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散歩中の出来事

その日私は利用者二人と散歩していた。

 
二人とも体が不自由で
特にそのうちの一人は早歩きができない。
自分の好きな方に進みたがる傾向も見られる。

 
そんな中
スーパーの前を通った。
ゆったりゆったりと歩いた。
すると
目の前から自転車を押している60代位の女性が来た。
あちらもゆっくりとしている。

 
「早く行ってよ!」

面と向かって驚いた。
この仕事に就いてから
そんなことを言われたのは初めてだった。

 
大抵の人が譲ってくれたり
無言で避けてくれたり
後ろから自転車でチリンチリン鳴らしてから抜いてきた。

 
見てすぐに障害者と分かるはずだ。
障害者だと分かって言ってきたのだろうか。
それとも
分からないが言ってきたのだろうか。
障害者だろうが健常者だろうが
お構いなしに言う人なのだろか。

 
その道は広いからいくらでも避けられたのに
避けるよりも私達がどけることを願ったんだね。

 
職場のある地域は優しいからそれに甘えていた。
挨拶をしてくれたり
雑談をしてくれる人ばかりで
みんながみんなそんな人だと
私はどこかで期待していたのだ。

 
世の中にはそんな人ばかりじゃないのに。

「申し訳ありません。」

私は頭を下げて言った。

今まで和気藹々とした雰囲気がだいなしになった。

 
 
一緒に行った利用者の一人は人の言動を特に気にする人だから
私はその人の心の中が気になった。

 
道中、他グループの利用者や同僚に会った。
彼等が笑うように
私達も笑顔になった。

気にしないようにしよう。

私は私達を大切にしてくれる人と
こうして一緒に過ごしていこう。

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