ちゃんぽんビート by あふろざむらい

思考すること、問いつづけること。 あれこれちゃんぽんしています。好きなマガジンをのぞい…

ちゃんぽんビート by あふろざむらい

思考すること、問いつづけること。 あれこれちゃんぽんしています。好きなマガジンをのぞいてください。

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記事一覧

「マッドマックス」(1979年)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で見事に復活したシリーズ。 あらためて第一作を観返すと、思っていた以上に面白い。 家族を奪われた警察官の復讐劇。 主人公のマ…

「羊たちの沈黙」(1991年)

1991年のアメリカ映画のトップ3は、 1.ターミネーター2 2.ロビン・フッド 3.美女と野獣 といった、ヒーローとロマンス。映画に夢や希望が詰まっていた時代と言ってもいい。…

「鈍考」

ブックディレクターの幅允孝氏が主催する私設図書室。 予約制で、定員6名の90分。 最寄り駅は京都の叡山鉄道の無人駅だと聞いていたので、どんな田舎なのかと思っていた。 …

村上隆 もののけ 京都

「村上隆の五百羅漢図展」(2015年)よりはこぢんまりとした印象。 よく知られている日本画のテーマやモチーフをスーパーフラットに解釈した作品群と、村上隆によく登場す…

紫式部「謹訳『源氏物語2』」(1008年頃)

2巻では源氏の君の18歳から25歳までを扱う。 この巻では、有名な車争いや、その後葵上が六条御息所に呪い殺されるエピソードなどがある。また、幼女だった紫上が成長し、源…

「犬ヶ島」(2018年)

ウェス・アンダーソンのストップモーションアニメ。 映像としてはよくできているが、なにを伝えたくて作ったのか、明確に読み取れない。 おおまかなストーリーは下記とな…

ベルトルト・ブレヒト「三文オペラ」(1928年)

ネットで「ブレヒト」を検索すると「ブレヒト 異化効果」という検索候補が出てくる。「異化効果」は知っているが、「ブレヒトと言えば異化効果」というほどのものだとは知…

第8回 沢渡果穂のさいごの風景

 洋介は断るつもりだった。  マリアの時と同じ結果になるという予感があった。でも、武はそうは考えていなくて、今回はうまくいくと断言した。  というわけで、洋介は…

「ゴジラ-1.0」(2023年)

これはとてもよかった。 山崎貴監督作品はわかりやすさが最優先されており、誰がどこでなにをしているのか、というのが非常に明確だし、ストーリーがどのように進んでいく…

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「デ・キリコ」展@東京都美術館

デ・キリコの「形而上絵画」というキーワードを聞くと、半ば条件反射的に埴谷雄高の「形而上文学」を連想する。埴谷雄高は「死霊」において「虚体」というキーワードを提示…

「アステロイド・シティ」(2023年)

これはよかった。 本作は製作費35 億円、興行収入76 億円。ウェス・アンダーソン作品としては「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)の276億円に次ぐ2番目の興行収入…

第7回 老婦人のさいごの風景

翌日、洋介が金子家を訪れると、いつものように執事が出迎えた。昨日も顔をあわせたというのに、執事は不思議そうに洋介をじろじろと眺めた。たぶん、スーツを着ているのが…

「生きる LIVING」(2022年)

黒澤明の「生きる」のリメイク。 1953年のイギリスを舞台にしている。 カズオ・イシグロがシナリオを担当したことも話題になった。 手堅くまとめた印象。 ロンドンの役所…

紫式部 『謹訳「源氏物語1」』(1008年頃)

リンボウ先生の「謹訳」はとても自然な感じが読みやすくていい。紫式部の原文がどういうものなのか、というのはわからないのだが、まずは全文を通読したい、という人にはい…

「マッドマックス」(1979年)

「マッドマックス」(1979年)

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で見事に復活したシリーズ。
あらためて第一作を観返すと、思っていた以上に面白い。

家族を奪われた警察官の復讐劇。
主人公のマックスはおもに暴走族の取り締まりをしている。
ある日、職務の途中で追跡していた暴走族が事故死する。
ナイトライダーという男だったが、彼はトッカータという男が率いるグループの一味だった。
トッカータはこの事故が原因で警察に恨みを抱く。

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「羊たちの沈黙」(1991年)

「羊たちの沈黙」(1991年)

1991年のアメリカ映画のトップ3は、
1.ターミネーター2
2.ロビン・フッド
3.美女と野獣
といった、ヒーローとロマンス。映画に夢や希望が詰まっていた時代と言ってもいい。「羊たちの沈黙 」は、ベスト3には入らなかったが、上位につけていた。ただし、ターミネーターやロビン・フッドのような「強いアメリカ」のイメージではないし、ジョディ・フォスターは美女だから、ロマンスの要素はあるにしても、レクター

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「鈍考」

「鈍考」

ブックディレクターの幅允孝氏が主催する私設図書室。
予約制で、定員6名の90分。
最寄り駅は京都の叡山鉄道の無人駅だと聞いていたので、どんな田舎なのかと思っていた。
叡山鉄道は1両編成の鈍行ではあるが、車窓から見える風景は郊外の住宅街だった。江ノ電に近いイメージなのかもしれない。
駅からは徒歩10分ほど。山が近いし田畑もあるのだが、高級住宅地(高級別荘地?)のようで、豪邸が立ち並んでいた。
鉄道が

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村上隆 もののけ 京都

村上隆 もののけ 京都

「村上隆の五百羅漢図展」(2015年)よりはこぢんまりとした印象。

よく知られている日本画のテーマやモチーフをスーパーフラットに解釈した作品群と、村上隆によく登場するキャラクターの現在形が展示されていた。そういう意味では、新作ではあるものの、どこかで観たことのある作品、ということになる。

これが現在の村上隆なのかもしれない。
つまり、ウォーホルは大衆文化のアイコンを大量に複製することでアートに

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紫式部「謹訳『源氏物語2』」(1008年頃)

紫式部「謹訳『源氏物語2』」(1008年頃)

2巻では源氏の君の18歳から25歳までを扱う。
この巻では、有名な車争いや、その後葵上が六条御息所に呪い殺されるエピソードなどがある。また、幼女だった紫上が成長し、源氏の妻となる。
また、桐壺院が亡くなり、朝廷の勢力図が変わる。右大臣家が権力を持つようになり、左大臣家側である源氏も抑圧される日々を送る。
源氏の女遊びばかりだった印象の1巻に比べて、きちんと物語が展開しはじめている。

まだまだ先は

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「犬ヶ島」(2018年)

「犬ヶ島」(2018年)

ウェス・アンダーソンのストップモーションアニメ。
映像としてはよくできているが、なにを伝えたくて作ったのか、明確に読み取れない。

おおまかなストーリーは下記となる。
日本のウニ県メガ崎市で犬の伝染病「ドッグ病」と「スナウト病」が蔓延しはじめて、メガ崎市の小林市長はすべての犬を「犬ヶ島」に隔離する法案を通す。かくして、すべての犬が送られたのだった。
6か月後、犬ヶ島にひとりの少年が訪れた。彼は小林

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ベルトルト・ブレヒト「三文オペラ」(1928年)

ベルトルト・ブレヒト「三文オペラ」(1928年)

ネットで「ブレヒト」を検索すると「ブレヒト 異化効果」という検索候補が出てくる。「異化効果」は知っているが、「ブレヒトと言えば異化効果」というほどのものだとは知らなかった。

そして、「三文オペラ」にも異化効果が仕込まれているという。
自分は全然わからなかった。このあたりは、知性と教養を身に着けることと、思考力を深めていく過程で、世界に対する解像度をあげていく必要がある。そういうことをやっていると

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第8回 沢渡果穂のさいごの風景

第8回 沢渡果穂のさいごの風景

 洋介は断るつもりだった。
 マリアの時と同じ結果になるという予感があった。でも、武はそうは考えていなくて、今回はうまくいくと断言した。

 というわけで、洋介は武の家にいた。ダイニングルームでテーブルについていた。向かい側に果穂がいる。武はお誕生日席に座っていた。降霊術でもはじめるのかっていう配置だ。自分の家なのに、武は白いスーツを着ていた。

 果穂は地味な女だった。それだけじゃなくて、会話を

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「ゴジラ-1.0」(2023年)

「ゴジラ-1.0」(2023年)

これはとてもよかった。
山崎貴監督作品はわかりやすさが最優先されており、誰がどこでなにをしているのか、というのが非常に明確だし、ストーリーがどのように進んでいくのかも明確だ。そして、観客が観たいものをそのまま出してくる。
このセンスはどこから来るのだろうか。

本作は、1945年から物語がはじまる。
特攻兵の敷島が零戦が故障したといつわって、小笠原諸島にある大戸島という守備隊基地に不時着する。

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「デ・キリコ」展@東京都美術館

「デ・キリコ」展@東京都美術館

デ・キリコの「形而上絵画」というキーワードを聞くと、半ば条件反射的に埴谷雄高の「形而上文学」を連想する。埴谷雄高は「死霊」において「虚体」というキーワードを提示し、実体のない、存在だけの人間について書いた。
デ・キリコもまた絵画において実体のない本質的ななにかを探し求めたのだろう。

画面の色の話をすると、デ・キリコは郷愁を描いた。それは空の色合いによくあらわれていた。テレンス・マリックの映画でよ

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「アステロイド・シティ」(2023年)

「アステロイド・シティ」(2023年)

これはよかった。
本作は製作費35 億円、興行収入76 億円。ウェス・アンダーソン作品としては「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)の276億円に次ぐ2番目の興行収入だそうだ。「グランド・ブダペスト・ホテル」は10年前の作品なので、その間に売り上げが積み上げられている可能性もある。そして、「グランド・ブダペスト・ホテル」は、展開が早く、なにも考えずに観ていても楽しかった。本作はなにも考えず

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第7回 老婦人のさいごの風景

第7回 老婦人のさいごの風景

翌日、洋介が金子家を訪れると、いつものように執事が出迎えた。昨日も顔をあわせたというのに、執事は不思議そうに洋介をじろじろと眺めた。たぶん、スーツを着ているのが珍しかったんだろう。仕事を依頼されて挨拶にきた時ですらポロシャツにチノパンという軽装だったんだから。

 それはともかく、執事は洋介を温室へと案内した。

 老婦人は地植えにしてある棕櫚に触れていた。

「昔流行った時期があったから、今でも

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「生きる LIVING」(2022年)

「生きる LIVING」(2022年)

黒澤明の「生きる」のリメイク。
1953年のイギリスを舞台にしている。
カズオ・イシグロがシナリオを担当したことも話題になった。
手堅くまとめた印象。

ロンドンの役所で働くロドニー・ウィリアムズが、末期がんを宣告される。彼は生きる意味を求めて街をさまよう。そして、偶然、元部下のマーガレットに出会う。彼女は役所をやめて転職することになっていた。
ロドニーは、彼女の明るさに生きる意味を見出す。彼女に

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紫式部 『謹訳「源氏物語1」』(1008年頃)

紫式部 『謹訳「源氏物語1」』(1008年頃)

リンボウ先生の「謹訳」はとても自然な感じが読みやすくていい。紫式部の原文がどういうものなのか、というのはわからないのだが、まずは全文を通読したい、という人にはいいと思う。

最初のほうは物語の展開がゆるやかで、これが平安時代の時間間隔なのだろうかと思っていたが、夕顔という女性が何者かに呪い殺されるあたりから展開が面白くなる。

1巻は、源氏の誕生(桐壺)から18歳(若紫)まで。
絶世の美男子として

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