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福祉の仕事

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仕事中に気づいた発見や喜びを書いています。
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2022年6月の記事一覧

お互いに手を振り続けた

お互いに手を振り続けた

新しく某利用者が送迎を使うことになった。
初めての道の為、少し緊張する。

 
車内でその人はずっとニコニコしながら窓の外を眺めた。

自宅からほど近い場所で車を停めると
ニコニコしながら降りてきた。
ドライブが好きな方なのだ。

 
「さようなら。また明日ね。」

と私が言うと
最後に何回かイタズラをしてきたので

「ほら、帰るよ。また明日ね。明日遊ぼうね。」

と伝える。

 
ニコニコ笑顔で

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施設長の似顔絵

施設長の似顔絵

レクリエーションで施設長の似顔絵を利用者が描いた。

 
それぞれの人が頑張って描いた。
よく特徴をとらえている。

私の隣にいた利用者は見本を見ながら絵を描くのは得意だが
想像で絵を描くことが苦手だ。

 
私は施設長の絵を描いた。

真似するように話したが
その方は描かなかった。

 
「真咲さん、上手!一番だね。」

 
同僚が声をかける。

 
某利用者は施設長が大好き過ぎて
似顔絵の横に

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初めて絵を描いた日

初めて絵を描いた日

今年利用者になったAさんは耳が不自由で
知的障害もあり
理解度が低かった。

 
「えをかいて」

と伝えても

「えをかいて」

と紙に書いてしまう。

 
絵を描く時間帯
周りが絵を描いていても
自分の好きな食べ物や人名を書き続けた。

 
そんなことが半年続いた。

 
 
先日
レザーキーホルダーをみんなで作った。
その際
初めてレザーにAさんは人物画を描いた。
何故かは分からない。
紙じ

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相談員の覚え方

相談員の覚え方

情けない話だが
転職して一年半が経った今も
利用者の相談員の担当が覚えられない。

 
というのも
うちの施設の利用者の担当相談員は複数人いる上
相談員の所属する施設もバラバラだ。

 
〇〇施設の△△さん

という、施設と名前の組み合わせは覚えられたが
その方がどの利用者担当かまでは
未だに覚えきれなかった。
顔も全く覚えていない。

 
それは私が相談員と関わっていないというのもある。

 

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かわいいかわいいかわいい利用者

かわいいかわいいかわいい利用者

かわいい利用者がいる。
もう全てがかわいい。

 
声も仕草も笑顔も
輪郭も体のラインも
歩き方もしゃがみかたも
いちいちかわいい。

その人の明るさや元気さや優しさや朗らかさに毎日癒やされる。

 
ある日私は「か、かわいい…。」と本音をダダ漏れさせた。

 
 
すると彼女は言った。

 
「ありがとう。抱きしめていいよ?」

 
 
 
 
萌え死にした。

女の子は髪型で印象が変わる

女の子は髪型で印象が変わる

女性利用者は髪が短い方が多い。

それは多分、母親の考えなのだと思う。
 
 
基本的に利用者の髪は
母親が洗い、乾かし、とかし、結う。

成人式まで伸ばして
バッサリ切る率が高かった。

 
仕事で障害がある方と関わるだけで
自宅で大変だろうことは伝わるし
それは仕方ないと思う。

 
ただ
成人式以降も髪が長い利用者を見ると
母親がより頑張っているような気がして
すごいなぁと思う。
家族関係良

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虫の良さを語り合えると嬉しい

虫の良さを語り合えると嬉しい

ある日の夕方
施設の玄関先にクロアゲハの幼虫がいることに気づいた。

 
「うわっ気持ち悪いっ!」

女性職員は苦々しい顔をした。

 
「朝からいるんですよ。」とリーダーが言った。

私はその子を眺めた。
プックリとした緑色の立派なボディが見事だ。
丸々とした糞がたくさん落ちていて
健康的だと思った。

 
私は多分
周りの同世代の女性と比べると
虫が好きな方だと思う。

触れる虫はいるし
虫の

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アンパンマンおじさん

アンパンマンおじさん

施設の製品を販売していると
60~70代と思われる男性がやってきた。

 
「お?アンパンマンはあるのか?アンパンマンはよぉ?」

 
なかなかにガラが悪い。
おそらく障害があるか、酔っぱらいか、単なる性格に過ぎないだろう。

 
そんなガラの悪い方がアンパンマンというかわいらしいキャラクターを口にしている。

「アンパンマンはないんですよ。」

私は申し訳なさそうに伝えたが
そんなことで怯むアン

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突然の来訪者

突然の来訪者

突然見知らぬ方が来所した。
 
 
同僚や利用者が出迎えたが

「真咲さんはいらっしゃいますか?」

と言われ
私はビックリしながらも玄関に向かった。

 
…男性だ。
誰だろう……?

 
「突然申し訳ありません。〇〇社(ポスティング作業先)のAです。」

 
あぁ!ポスティング作業の担当者か!

 
入職して半年後くらいから
私はポスティング作業を任されている。
担当者には私はおろか
私の前に

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夏になればいなくなる

夏になればいなくなる

施設長に話しかける時はいつも緊張する。
覚悟を決めて一呼吸置いて話しかける。

 
その日は珍しく朝普通に会話ができた。
笑顔で圧をかけることも
こちらの神経を逆なですることもなかった。

 
いつもこうならいいのにな

と思って半日も経たない内に
相変わらずな言い方があり
そう人も関係も変わらないのだと改めて感じた。

 
 
夏になったら施設長は仕事をしばらく休むことが決まっている。

 

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両肩の重みという幸せ

両肩の重みという幸せ

販売の帰り道
私は後ろ席に乗った。

 
その日は最高気温28度の暑い日で
曇りだったものの
一日販売で
なかなかにハードだった。

私でさえ500mlのペットボトル3本飲んだし 
タオルは汗だらけになった。

お昼とトイレ以外
私は立ちっぱなしだ。
(利用者は疲れたら座ってもよい。)

 
販売に疲れた利用者Aさんは
疲れて車内で寝ていた。

声を張り上げ
よく動いていた。
眠りたくもなるだろう

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散歩中の出来事

散歩中の出来事

その日私は利用者二人と散歩していた。

 
二人とも体が不自由で
特にそのうちの一人は早歩きができない。
自分の好きな方に進みたがる傾向も見られる。

 
そんな中
スーパーの前を通った。
ゆったりゆったりと歩いた。
すると
目の前から自転車を押している60代位の女性が来た。
あちらもゆっくりとしている。

 
「早く行ってよ!」

面と向かって驚いた。
この仕事に就いてから
そんなことを言われた

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マスク越しに激しいキスをされる日々

マスク越しに激しいキスをされる日々

彼女は毎日私をジッと見つめ
顔を近づけ
両手を私の首に絡ませ
マスク越しに激しいキスをする。

腕を絡ませ
腕に激しいキスをする時もある。

頭突きも毎日してくる。
たまにつねったり、爪を立ててくることもある。
私が困った顔をしたり痛がると毎回ニヤリと笑う。

 
Sっ気がある人なのだ。

 
眠い時は私の肩にもたれて眠ったり
お互いに座っていると
私の足と足を開いて
その間に顔をうずめる。

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利用者が追いかけたその先

利用者が追いかけたその先

その日は運動の日だった。

 
各グループごとに公園に行く。

その公園はランニングや散歩コースが設備されており
体力や能力に合わせて
利用者は走ったり、歩いたりする。

 
某利用者はコースに合わせていつものように走っていた。  
だが
いきなり何故か逆走してきた。

 
「おい、離せよ!」

木の上に向かって叫んでいる。
私もその方向を見てみた。

 
すると
カラスが何かをくわえている。

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