全生物は「宇宙」の為に存在する/デストロイ×レボリューション/森恒二

森恒二の漫画「デストロイ×レボリューション」、私は結構好きだったのだが、最終話が賛否両論あり、主に「否」が大多数のようだ。

それは最終話での森恒二の考えが理解できない、ということにあるらしいのだ。

私はその意見をレビューサイトなどで初めて確認して、理解できない、共感できない、という声にとても意外だったのだが、それは私が森恒二と似たような生物存在論を抱いていたからだった。

以下に、森恒二の「あとがき」を一部引用する。

「人が自らの住環境を破壊する程大きな欲望を持つのは地球を離れる(卒業する)為なのでは?」
それが今のところの僕の答えです。
(第9巻/あとがき)

まさに私も、地球上の生物、ひいては宇宙中の全生物が存在する理由は、新しい宇宙に飛び出す為に、新しい宇宙を作り出す為にあると考えている。

ただ、この漫画で語られた破壊衝動が、「地球を離れる為のもの」だという部分は、私はまだその感覚を有してはいない。

中学生ぐらいにこんな事をいろいろ考えて夜も寝られなくなったお仲間はいるのでは…。
(第9巻/あとがき)

小中学生のとき、私も人間というもの、自分というものが何なのか、不思議でしょうがなかった。

何故、自分は存在しているのか、何故、自分は動くのか、何故、大人たちは働いて、何故、年寄りたちは死んでいくのか。

意味が分からなかったし、生きている、死んでいる、という実感が得られなかった。

自分は後に占星学で超合理主義者だと知るのだが、子供の頃も、生きている意味が理解できないことから、何に対しても無気力だった。どうせ、死ぬし、自分の生の価値を見出だせないから。

葬式で親戚や祖父が死んでも、悲しくはなかった。むしろ、何の感情も湧かなかった。親戚たちには、それから白い目で見られて、冷徹な子、ああいう奴が平気で人を殺したり、将来はヤクザになるのだろう、とだいぶ陰口を叩かれた。

そう言われたことは二度と忘れはしないが、特別、腹が立ったりはしていなかった。自分が間違っているとは思っていないからだ。

何年か後に、なんとなくだが自分の中で納得できたのだが、死んだ親戚や爺さんは、人間として、地球上の生物として、宇宙の意志として、その役割を果たしたとのだと思った。

地球上で生まれた生物は、進化、絶滅を繰り返して、今、人間という高知能生物までの進化に達した。

生まれては死んで生まれては死んで、命を繋いできた。繋がない人や生物も大勢あっただろう。だが、地球上には、人間がしっかり反映して残っている。

「宇宙の意志」は、これなのだと、あるとき、ふと気がついた。

人間の存在に意味があるのではなく、生物の生の連鎖に意味があるのだと。

進化とは、「今が前提条件」なのだという。つまり、進化すればするほど、生物はさらに高度な生命体に進化する。

人間は驕り高ぶった生物だ。人間は、決して生物の頂点ではない。まだこの先がある。この先の為に、この先へ生物として進化する為に、本能が恋愛をさせて、欲情させて、子を産ませて、進化を強制させられている。

宇宙の意志によって。

死んだ親戚や爺さんは、子、つまりは私の親に生を繋いだ時点で、宇宙に求められた生物の責任を果たしたのだ。だから、死ぬことに悲しみはなく、役割を果たしたのだから、むしろ喜んで笑顔で送ってやってもいいのではないかと、私は後に思い至った。

実際、当時、葬式でも何故泣いてやるのか、笑顔で手を振って何が悪いのか、と口にした記憶があった。私は笑顔なんて作らなかったが、親しい者ほど、それが正解ではなかったのかと、今でも思っている。

何故何億とある種の中で人だけが異常に発展しているんだろう?
(第9巻/あとがき)

私は、今の人間が進化の最終形だとは思えない。

進化は止まらない。

この進化はどこに向けられているのか。

今に生きている人なら感じることもあってもいいと思っていて、だからこそこの作品に「否」が多いことに驚いたのだが、宇宙の進化の一部が、生物の進化ではないのか。

宇宙を成立させる為に、各宇宙で、各惑星で、生物が誕生、進化させられてるのだ。

今、何故、イーロン・マスクは宇宙を見るのか。宇宙に何を求めているのか。移住しなければならない危機が現実にあるのか。人口爆発の為なのか。

きっと、そうではない。

生物の本能に、地球誕生から生物誕生のその時点で既に、「宇宙へ旅立つこと」を生物は宇宙から命令されているのだ。

だから人々は宇宙にロマンを抱いて、宇宙を目指す。

そして新しい惑星に降り立って、新しい生を繋いで、また新しい惑星へ旅立つ。そうして宇宙を維持して、宇宙を大きくしていく。

そのとき、人間は、今の人間であるということはないと思っている。進化は「今が前提条件」だ。宇宙に適した進化を遂げているはずだ。

「機械生命体」が、人間の次の進化であるとも言われている。

私は、宇宙の意志を考えれば、今の生身の生体で宇宙へ旅立つとは思っていない。機械生命体になって、寿命である時間の概念を最小限まで取っ払って、何億光年も掛けて、宇宙に散るだろう。

今のところ、私が森恒二と異なる考えなのは、決して、宇宙への羨望は、人間の大きすぎる「欲望」から生まれているとは思っていない。前述の通り、それは既に組み込まれた宇宙の意志で、生物の破壊衝動は、宇宙への種の選別、その行為そのものであると思っている。

物理的な「モノ」が必要なくなってきている。その実感はないだろうか。デジタル世界、複雑な電気信号を実現できれば、それが進化の最終形なのかもしれない。人の身では、今はここまでしか想像ができない。

思念体、それは単なる複雑な電気信号で、それのみで宇宙を旅することができるのかもしれない。この作品の結末のように。


※この作品は2018年4月7日に「今日のおすすめ漫画」で紹介している


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