Gakio

1995年生れ。会社員。 読書感想文的な文章を増やしていこうかな、という所存。

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1995年生れ。会社員。 読書感想文的な文章を増やしていこうかな、という所存。

記事一覧

堀江敏幸「濃密な淡彩──パトリック・モディアノ論のための覚え書き」を読んで Vol.1

芥川賞、谷崎潤一郎賞、川端康成賞、読売文学賞、野間文芸賞などなど、日本の文壇における「小説」の文学賞を総ナメするだけでなく、その選考委員を務める立場である堀江敏…

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3週間前
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「ミルコ・クロコップvs美濃輪育久」の煽りVについて

今朝、私は「ミルコ・クロコップvs美濃輪育久」の煽りVを観て、泣いてしまった。 これにはさまざまな要因がある。 当時PRIDEを観ていた懐かしさ。その頃の自分。また、プロ…

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1か月前
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「リトル・クイニー」をめぐる偶然

これまで全く知らなかったことを、近い期間で偶然2回知る、ということが往々にしてある。 チャック・ベリーの楽曲「リトル・クイニー」がまさにそうで、28年間の人生で耳に…

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3か月前
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夜遊び、或いは午前5時のアディオス・マザーファッカー Vol.1

 私は普段ほとんど飲み歩かない。  理由はいくつかあって、酒が強くない、金が勿体無い、面倒など。  また、「行くな」と止められているわけではないのだが、彼女と同棲…

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7か月前
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【歌詞・和訳】ボブ・ディラン「アイ・ウォント・ユー」の歌詞について

 ボブ・ディランの楽曲「アイ・ウォント・ユー」は、1966年発売の7thアルバム『ブロンド・オン・ブロンド』に収録され、同年シングル・カットされた。  今回訳してみて…

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8か月前
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【歌詞・和訳】レディオヘッド「ノー・サプライゼズ」について

 レディオヘッドの楽曲「ノー・サプライゼズ」は、1997年発売の3rdアルバム『OK コンピューター』に収録され、翌1998年にシングル・カットされた。  作詞作曲のクレジッ…

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8か月前
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「内向の世代」の作品をこれからも読むだろうという話

戦後文学が私にとって受容しやすいのは、現代社会が1945年以降のシステムの延長だからだろうと思う。 戦時中に成人以上の年齢の者は、徴兵による従軍体験をはじめ、太平洋…

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9か月前
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佐野元春&THE COYOTE BANDの「サムデイ」

タイトルを「佐野元春“&THE COYOTE BAND”の「サムデイ」」としたのには理由がある。 サムデイは1981年発表、その当時のバックバンドは「THE HEARTLAND」で、メンバーが異…

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1年前
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茶の畑

先週、仕事で静岡にあるお茶の製造工場を視察に行った。一緒に茶畑も見学させてもらった。 別に契約書を交わした覚えはないが、仕事のことは機密であるだろうから、どこま…

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1年前
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令和五年のボブ・ディラン・エクスペリエンス

令和五年(2023年)四月十五日、私は初めてボブ・ディランのライブに行き、彼と同じ空間で彼を見て、彼の歌声を聴いた。 3年前にもチケットを買っていたのだが、コロナの流…

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1年前
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ラーメンを食べながらの省察

今日も今日とて在宅勤務で、13時からはそれなりに重要なオンライン会議があった。 前々から近所の家系ラーメンを食べに行きたいと考えていて、それで昼飯をあと回しにして…

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1年前
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村上春樹「ブルース・スプリングスティーンと彼のアメリカ」を読んで

エッセイ集『意味がなければスイングはない』は、文藝春秋から2005年に発売されている。 長年の音楽ファンとして知られ、小説家になる以前はジャズ喫茶を経営し、いわば「…

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1年前
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ヨネダ2000の衝撃

はじめてヨネダ2000のネタを観たのは、2021年M1グランプリ準決勝だ。 金属バットを楽しみにして、決勝の日の昼間、テレビ中継されている準決勝を見ようとテレビをつけると…

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1年前
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反橋

大阪に行くのは5年ぶり。新大阪駅から地下鉄を乗り継いで降り立つと、なんばの道路では、若者が至るところで自転車の二人乗りをしている。 二人乗りは、たしかに10代の頃は…

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2年前
4

カレー食べ放題のエッチな個室ビデオ店

初めて訪れた池袋の個室ビデオ店は、カレーがおかわり自由の食べ放題で、無料だった。 個室ビデオ店とは、えっちなビデオをフロントで借りて、個室でみるもので、受付した…

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2年前
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国立西洋美術館 企画展に行った

最寄駅に着くと、駅のほうから50代くらいの日本人女性が降りてきて、前を歩いている夫らしい人になにやら声をかけていた。Tシャツ姿の彼女はどうやらノーブラのようで、驚…

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2年前
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堀江敏幸「濃密な淡彩──パトリック・モディアノ論のための覚え書き」を読んで Vol.1

堀江敏幸「濃密な淡彩──パトリック・モディアノ論のための覚え書き」を読んで Vol.1

芥川賞、谷崎潤一郎賞、川端康成賞、読売文学賞、野間文芸賞などなど、日本の文壇における「小説」の文学賞を総ナメするだけでなく、その選考委員を務める立場である堀江敏幸が、「小説」をも念頭においているかはともなく、これほど謙虚な自己認識をしている点に、私はまず惹かれる。
芥川賞受賞作の「熊の敷石」からして、本人は小説だと思って書いていなかったのだ。それはジャンルを規定する定義への懐疑もあるだろうし、作家

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「ミルコ・クロコップvs美濃輪育久」の煽りVについて

「ミルコ・クロコップvs美濃輪育久」の煽りVについて

今朝、私は「ミルコ・クロコップvs美濃輪育久」の煽りVを観て、泣いてしまった。
これにはさまざまな要因がある。
当時PRIDEを観ていた懐かしさ。その頃の自分。また、プロレスラーが総合格闘家として戦わなければならない/戦うことを選んだ、意義。

動画はわずか3分20秒。
2006年5月5日に開催された、「PRIDE無差別級グランプリ」一回戦のカードである。

ミルコ・クロコップは1974年生まれ。

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「リトル・クイニー」をめぐる偶然

「リトル・クイニー」をめぐる偶然

これまで全く知らなかったことを、近い期間で偶然2回知る、ということが往々にしてある。
チャック・ベリーの楽曲「リトル・クイニー」がまさにそうで、28年間の人生で耳にしなかったタイトルに、短期間で2度出会った。

中学生の頃に斉藤和義が世間的にヒットして、「ずっと好きだった」もずいぶん流行ったが、あの特徴的なイントロがチャック・ベリーのオマージュだというのがいわゆる「ロックンロールの創始者」を知った

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夜遊び、或いは午前5時のアディオス・マザーファッカー Vol.1

夜遊び、或いは午前5時のアディオス・マザーファッカー Vol.1

 私は普段ほとんど飲み歩かない。
 理由はいくつかあって、酒が強くない、金が勿体無い、面倒など。
 また、「行くな」と止められているわけではないのだが、彼女と同棲していることもその一因かもしれない。
 それでも大学最終学年の2017年には京都木屋町に、上京したばかりの2018年には勇気を出して新宿ゴールデン街の文壇バーなどに行ったりしていた。
 居酒屋での大人数の飲み会は、どちらかと言えば好きだ。

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【歌詞・和訳】ボブ・ディラン「アイ・ウォント・ユー」の歌詞について

【歌詞・和訳】ボブ・ディラン「アイ・ウォント・ユー」の歌詞について

 ボブ・ディランの楽曲「アイ・ウォント・ユー」は、1966年発売の7thアルバム『ブロンド・オン・ブロンド』に収録され、同年シングル・カットされた。
 今回訳してみて、改めて意味が分からないと思った。語感のよい単語で韻を踏んでいるだけで、歌詞に意味はないのだろうと思う。
 聴き手は言葉の端々から喚起されるイメージと幻想の世界に、それぞれが酔いしれれば良いという、それだけのこと。

【歌詞・和訳】レディオヘッド「ノー・サプライゼズ」について

【歌詞・和訳】レディオヘッド「ノー・サプライゼズ」について

 レディオヘッドの楽曲「ノー・サプライゼズ」は、1997年発売の3rdアルバム『OK コンピューター』に収録され、翌1998年にシングル・カットされた。
 作詞作曲のクレジットには彼らの楽曲の例にもれず、トム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、エド・オブライエン、コリン・グリーンウッド、フィル・セルウェイとメンバー五人全員の名前が書かれている。
 詳しく調べれば具体的な作曲者が分かるかもしれないが

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「内向の世代」の作品をこれからも読むだろうという話

「内向の世代」の作品をこれからも読むだろうという話

戦後文学が私にとって受容しやすいのは、現代社会が1945年以降のシステムの延長だからだろうと思う。
戦時中に成人以上の年齢の者は、徴兵による従軍体験をはじめ、太平洋戦争との関わりなしにその青春や人生を語ることは困難だ。
1925年生まれの三島由紀夫は、その境界に立つ作家として象徴的存在だ。
文学史上では彼を「第二次戦後派」として扱うが、その後現れた「第三の新人」まで、青春と戦争が密接に結びついてい

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佐野元春&THE COYOTE BANDの「サムデイ」

佐野元春&THE COYOTE BANDの「サムデイ」

タイトルを「佐野元春“&THE COYOTE BAND”の「サムデイ」」としたのには理由がある。
サムデイは1981年発表、その当時のバックバンドは「THE HEARTLAND」で、メンバーが異なるからだ。

私はこれから2023年7月8日に静岡県でサムデイを聴いて感動した話を書いていくのだが、この日のMCでも、80年代にハートランド、90年代にザ・ホーボーキング・バンド、そして00年代以降コヨー

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茶の畑

茶の畑

先週、仕事で静岡にあるお茶の製造工場を視察に行った。一緒に茶畑も見学させてもらった。

別に契約書を交わした覚えはないが、仕事のことは機密であるだろうから、どこまで書いていいのか定かではない。
なので詳しく書かないようにするつもりだが、そうすると、普段の業務を些細に描く、「私小説」というのは成立できないことがよくわかる。
世の中にある小説は、学校が舞台のことも多いが、職場が舞台だと、細かい業務を書

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令和五年のボブ・ディラン・エクスペリエンス

令和五年のボブ・ディラン・エクスペリエンス

令和五年(2023年)四月十五日、私は初めてボブ・ディランのライブに行き、彼と同じ空間で彼を見て、彼の歌声を聴いた。
3年前にもチケットを買っていたのだが、コロナの流行によって中止となったのだった。

この体験は、当初私が予想していたよりも、現時点での感慨は深くはないのだが、このあと時間が経てば経つほど、私の人生においてこの体験の持つ意味が大きくなるだろう、とも思っている。

ディランの声を初めて

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ラーメンを食べながらの省察

ラーメンを食べながらの省察

今日も今日とて在宅勤務で、13時からはそれなりに重要なオンライン会議があった。
前々から近所の家系ラーメンを食べに行きたいと考えていて、それで昼飯をあと回しにして、会議が終わった後に行くことにした。

ソワソワしながら食べるより、落ち着いた気分で食事したい。
ラーメン屋は15時まで開いているし、昼時を避けた方が空いてもいるだろう。

また、家で作業するより、外に出ることも仕事に関連しているのだった

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村上春樹「ブルース・スプリングスティーンと彼のアメリカ」を読んで

村上春樹「ブルース・スプリングスティーンと彼のアメリカ」を読んで

エッセイ集『意味がなければスイングはない』は、文藝春秋から2005年に発売されている。
長年の音楽ファンとして知られ、小説家になる以前はジャズ喫茶を経営し、いわば「音楽を仕事にしていた」といえる村上春樹が、クラシック、ジャズ、ロックなどのアーティストを題材に文章を書いている。

私はその中の、「ブルース・スプリングスティーンと彼のアメリカ」という章が好きで、ときおり読み返す。
その理由は、スプリン

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ヨネダ2000の衝撃

ヨネダ2000の衝撃

はじめてヨネダ2000のネタを観たのは、2021年M1グランプリ準決勝だ。
金属バットを楽しみにして、決勝の日の昼間、テレビ中継されている準決勝を見ようとテレビをつけると、緑の青のカラフルな服を着た女性二人が、怪しげな動きをしていた。

途中から観たのだから、内容が分からないのは当然かもしれないが、従来のしゃべくり漫才とはあまりに違いすぎた。
というのも体重116kgの「愛」は、ずっとYMCAを踊

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反橋

反橋

大阪に行くのは5年ぶり。新大阪駅から地下鉄を乗り継いで降り立つと、なんばの道路では、若者が至るところで自転車の二人乗りをしている。
二人乗りは、たしかに10代の頃は身近なものだった、という記憶も喚起されたが、東京では全くお目にかからないものだから、長らく存在自体を忘れていた。

街行く人々の、言葉のイントネーションの違いは、土着性を強く感じさせるし、化粧の仕方も普段目にするものとは違う。
土地によ

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カレー食べ放題のエッチな個室ビデオ店

カレー食べ放題のエッチな個室ビデオ店

初めて訪れた池袋の個室ビデオ店は、カレーがおかわり自由の食べ放題で、無料だった。
個室ビデオ店とは、えっちなビデオをフロントで借りて、個室でみるもので、受付したときにお手拭きを4、5枚とコンドームをひとつもらえる。グッズは大丈夫ですか?、と、フロントの隣にあるテンガやその他がすすめられる。

私はよく利用している。個室は大都会において、自分だけの空間であるからだ。
でもカレー食べ放題があるなんて、

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国立西洋美術館 企画展に行った

国立西洋美術館 企画展に行った

最寄駅に着くと、駅のほうから50代くらいの日本人女性が降りてきて、前を歩いている夫らしい人になにやら声をかけていた。Tシャツ姿の彼女はどうやらノーブラのようで、驚いた。
そういう経験は初めてに近い。同じようなことはコロナになる前の都心の地下鉄であった。これは西洋人らしい若いカップルの、女性のほうである。
だから何というわけでもないが、珍しいことなので、書き記しておこうと思う。

今日見た展示は、自

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