マガジンのカバー画像

路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

62
精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
運営しているクリエイター

#内在性解離

【虐待の後遺症と向き合う】サバイバーの陥るジレンマ

【虐待の後遺症と向き合う】サバイバーの陥るジレンマ

回復の途上。どこかで必ずといって良いほど陥るのではないかと思うジレンマに、よくぶつかる。

果てしない「if」を夢想してしまうこと。

もしも、自分が虐待を受けずに育っていたら?

もしも、あの時あんなことが起こらなかったら?

もしも、違う親に育てられていたら?

もしも、被害が続かなかったら?

もしも、もっと早くに対応できていたら?

もしも、もっと早くに知識を得られていたら……

可能性が

もっとみる
観測者って名乗ろうかな

観測者って名乗ろうかな

ストグラ配信を観るのが最近の楽しみです。

配信を観ると言ってもリアタイはなかなかできなくて、編集されYouTubeに動画として上がったものを楽しんだり、作業BGMのように配信を流しておきながら何かやったりと、まったりペースで楽しんでいます。

以前は好きな配信者さんの配信をなかなかリアタイできないことを気に病んだりもしましたが、今は「自分のペースで楽しめばいいよね、配信者さんは私たちの人生のすべ

もっとみる
それ、俺悪くなくない?

それ、俺悪くなくない?

大事な人に「えっ」ってびっくりされるとぎょっとしてしまう。俺たちが何か悪いことをしたのかと思っちゃう。癖で。

意外なこと、親の想定にないことを俺が言ったりやろうとしたりすると、親は「え!?」とちょっと大きい声を出した。

俺は、とにかくそれが苦手で。

いざ言葉にしようとすると、それがなんでなのか理由が難しいな。
「親に逆らっちゃいけない」っていう印象をどこかの時点で持っちゃったのか、「え!?」

もっとみる
「今の僕たち」で親と関わる

「今の僕たち」で親と関わる

親に会った翌日は決まって体調を崩していた。

緊張し、気を遣い、無理をしてたくさん喋って……。非常事態スイッチとでも呼ぶべきものが強く入ってエネルギーを消費するというか。
とにかく親と会う用事ができると2日前から憂鬱になり、当日を乗り切ると翌日はほぼ丸一日布団の中……というのがパターン化しつつあった。

それほど緊張を強いられる相手と同居していたのかと思うと驚きだ。
きっと感覚が麻痺していたのだろ

もっとみる
パニック障害をきっかけに今までのやり方を見直す

パニック障害をきっかけに今までのやり方を見直す

体調の悪さがしばらく続いていた。

何やら動悸がする。いつも以上に息苦しい。足元がふらつく。頭が痛い。食欲が消え失せている。

とてもつらい。貧血かもしれない。

地域の病院に行くと、意外な診断名を告げられた。

「パニック障害ですね」

そこは内科と心療内科・精神科が併設された病院。「内科的な体調不良だと思ったら精神病だった」という例は多いらしく、僕もその一員だったと説明された。なるほど、道理は

もっとみる
どうして顔は1個しかないんだろう……

どうして顔は1個しかないんだろう……

亜麻です。

このあいだ本を読んでいたら、「解離性同一性障害を持つ人の中には、鏡を見た時にそれぞれの人格の顔が映る」っていう話を見つけました。

つまり、何人もいる人格たちは、表に出ている時、それぞれ「これが自分の顔だ」と思う顔が鏡で見えるらしいのです。

え!!!!すご!!!!!

うらやましい!!!!!!

と、私たちは思っちゃいました。

人間の脳って不思議ですね。

私たちには主さんの顔し

もっとみる
書けなくなった僕たちが、再び書くためにやったことやめたこと

書けなくなった僕たちが、再び書くためにやったことやめたこと

物語を書くことは、約20年も続けている僕たちの趣味であり仕事だ。
「書く」ことと「生きる」ことはほとんど並列のニュアンスを持っている。

それなのに、いつからだろう。
気づいたら「書く」ことに追われていた。追われていることに気づいた。

書きはじめた頃、もっと純粋な楽しさだけがあったんじゃないか。

今目の前の原稿に追われている、この気持ちは楽しみではなく義務感だ。

書くのと同時進行の文章批判が

もっとみる
近況と、エッセイが書けない話

近況と、エッセイが書けない話

「エッセイが書けない」という文章が「書けている」、矛盾と不思議。

しかし、本当に書けなくなってしまったのである。

ほら、今だって画面の前に頬杖をついて思考する数分間。

2行目と3行目の間には、行間には現れない思考と手元の空白がある。

そしてまた空白。

けれど書き進められないからと言って、せっかく作ったこの記事を消してしまうのも惜しくて私は困ってしまう。

実はここ1ヵ月くらい、また新しい

もっとみる
子供は天使なんかじゃない。

子供は天使なんかじゃない。

以前、母が僕たちの幼少期を回想する時、こんな言い方をした。

「まだ(主の本名)がかわいいかわいい天使ちゃんだったころ」

この言葉はきっと、「子どもが純粋でかわいかった頃」のような意味だと思う。
子どもの無邪気さは、成長に伴いある程度失われていくことが多いから。

だが僕は、ここではっきりと書いておく。

僕にそんな時期はなかった。

子どもも人間だ。これまで生きてきた過去世がある。
そして子ど

もっとみる
居心地の悪さを取りに行かねばならない時

居心地の悪さを取りに行かねばならない時

どうも。直也です。

恐怖と無気力に安堵しているホラーが苦手なのに、YouTubeでホラーゲームの実況を観るのが好きだったりする。

僕たちが好んで観ている人は叫び声に定評のある人なので、あの良い感じの叫びを聞くにはホラーが必要……という図式。
もちろん他の企画や、ゆるやかな雑談もやわらかい声が楽しめてうれしい。

しかし僕たちにとってこれは、一概に喜ばしい視聴方法ではないようだった。
ホラー実況

もっとみる
「夜ふかしさん」と僕

「夜ふかしさん」と僕

どうも。直也です。

「夜ふかしさん」最近「夜ふかしさん」の存在に気づいた。累計で12人目のパーツだ。

「夜ふかしさん」は8歳の女の子で、20時を回った頃になると出てくる。
彼女はいわゆる「リベンジ夜ふかし」を担当しているようだ。

※リベンジ夜ふかしとは

発達障害の特性を持つ人に多い夜ふかしの形。昼間に家事や仕事などの「やるべきこと」に忙殺されて自分のやりたいことがおろそかになった時、睡眠時

もっとみる
久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

久々のフラッシュバックと新しい対処の記録

直也です。

※タイトルの通り、フラッシュバックにまつわる記述がある。
心の元気な時にご一読いただくことをおすすめする。

先ほどひどいフラッシュバックに襲われた。

きっかけはある意味何気ないことで、この時一緒にいた相手に非はない。
たまたま僕たちの方で、それが地雷だっただけだ。

目の前の食事が「食べモノ」として認識できなくなり、つい1秒前まで存在していたはずの空腹感は消失している。
久々に直

もっとみる
生まれた理由が自分への優しさをくれる

生まれた理由が自分への優しさをくれる

どうも。直也です。

ジェニーナ・フィッシャー著『トラウマによる解離からの回復』に、印象的な記述があった。

パーツ(解離人格)たちはなぜ生まれるのかという話だ。

ジェニーナさんは、主人格を守るためだと書いている。

「自分」を守るため、過去あるいは現在の過酷な状況を生き延びるための手段として、自分を分裂させる。

振る舞いや特性、場合によっては記憶までをも分担する。

自衛のためという、シンプ

もっとみる
過去が近くなる日

過去が近くなる日

どうも。「無気力」です。

「過去が近くなる日」疲労や体調などの事情によって、解離がひどくなる時がある。

そういう時は「パニック少年」が表に出てきて帰り方(他のパーツとの代わり方)が分からなくなったり、ひどいフラッシュバックが起こったりして、気持ちが落ち込んでしまいやすくなるのだ。

精神衛生によくないし、好きこのんでその状態にとどまっているわけではない。

抜け出し方が分からなくなるのだ。

もっとみる