堀江敏幸

【今週の一冊】『あとは切手を、一枚貼るだけ』

意図せず順番が巡って流れてきた音楽が、風景や心情を一瞬にして切りとってしまうことがある。
そんな幸せな贈りものと出逢えた時、私は喜びと共に(この音楽をこんなに鮮やかな気持ちで聴ける体験はもうできないんだなぁ…。)というある種の寂しさをもおぼえるのだ。

小川洋子/堀江敏幸 共著『あとは切手を、一枚貼るだけ』

この本を読むためにカフェに向かっていたとき、不思議なことが起きた。
3人の異なる音楽家が

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堀江敏幸『バン・マリーへの手紙』

しなやかな文体を駆使しながら、随筆、小説、評論の諸ジャンルをゆるやかに横断する、芥川賞作家のエッセイ集。フランス文学者でもある作者の経歴にも後押しされ、バン・マリーという作品の宛名に麗しい西洋女性の想像を逞しくして読み進めると、見事に肩透かしを喰らわされる。バン・マリーとは、すらりと背の高いフランス美女の名前どころか、生物のそれですらなく、なんと「湯煎」を表すフランス語だったのである。

 が、失

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平出隆『葉書でドナルド・エヴァンズに』(作品社)

詩人平出隆が、若くして不慮の死を遂げた画家ドナルド・エヴァンズに向けて書いた葉書、という形式の日記のようなエッセイ。エッセイでもあり詩でもあるような。一日分(というか一章分)が1ページにおさめられ、詩人は毎日のようにどこかからどこかへ旅をしながら、ドナルド・エヴァンズへの思いを綴る。ドナルド・エヴァンズの足跡をたどり、ゆかりのある人に話を聞きに行き、最後は彼が訪れたいと思っていて果たせなかったラン

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小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』(中央公論新社)

書店で『あとは切手を、一枚貼るだけ』を手に取ったとき、最初は、作家二人の往復書簡形式のエッセイなのかと思った。どちらも好きな作家、どんな丁寧な言葉遣いで語り合うのだろう、と思って読み始めたら、それは小川洋子の手紙でもなく、堀江敏幸の手紙でもなかった。深く理解し合っている男女が、一定の別離期間を経た後で唐突に交わし始めた手紙の中で、自分たちの過去を振り返る。本当の手紙だったら、省略されるであるだろう

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丁寧に日常を生きること

平成15年11月に新潮社から刊行され、平成19年8月に文庫化された堀江敏幸氏の短編集を、連休中に読み終えました。

小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日

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1番乗り!スキありがとうございます!2020年もよろしく😊
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消えた産着と消えない”痛み”

小川洋子氏、堀江敏幸氏の2人が描く、元恋人たちの書簡小説を読み終えました。

かつて愛し合い、今は離ればなれに生きる「私」と「ぼく」。失われた日記、優しいじゃんけん、湖上の会話…そして二人を隔てた、取りかえしのつかない出来事。14通の手紙に編み込まれた哀しい秘密にどこであなたは気づくでしょうか。届くはずのない光を綴る、奇跡のような物語。(「BOOK」データベースより)

昨日、大きな決断をひと

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嬉しいです。是非2020年をご一緒しましょう😊
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💌BOOK.あとは切手を一枚貼るだけ

あとは切手を、一枚貼るだけ
小川洋子/堀江敏幸
中央公論新社

◇この間大学の授業で、自分の性格検査を受けました。
私の数値はぐんとでっぱったり、がくんとへこんだり、まるで「平均値」という言葉を一生懸命避けるようでした。その必死な姿に笑ってしまうくらいに。

開放性。その中でも突き抜けるように高い数値を指すものでした。関心が外的にも内的にも向けられており、前向き・後ろ向き両面の感情を人よりも鋭くキ

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淡い色の主人公たち - 堀江敏幸『雪沼とその周辺』

先日槙野さんという方の以下のnoteを読み、堀江敏幸作品の素晴らしさに関して改めて考えてみた。

槙野さんはnoteのなかで、「世界はときどき、じかに私に触れてくる。」そして「堀江作品には(恐ろしいことに)いつもこの種の特別な日の気配がある。」と表現している。私はまだ堀江作品を全て読んだわけではないが、それでもこの表現にとてつもなく共感をしてしまった。

私の中で堀江作品は、いつも淡い色だ。彩度が

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わー、しあわせです!ありがとうございます!
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堀江敏幸【傍らにいた人】

日経新聞に連載されていた書評を一冊にまとめた書評集。仏文学の印象も強い著者だが、語られるのは日本の古典である。日経新聞という相当に実利を重視するはずの新聞の片隅に、この生産性という概念から遠く離れた緩やかな散文が載せられていたということ自体が、何というか嬉しい。

「解釈の誘惑から離れて」「全体の流れや構造とは関係ない細部につまづくこと」を掲げ、要約すれば零れ落ちてしまう「傍ら」の描写に着目して丹

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読んだ本 2019/2/11

1. 重松清 / 季節風 冬

2. 重松清 / ブランケット・キャッツ

3. 重松清 / 哀愁的東京

4.  宮下杏奈 / 太陽のパスタ、豆のスープ

4. 堀江敏幸 / めぐらし屋

5. 朱川湊人 / かたみ歌

6. 朱川湊人 / わくらば日記

7.  朝吹真理子 / きことわ

8. 桜木紫乃 / 風葬

9. 小川洋子 / やさしい訴え

10. 小川洋子 / アンネ・フランクの

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ありがとうございます〜
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