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2024年1月の記事一覧
『好色濡れ専男の走馬灯』
身寄りもおらず
痔瓶は独り床に伏していた
弱り切った脳味噌と
元来モノゴトに執着しない性分から
本名さえ忘れかけているところ
民生委員の柿田さんの呼びかけで
ああ自分のことかと思い出す始末
「鈴木さぁん鈴木二郎さぁんお食事ですよ」
まさか柿田さんにまで
痔瓶と呼ばせるのは
なんとも忍びない
そのくらいの分別はまだ
失っていなかった
--
あれは遡ること六十余年
中学を
身寄りもおらず
痔瓶は独り床に伏していた
弱り切った脳味噌と
元来モノゴトに執着しない性分から
本名さえ忘れかけているところ
民生委員の柿田さんの呼びかけで
ああ自分のことかと思い出す始末
「鈴木さぁん鈴木二郎さぁんお食事ですよ」
まさか柿田さんにまで
痔瓶と呼ばせるのは
なんとも忍びない
そのくらいの分別はまだ
失っていなかった
--
あれは遡ること六十余年
中学を