マイケル・マン監督『フェラーリ』(2024)短評
ホテルのそれのように折り目正しく整えられたシーツに横たわるスーツの男がかかってきた電話のベルに起こされ受話器を掴み、第一声「PRONTO」と答えるところまで、まずそこまでは、マルチェロ・マストロヤンニが演じる20世紀のイタリア映画の一幕を思わせる。しかし、続いて男の口から矢継ぎ早に繰り出されるいんちき関西弁の胡散臭い小気味よさを思わせなくはない、イタリア語訛りの英語を聞くやいなや、いくらこれがマイケル・マンの映画だと分かって劇場に足を運んでいたとしても、観客はその唐突で場違い