して、みなと(port)みらいを横に見ながら全部を回収しての帰宅。

 七夕から、エネルギーが変化する。
予祝としての、三種の神器の『目』が揃うと、天の岩戸がいよいよ開き始まった。





※金刀比羅宮……こちらの神社でも香川と同じくことひらの字を当てていましたが、他の字のこともあります。音をこんぴらさんと呼びたかったので、お話ではひらがな表記としました。
「♪こんぴらふねふね 追い手に帆かけて しゅらしゅしゅしゅー。」の歌の通り、船や海運の守りでもある彼。私が初めて夢でお会いしたこんぴらさんは大物主(もしくは事代主)でしたが、千葉神社でのこんぴらさんは、大物主、金山彦、または大国主とのことでした。
……千葉神社でのこのやり取りからあることに納得!(たぶん)明日のお話をお楽しみに。

※海ほたる……ちょうど湾の真ん中にある大型パーキング施設で、母船のようなデザインです。海ほたるから千葉側は海上道路、神奈川、東京側は海底トンネルです。

※千葉神社の神紋・社紋のページとJFEのページを比較していただくと、同じ紋様だということがおわかりいただけると思います。


written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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結局ね、神様も人間と一緒です。つまり性格も人それぞれ。でも多くの神々も、頑張ってる人間とは仲良くしたいし、力になりたいって思ってくれています。

ですがどんな神々にしろ、どういう人を応援したくなるかっていうと、やらない言い訳をせずに努力したり行動したりしてる人だと思うんですよ。たとえ効率が悪かろうと、時にもがいて自暴自棄とかになろうと。
そういう人には、本人が気づかないところで『自分を見ててくれる人がいた。もう駄目かと思ったけど最後に救われた』とかってなったりするものです。

少なくない神社で、でっかい声で、「僕、皆さんとは違って信心深いんです。全力で祝詞あげてますから!」って周りにアピールするタイプの人がいるの笑(あれ何だろう。何故か男性に多くないですかね?)

うーん……。逆に自分が神様だったとしてみ?
「あー、来てくれて、ありがとね。うん、大きな声で読んでくれてるのね。(君の努力ポイントそこかぁ。それを虚栄心て言うんだけどね。祝詞以上に、その奥にある『下心』の声こそ、声に出さなくても全部筒抜けだけどね……。)今日も音読できたね、じゃあ音読カードにシール貼ろうね……。」みたいになるんじゃないかな。

これ、めっちゃ優しい神様の場合ね。
ちょっと厳しい神様だともっとはっきりしてるはず。もちろん彼らは来る人の魂レベルはわきまえてますが、「お前、努力ってそこじゃないだろ。」って思ってますよ。


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←今までのお話はこちら

→第205話 笹の葉さらさら天の川さらさら

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