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11013の手紙に寄せて

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11013でなければならない理由も、ないのだけれど。
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#作曲

真似なのかリスペクトなのか

真似なのかリスペクトなのか

「ほんとのオリジナル曲なんて、いっこもない」みたような極論、そうしたタイトルを目にしたことがあります。ネットで目にした本のタイトルだったか、ブログ記事のタイトルだったか正直覚えていません。おそらく、人は生まれてきて、その世界に(すでに)いる人たちのことを真似して、自分もからだを動かしたりものを考えたりしながら生きていく、つまり、「すべては見よう見まねだ」ということを強調した論旨なのかなと想像します

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バーチャルじぶん企画会議

バーチャルじぶん企画会議

予定を決めてしまうのをいやだなと思うことがあります。そんなことばっかりです。じぶんに思いもしないようなドキドキワクワクの未来が外からやってくる、もらたされるようなことにすがるなんてとてもあほらしいことですし愚かかもしれませんが、じぶんのちんけな想像力では、その時点のちんけさでは至りようのない未来がじぶんにあるような気がしてしまうのが、いかに私がちんけで未熟な想像力しか持ち合わせていないかを物語って

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逸れる

逸れる

私は曲づくりをするのですが、いつも、またこうやって新しい曲書けるのかな? わからん! と思っては新しい曲を書きます。

新しい曲を書くためにやることが具体的にわかっていれば、それをやるだけです。でも、いつもそれはわかりません。前にそのようにしたら新しい曲ができたという方法をもう一度トレースしてみても、もうそのときのように新しい曲はできません。トレースしようとこころみかけたその入り口で、もうすで

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Today

Today

どんな名曲も、最初はだれも知らなかったんですよね。作った人しか。作ってすぐさま、これはすごいぞとその人は思ったでしょうか。それとも、ふっと息をもらすみたいに何気なくつくったその気持ちのままだったでしょうか。のちに長い時間にわたって多くの人に親しまれる未来を想像してか、せずにか。ビートルズの『イエスタデイ』は、眠っていたポールの頭の中に流れたメロディだというような逸話を聞きますが、その曲の未来をポー

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スリル

スリル

曲をつくったあと、また作らなきゃという気になります。つくりつづけなきゃと思うのです。つくってしまった曲に、その出来栄えに、ずっと寄りかかっているわけにいかないからです。

でも、過ぎ去った日にうまくできたようにはなかなかできません。あのとき、うまくできたのに、という事実にとらわれているうちは、だめみたいです。

あのときの再現をしようとした瞬間、詰むと思います。(将棋でいう、負けの確定)

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ミュートON・OFF

ミュートON・OFF

あたらしくできたお店を見つけると、入ってみたりみなかったりします。それで、あと一年二年三年してそのお店がまだ営業を続けているか想像します。こりゃ潰れるだろうなとか思ったら意外に続いていたり、気に入ったので残って欲しいと思ったらあっけなくなくなってしまったりします。私はあんまり未来を見る目がないのかもしれません。

写真を毎日撮るようにしているのですが、いつの頃からか、影がよく目に入るようになり

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プレイヤー・キャラクター

プレイヤー・キャラクター

ぼくは作曲をして、その演奏の録音をします。決めたとおりのアレンジの演奏が録音できるまで、失敗を繰り返します。その過程でだんだん成功に近づいていって、最後には「ま、こんなもんでしょう」という「ベスト」を決めて、おしまいにします。そうしないと、終わりません。「ベスト」のテイクを決められたら、要はゲームクリアみたいなものなのです。そう、ゲームに似ていると思うことがあります。

穴に落ちたり、敵に触れ

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インクの滲み

インクの滲み

歌もギターもベースもドラムもピアノも、笛でもおもちゃでもなんでもかんでも、すべての演奏をたった1人でこなして、最初から最後まで曲をつくりあげるという音楽の制作スタイルがあります。この制作スタイルによる作品の発表がある偉大なミュージシャン、シンガー、ソングライターたちは後をたちません。ぼく自身もそうしたスタイルをとり、音楽制作を日々おこなっています。

1人がいちどに演奏できる楽器(パート)の数は

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大丈夫、できるから、行け。

大丈夫、できるから、行け。

生まれたばかりの小さな赤ちゃん。その子が、20年かそこらして、筋肉も骨格もたくましい大柄の大人になるところは想像しがたい。しかし、その光景が実現する可能性はある。ありえないことじゃない。「信じられないねぇ〜」なんて言いながらも、実際にそんなことになったとしたら、ぼくはその事実を笑って受け入れるだろう。幼いときのぼくを知っている親戚のおじさんやおばさんが、いまのぼくを目の前にしながら「しろうちゃん(

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濁状の清

濁状の清

ここ1年と数か月くらいで、僕は日記をつけるようになりました。5年間使えるタイプの日記帳で、同じ日付の5年間ぶんの日記が同一のページ内に並ぶレイアウトになっているものです。

このレイアウトのおかげで、日記を始めて2年目に突入した数か月前から、去年の同じ日付の日記が自然と目に入るようになりました。そう、この「過去の日記、それも1年前の同じ日付の日記が自然と目に入るようになる」というしくみに大きな

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梅ノ雨

梅ノ雨

カレーを無心になってつくることがたまにある。スパイスの調合からはじめて、もろもろの下ごしらえをしたりなんかしていると結構な所要時間になりもする。考えながらやっていることのようにも思うけれど、いや、これはやはり無心になっているというのがふさわしい……と、ここでは言っておこう。

僕は作曲をして、その演奏を録音したりもするのだけれど、その作業も、考えているようでいて「無心のたまもの」であるような気

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つくり手がいいと思うものを、僕は欲しい。〜『パプリカ』に寄せて〜

つくり手がいいと思うものを、僕は欲しい。〜『パプリカ』に寄せて〜

オーディションによって集まったメンバーからなるユニット・Foorinがパフォーマンスする『パプリカ』という曲がある。作曲者は、ボカロ曲プロデューサーという経歴を持ちつつ自らステージに立つようになったという、ミュージシャンでソングライターの米津玄師だ。

Foorinのメンバーは、子どもである。おそらく小学生くらいと思われる。そのわりに、『パプリカ』の旋律の歌唱はそこそこ難しい。跳躍進行(となり

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現実のバッターボックス

現実のバッターボックス

僕は、曲を書いて演奏や歌唱をする活動をしています。ですので、いい曲を書き続けていくことを、おのれの命題のように思っているところがあります。いい曲が書けたときのことを必死で分析し、そのときの状況や手順を意図的に再現すれば、またいい曲がかけるはず、などと思いがちなのですが、その再現を試みて再びいい曲を書けたためしがありません。いい曲を書けたときは、いつも、運が良かっただけだとか、たまたまだとか偶然だと

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武器と資本

武器と資本

僕はいま、33歳です。これまで曲をつくる活動を自主的にしてきました。10代や20代のときにつくった曲があります。それらはどれも、そのときにしか書けない曲だったなと思います。同様に、今の僕には今の僕にしか書けない曲があるわけです。

体力があったら、体力を活かしたパフォーマンスをするでしょう。技術に不安があっても、それをカバーできる体力です。若い人がとりやすい戦略といえるかもしれません。逆に、経

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